私の片思いの相手、幸村精市はとにかくモテる。





幸村精市といえば端正な顔立ちと優しい微笑み、そして柔らかな性格。
ところがテニスになると男前になり普段の穏やかな雰囲気からは 想像できないほどの、かっこよさを持つ。

あの見た目であの性格だから、女子にモテる。

だけどテニスでの功績やその働きっぷりから、男にもモテる。
(テニス部の統率っぷりは凄いしね・・・!)



しかも女子にモテるっていうのもただモテるだけじゃないんだよね。

同じ「モテる」丸井くんや仁王くんとは全く別のタイプ。

幸村の場合、丸井くんたちと比べると・・・・
「ファン一人一人が本気」な感じがする。
つまり、ミーハーなファンだけじゃなくて本気で恋してる女の子も多いってこと!

そりゃそうだ。だって優しいもん。幸村、一人一人に対して・・・さ。




そんな幸村に恋する私。



もうすぐ彼の誕生日がやってくる。



きっと、この日は幸村もたくさんプレゼントをもらうだろう。
いや、絶対もらうはず。

片思いに時間なんて関係ないけれど、一応私は入学当初彼を見た時から 「あっ」と目について「この人と付き合うかも!」と思っていた。 だけどそんな直感当てになんない。だって幸村のことを同じように思う子は たくさんいるんだもん。


すでにバレンタインで意気消沈気味の私。


(幸村、またチョコたくさんもらってたな・・・)




誕生日はたくさんの女の子がプレゼントを渡すんだろうなぁ・・・

そう考えただけで「私なんかからもらっても」という気持ちになる。

渡すか渡さないか、いやでも渡した方が・・・??
そんなことをうだうだ考えているとあっという間に3/5になった。













「また精市のことで悩んでいる確率97%」

「!なんだ、蓮二か・・・」



幼馴染の蓮二の声がしたので私は振り返った。



「いい加減、腹をくくってプレゼントを渡したらどうだ?」

「・・・簡単に言うけどさ。難しいんだよプレゼント渡すのって」



できることなら、幸村が一人になったときに渡したい。
他の女の子が渡してるときに渡すと顔も覚えられないと思うし。

だけど幸村が一人になることはまずありえない。



「プレゼントは買ったのか?」

「・・・うーん。とりあえずもらって対処に困るものだと幸村も迷惑だろうし、 此処は幸村の好きなお花を買ったよ。花束だけど」

「そうか。なかなかいいとこに目を付けたな」

「幸村ってお花好きだよね???」




周りの女の子は知ってるのかな?

皆は結構手作りのケーキだとかクッキーだとか、テニスにちなんだものとかを プレゼントしてるみたいだけど・・・・・・


でも私は知ってるんだ。



いつも部活から帰る時、校門の近くにある花壇を幸村が気にしてるのを。

遠目だから何話してるかは分かんないけれど
たまに「先行ってて」という素振りを見せて、メンバーがいなくなったあと 花壇にUターンして、しおれかけた花を優しく直したりしてるのを私は見た事がある。


授業中もよく窓の外を眺めてるけれど、そのときの視線も花壇だったり。

男の子にしては珍しいけど、幸村っぽいなって思う。



女の子が男の子に花束を送るっていうのも変だけどさ!




「これならインパクトあるし、幸村も喜びそうだもんね!」

「そうだな。精市は花が好きだからな」

「万が一私がダメでもお花に罪はないから大事にしてくれると思うし!」





そして、放課後。





(うわぁ、いつもにも増して女の子がたくさんいる・・・!)




コートの外には女の子が相変わらずたっくさんいた。
(しかも皆片手にプレゼント持ってる!)


