、ちょっといいか?」


「ん?どしたの幸村、忘れ物?」




授業と授業の合間の休憩時間のことだった。
トイレにでも行っておこうかな、と思って廊下を歩いていたら幸村に呼び止められた。

幸村と私は付き合っているけど別のクラス。
クラス替えの発表の時はめちゃくちゃ悲しかったけど
慣れてしまえば、離れているからこそ忘れ物を貸し合えたり、たまに廊下ですれ違うと嬉しかったり・・・・・ ってそんな話はどうでもいっか!



「出会いがしらに忘れ物?はないだろ?」

「あはは、ごめんごめん」



からかうように笑ってそういう幸村。



「ちょっとに用事があってさ」

「用事?」

「ちょっとあっち、いいかな?」



場所を変えようという幸村。
廊下の突当りは人通りがなかったのでそこに移動した。




「どうしたの?」



私が首をかしげてそう言うと、突然幸村は片手を壁についた。
「え!?壁ドンですか!?」と私が驚いていると、幸村の顔が至近距離まで近づいてくる。



「え・・・えええ!?なな、なに・・・!?何これ、どういう状態なのコレ

、俺のこと好き?」

「ちょっと待って幸村、色々と突然すぎて良く分かんない!」

「嫌いなの・・・?」



突然甘えたような声でそういう幸村。え!?どういう事なの!?



「い、いやあの幸村、嫌いなわけ・・・ないじゃん?そ、その・・・好き、だよ?」

「じゃあ此処でキスしてもいいかな」

「え!?」



いや、あのここ学校だしもうすぐ授業始まるし、一旦待とう!?
動揺しつつもそういって目の前に迫ってくる幸村をなだめる。



「あのっ・・・・幸村、ちょっと今はそーゆーのっ・・・・・・・」



顔を逸らして逃げようとするけど顎を掬い取られて顔が固定される。
幸村の鼻と私の鼻がコツン、と軽く触れて
あと数ミリで唇が重なる・・・!ぎゅっと目を瞑ったそのときだった。




「コラ仁王、勝手に俺になってに悪戯するな」




え、幸村の声が遠くから聞こえる?




目を開けるとそこには。




「惜しい。あともうちょっとだったんじゃがのー」

「・・・!!!!!!!!!に、仁王!?え、ちょっと!!!!」

「ピヨッ」




変装を解いて、私の前でいやらしーい顔をしてピースする仁王がいた。
そこから少し離れたところに両手を腰に当て少し困惑した表情の幸村。

えっちょっと待って!!!???


じゃ、じゃあさっきまで私にキスしようとしてたのは・・・・・・・・・




「に、仁王ーーーー!!!!」

「クックック、さえ騙せれば幸村になるイリュージョンは完成じゃ」

「ちょっと待って!?私、騙されたの!?」

「ああ。そうみたいだね」


「ひっどーい!!!仁王、あんたねーーーー!!!!!!」



仁王をどつこうとするけど仁王はそれをサラリと躱す。
ちょ、まじ・・・・・ふざけんなぁぁああああ!




「仁王ーーーー!やっていい事と悪い事があるでしょーーー!?」

「お前さん騙されてる間は幸村に迫られて満更でもなかったじゃろ。ちょっと嬉しそうだったし」

「ムカつく!謝れー!!!」

「まぁまぁ落ち着いて」

「だって幸村、仁王がー!!!仁王がー!」

「はいはい、いい子だからもう怒らない。・・・仁王、イリュージョンの練習するのはいいが、 俺になってを騙すのだけはダメだぞ」

「・・・幸村にそう言われるとさすがにダメか」

「ちょっと。私が言ってもダメなもんはダメだから。」




仁王は「上手くいったと思ったのに残念」というと仁王は自分のクラスに帰って行った。
残された幸村と私は顔を見合せてため息をついた。




「幸村ごめん・・・私普通に騙されてた

「それぐらい仁王のイリュージョンが凄かったって事だしなぁ・・・。
部長としては嬉しい事だけど、さすがにを騙してキスされたりするのはちょっと・・・」



うーん、と顎に手を当てて悩む幸村。



「声は・・・似せる事が出来たとしても、あんな至近距離で見ても俺ってわからないものなのかい?」

「わ、分かんなかった・・・!」



すると幸村は私の頬を両手で掴むと、そのまま自分の顔の前にもってきた。
幸村と私の顔が近い。



(え・・・!)

「ちゃーんと覚えるまで毎日こうやって見つめようかな」

「・・・・・!!」



綺麗な顔がこんなに目の前にあるとさすがに照れる。
幸村は固まっている私にくすっと微笑みかけると、おでこにキスをして手を離した。
そのさりげない行動にドキドキ。



「そろそろチャイムが鳴るね、戻ろっか」


「・・・・!!!!!」




訂正。仁王、あんたはやっぱり本物とは全然違う・・・・・・!

本物はもっと。




(本物は私をすっごくときめかせるもの!)








テニラビで立海の人たちが当たり前のように 「仁王がいない!また誰かになってるな・・・!?」って言ってるのが面白すぎて。(17.12.26)