「・・・・・・お、じゃん。おはよー」

「ブン太。おはよ」



私が靴を履き替えて上履きを履いていると、朝練終わりのブン太に会った。

こんなに朝早くからハードなランニングとテニスが出来るなんて物好きだ。
それが出来るなんて尊敬する。私には無理な世界。

そんなくだらない事を考えながらブン太と「朝練きつかった?」「おー。まあな!キツくねーと 練習になんねーよ」「ブン太って力の抜き方上手そうだよね、真田に教えてあげたら?」 「うまくサボってると言いてーのかお前は!」「仁王とあんたは特にね」という他愛もない会話をしていた その時だった。

突然ブン太が何かに気が付いて「おい、」と私の肩を組んできた。
え?何!?

するとブン太はこっそりと口元に手を翳し、私に耳打ちしてきた。





「・・・・・・、お前昨日幸村くんとヤったろ」



「・・・・・・・・・・・はぁぁああああ!!????朝から何言ってんの!?」




動揺して私はブン太から離れた。
ブン太は笑いながら「ビンゴだろい?」とウインクを飛ばしてくる。




「隠すな隠すな!仲が良いのはイイ事じゃねーか♪」

「いやいやいや・・・・!別にそんなことしてないもん」

「だってお前の耳の後ろのうなじ近くにキスマーク残ってるし」

「なっ!!!!」



思わず私は指摘された場所を手で抑えた。
え!?ちょっと、何で!?



「幸村くんもイジワルだな〜。が鏡見ても見えない死角に残すなんてさ♪」

「・・・・まじであるの?」

「マジだって。ほら」



ブン太は携帯を取り出してカメラで撮ったそれを私に見せてきた。
ブン太の言う事は本当だったんだと私は一気に恥ずかしい気持ちになった。



「・・・・・・・・幸村・・・・!なんてことを・・・・・・・」

「気づかないうちにやられたな」




私はその瞬間からすっごく恥ずかしくなって、携帯で「キスマーク 消し方」と検索した。
とりあえず応急処置でばんそうこうを貼るというベタな作戦に出た。
「ひっかき傷」とでも誤魔化していれば大丈夫だろう。


しかし。





「こーんなトコにばんそうこうは怪しいのう」

「ひっ!!!!」




ひんやりとした手で私のうなじのばんそうこうをペリ、と勝手にはがす仁王。
はがしてアレを確認できたのか仁王はニヤリと笑って私を見てきた。




「・・・・・・・・なによ、そのニヤついた顔は」

「仲が良いことは良い事じゃき〜」

「ブン太と同じ事言わないでよ」

「幸村は抜かりがないのう。本人の分からんとこで所有物のアピール、ってとこか」

「・・・・・・・所有物。」

「幸村印じゃ」




仁王の解釈には結構まんざらでもなかったりして。
・・・・・嬉しいような嬉しくないような。いや、これは嬉しいかもしれない。




「でも残すとブン太とかあんたみたいなのに指摘されるからやっぱ嫌だわ」

「ククッ、違いない」

「幸村に直接抗議しなくちゃ」










「あれ?気づいちゃった?」


「ブン太と仁王に指摘されたからね!」




幸村は「分かりにくいようにしたんだけどな」と口元に手を当てて真剣な顔を見せる。
そんなことで真剣に考えないで!もうもう!




「怒った?」

「怒ってるわけじゃないけど・・・・・その、もうちょっと考えて欲しいっていうか」

「ごめんごめん。つい残したくなっちゃって」

「わっ」




ぎゅっと幸村に抱き寄せられてドキッとする。
拗ねてる私の顔を覗きこんで「ね?」と笑う幸村がすごく可愛い。から。許しちゃう。

私は本当に彼に甘いと思う。




「気づいた人に茶化されると変な想像されるから困るの」

「変な想像って?」

「え!」

「変な想像って具体的に言うとどんな想像?」

「・・・・・・・いや、だから、その」




そんなの、、、言えるか!と思うんだけど、そんな事幸村に言えない。
恥ずかしくてどもってる私を見て幸村は楽しんでるんだきっと。
「もう!」と言って小突くと、幸村は「可愛いからいじめたくなっちゃうんだよね」と笑う。

綺麗な顔が近づいてきて綺麗な瞳で見つめられると何も言えなくなる。




「とにかく幸村、もう残すのはやめてね。せめて服で隠れるところにして」

「わかった、隠れるとこだね」

「そう。服で・・・・」




ん!?と気づいたときにはもう遅い。
幸村は手際よく私のネクタイに手をかけていともたやすく緩めるとシャツのボタンにも手をかけて 素早く外す。え!ちょっとちょっと、と幸村の手を掴もうとしたけど私の力では静止できず。

ピリッとした痛みが走ったと思ったときには遅い。


はだけた胸元には赤い痕が残っていた。



「!!!!」

は肌が白いから良く赤が映えるね」

「えっ何してんの!?幸村話聞いてた!?」


「もちろんこの続きも・・・・・・・・するよね?」

「だっ、だめ!・・・・・・・ちょっ!幸村・・・・・っ」

「・・・・・・・こんな想像してたんじゃないの?」

「なっ・・・・!」


幸村はすごく意地悪な笑みを浮かべる。
そして今度は可愛く笑って私の顎をクイッと掴んで向かせて。



「ここまできて我慢できないよ」






誰も来ない教室、時間帯、それも含めて私を弄ぶ彼は色々と抜かりない。
そしてそんな彼を受け入れる私もまた甘い。

でも彼は私に最大限の甘さを味わせてくれるのだ。







(17.12.11)