、今日お母さんもお父さんも出かけるから、夜は1人でよろしくね」

「えっ?」

「お母さんは今から夜勤、お父さんは出張なのよ。」



帰宅してばったり自宅の玄関で、お母さんとはち合わせた。
玄関で車の鍵をとりながらお母さんは続けた。

まぁこんなことはいつもの事だ。
お母さんは看護師をしていて、小さい頃からこんなことはよくある事。



「そうなんだ。いってらっしゃい」

「でも昨日近所で不審者がうろうろしてるっていう噂があったから心配ね」



あー・・・。
そういえば学校でも言われたなぁ。



「女の子1人で残すのも、家とはいえ物騒ね。」

「まぁそうだけど・・・。でも大丈夫でしょ!何とかなるよ。鍵も締めとくし」

「とりあえず今日の夜は精市くん呼んでおいたからね」



・・・・・・・・・


はいぃ!? 今なんて!!!!????



「ちょっちょっちょ!!!!お母さん今何て言ったの!?」

「だから、隣の精市くんをうちに呼んでおいたからねって。」

「え゛ーーーーー!!!!!家の中に魔物呼びこんでどうすんの!?

「またアンタは精市くんに失礼な事を・・・!」













幸村精市という男はほんっっっっっとにロクでもないやつだ。


幸村と私はいわゆる幼馴染。(という名の腐れ縁)

アイツが本当に性格が悪い事を私は昔から知っている。


お母さん同士が仲良くて、小さいころから私と幸村はよく一緒に行動していた。
同い年ということもあって色んな事を同時期にチャレンジさせられてきた。

私が「習字やりたい!」って言って、習字教室に習い出すと幸村も習い始める。
私が言いだした事なのになぜか幸村の方が成績を出す。
(幸村の書いた作品が神奈川の新聞にまで載ったっけ・・・)
それが嫌で習字をやめて、私が「絵を習いたい!」って言いだすと幸村もやり始める。
当然幸村は絵の才能を伸ばして、成績を伸ばす。



そういえばテニスも昔は同じスクールに通ってたのに、テニスも全国大会優勝するレベルに なって、「日本で一番強い」っていう称号も獲得しちゃってるし・・・!

立海に入学してからも、かなりの有名人になっちゃってるし
持ち前のあの女顔で無駄にモテてるし


結局私は幸村という存在に、いつも塗りつぶされている。
ほんっとやなやつ!!!
(アイツの事好きだっていう子に今までの事全部伝えたいわ!)

これだけじゃなくて、幸村は私には素の状態でいるから
あいつの毒舌やドS発言は私は腐るほど聞いた事がある。
特に幸村に行きすぎたアピールをする女の子の話とか、 すっごく聞かされる。あのときのアイツは笑顔でひどい事言うからね。 (立海では表の顔しか見てない人が多すぎよ!)


そういえば私の好きだった先輩も・・・・・・
私の幼馴染が幸村だって知ってから一線引かれちゃったんだよね・・・!

とにかく、いろんな意味で私の阻害をしてくるのが幸村。




「はー。学校以外でも会わなくちゃいけないとか・・・!」

「フフ、そんなに喜んでくれるなんて光栄だね」



ぎゃっ!!!!!!!



「うわあああ!ビックリした!!!!!いつの間に!!!??」

「今日はお邪魔するよ。よろしくね」



出た〜〜〜!!
キッチンで今日の夕飯を簡単に温めていたら、いつの間にかそこには幸村。
幸村はにこっと笑ってそう言った。



のお母さんの料理、昔から好きなんだ。今日はうれしいな」



慣れた感じでうちのダイニングテーブルに座る幸村。
昔からよくうちに来てれば当たり前か・・・



「今日はまさか泊らないよね!?」

「施錠確認したら帰るさ」

(ほっ・・・)

「泊ってほしかったのかな?」

誰がよ!!!

「ふふっ、本当は飽きないね」



なんか一枚上手感が腹立つ!!!!!
ムカムカしながらも、私は温めたシチューをテーブルに並べた。



「それにしても久しぶりだな。入院中これが無性に食べたくなったんだよ」

「それお母さんに言ってあげて」

「こういうのは第三者から言った方が好感度が増すんだよ」



出た最悪発言。まじでこいつは腹黒いわ・・・。



嫌々ながらも私と幸村は一緒にご飯を食べた。
小さいころから一緒、扱いは家族も同然。緊張なんか絶対ない。

意外とこういうとき、幸村は喋ってくれる。(意外よね)



「そういえばさ、この前B組の××さんからアドレス聞かれたんだよね」

「へー。あんたの事好きって有名だよね」

「ふふっ。でもどうせ好かれるならもっと可愛い子がいいよね」

黒っ!あんた・・・ほんっと性格悪いよね」

の前だけね」

「そんな毒づいた事ばっか言ってると、そのうちバチが当たるんだから」

「でも可愛くないのは事実だよね」


私は××さんの顔を思い浮かべた。
・・・・・・笑っちゃだめ笑っちゃだめ・・・・・・!!!



ご飯を食べ終わって片付けをして、お互いに宿題をやろうという話になった。
幸村とはクラス違うから全く同じものではないんだけど。

リビングで2人で静かに宿題。
黙々と淡々と集中して宿題を終わらせていたそのときだった。


ガタン!と外で物音がした。




「・・・何、今の音」

「外でしたね」




思わず2人で手を止めて顔を見合わせてしまった。
え゛ーーーー!!!何これ超こわい・・・!!!



「ちゃ、ちゃんとさっき鍵閉めたよね?」

「うん。確認したよ」

「だっ大丈夫だよね!?変なのいないよね!?」

「・・・それはどうだろう?俺もそこはちゃんと目で見ていないから」

「猫・・・かな・・・??」

「さて、と。じゃあ俺は宿題終わったからこれで帰るとするよ。鍵閉めも確認したし、 俺の任務は全うしたしね」

え゛ーーーー!!!!あんたっ・・・今のタイミングで帰るつもり!?ばかなの!?

「だめなの?」

「普通このタイミングだったら帰らないでしょうが!!」

「そんな事言ったってが最初に約束したことだろ?じゃあまた明日・・・」

「ちょっちょっちょっ!!!待ってよ幸村!」



私は全力で幸村の腕をつかんだ。



「お願い!!!もうちょっといてよ!」

「・・・」

「ほら!!!今から紅茶入れるからー!」

「しょうがないな」



おっ・・・!素直に聞いてくれた・・・!



「ね・・・ねぇ幸村!シーンってなるの嫌だから、なんか面白いこと喋ってよ」

「昔から思うけど、本当君って無茶ぶりしてくるよね」

「だってシーンってなったらなんか怖いじゃん!」

「じゃあテレビでもつければいいだろ?」

「それもそうだね・・・!・・・・ん?あれっ」



私がリモコンの電源ボタンを押すけど、テレビがつかない。



「あれ?ねぇ幸村、テレビがつかな・・・」



幸村にそういった、その時だった。

パチッとリビングの電気が消えた。



!!!!!!???????




ぎゃあああああああ!!!

「可愛くない叫び声だね」

「幸村どこ!?どこ!?」

「停電みたいだね」



なぜかこんなときも冷静な幸村。(むかつく・・・!)
私はすぐそこにいるだろう幸村を手探りで探した。

とにかくパニックになって私は幸村の腕を両手でつかんだ。



「ちょ、ちょ、もしかして外にいる誰かが電気消したとかかな・・・??」

「その可能性もあるよね」

「こ、こわい・・・」




と、私がおびえていたそのときだった。



「・・・・ふふっ、フフフ・・・」



・・・・ん?



「な、何笑ってんのよ幸村・・・こんな状況で・・・・!!」

「いや、あまりにが昔から変わらないからさ」

「はぁ?何言って・・・」



すると幸村はリビングのスイッチに手を伸ばして、部屋の電気をつけた。

え・・・!?



「停電はウソだよ。俺が消したからね」

えええええええ!?でもっテレビもつかなかったしっ」

「それも俺がさっき電池抜いといたからね」



幸村は私がしがみついてる反対の手で電池をチャラチャラッと投げながら笑った。 その顔は昔から変わらない、悪戯が成功したときの悪〜い顔・・・!!!




「精市ーーーー!!!!!」

「あ、やっと昔ながらの名前で呼んでくれたね」

「は・・・!つい・・・!!」

「やっぱりは飽きないね」



幸村はそういうとしがみついた腕を指さした。
私はハッと気がついて手をパッと離した。



「むかつくー!!!昔からなんであたしの事おちょくるの!!」

「おちょくってなんかいないよ。ただの事を一番信頼してるから」

「信頼・・・!?」

「俺はのこと、信頼してるし好きだと思っているよ」

「なっ・・・!あ、あたしは幸村のこと嫌いだけどねっ」




すると幸村はこっちに向かって歩いてきた。

な、な、なに・・・!!!


すると幸村は近付くなり私の顎をクイッと掴んで、至近距離でこういった。




「そういうとこも可愛いって思うんだよね」




なっ・・・・・・・!!!!!!




「ばかー!近いし!!もういいよ!帰っていいから!あっちいけー!!」

「フフッ、それは残念」

「まったく・・・!!」

「あ、お母さんによろしくね。」

「はいはい」

「あと、が寂しいなら今から俺の部屋で一緒に寝てもいいんだけど」

行かないから

「あっそれと最後に」

「え?」


「B組の××さんにはが俺の彼女だって伝えておくから」

「は?ちょっとやめてよ!!!誰があんたと!

「じゃあおやすみ、

「ちょっと待てーーー!!!!」

「まだいてもいいのかな?」

「いややっぱいい!もう帰って!!!!あんた超めんどくさい!」





この作品のイメージは、チャイコフスキーの 「金平糖の精の踊り」です。バレエのくるみ割り人形で出てくる、少し曲調は暗めだけど チェレスタの可愛い音が不思議な感じを出してる曲です。 ヒロインが金平糖みたいにとげとげしてるのと、曲の一番耳につくメロディが 何を考えているか分からない幸村くん、みたいな感じで書いてみました。(12.3.18)