練習中の幸村はとにかくテニスに集中したいため、ファンには見向きもしない。
それを知ってるためファンの子も練習中にキャーキャー騒いだりしない。
だから練習の合間に幸村にプレゼントを渡す事はない。

・・・・・・・と、言う事は・・・・・・・・





「幸村くん!!!!これ受け取ってください!」
「幸村くーん!お誕生日おめでとう!!」
「先輩、おめでとうございます!あのっ、これ!!!」




必然的に練習後にプレゼント渡しが殺到する。


練習後の幸村の周りには凄い人だかり。
部員の人たちが「部長!!!おめでとうございます!!!」 「テニス部からのプレゼントです!!!!」といって プレゼントを渡してる。人だかりの中心にいる幸村は、 私からは少ししか見えないけれど、いつものような柔らかい笑顔で 「ありがとう」と微笑んでいるのが分かる。




(・・・うう、絶対渡せない・・・)




例年にも増して凄い人だかり。

完全にアウェイな空気感に私は撃沈した。
しかも・・・・・・・・





「ねぇねぇ!見て!あの子・・・」
「うわー!プッ!花束持ってるー!」
「幸村くんは男なのに花なんてもらっても意味ないのにねーっ」
「見て見て、あの子花束あげるみたいだよ」
「花なんかもらっても枯れるだけじゃん」
「今日はお見舞いじゃなくて誕生日だっつーの」
「あはは!言えてるー」






・・・・よほど花束が目立つのか、ファンの子たちに凄い目で見られるし。

(聞こえてるっつーの!)


でも確かに・・・・・・変だよね・・・。
持って帰るのも恥ずかしいだろうし、さ。
あの子たちの言う通りだ。

・・・もうだめだ。
せめて誕生日だし一言「おめでとう」って言いたかった。





、帰るのか」

「蓮二・・・」




人だかりに背を向けて歩きだしたそのとき、蓮二が私を呼びとめた。
花束は下を向いている。私が後ろ手に花束を地面に向けて持っていたから。
まさに私の気持ちそのものってかんじ・・・




「せっかくの花だろう?」

「・・・いいよ。うちに飾るし」



私はあははと自嘲気味に笑った。



「今度幸村が一人になったときにでも、おめでとうって言うし今日はいいや。 幸村もたくさんの人から言われてるだろうし、私一人が言わなかったところで 悲しまないと思うから」

・・・」

「気にかけてくれてありがとう蓮二。じゃあね、おつかれ!」

「待て」




ガシッと蓮二が私の腕を掴む。え・・・!???




「えっ?蓮・・・」

「俺がその花束をもらおう」

「え??なんで!?」

「少し待ってろ。恥ずかしいのなら俺が持つから、一緒に帰ろう」



突然の蓮二の言葉にドキッとする。
え!?なんでそこで蓮二が・・・・・・・・

すると、その時だった。




「待ちなよ、蓮二。」

「・・・・!精市」



えっ!?

え!!!!????




私は思わずパサッと花束を落としてしまった。
だだだだって、そこには・・・・!!!





「・・・・っゆきむら・・・・・!」





ずっと近くで会ってみたいと思っていた、幸村の姿があったから・・・!


幸村はたくさんの人だかりをすり抜けてこっちにきたみたい。
(人だかりに明らかに道ができてるし・・・!)

そうまでして、何でこっちに・・・???


幸村は地面に落ちた花束を拾い上げ、私の前に立った。
そして花束について砂埃を軽く払うとニッコリ笑って言葉を発した。




「ありがとう、コレ。大事にするよ」

「えっ・・・!いやっ、あの・・・でもっ・・・」

「俺にくれるために持ってきたんだよね?」

「そうだけど・・・っ!でもこんなの持って帰る時恥ずかしいんじゃ・・・!」

「フフ、なんで?」

「だって・・・そのっ、幸村男だし・・・」

は、俺が花を好きなことを知ってるからくれたんだろ?」

「え・・・」




その瞬間女の子たちがざわっとする。
さっき花束をばかにした子たちかな・・・。「うそ!?」ってざわついてる。

でもなんでその事を幸村が・・・?




「俺が花壇を気にしてることに気がついて、もあの花壇を 気にしてくれてただろ?」

「・・・!」

「この前、制服が汚れるのも構わず花壇に入って膝を地面につけて、 必死に雑草抜いてくれてたよね」



恥ずかしい!!!!!そこまで見られてたんだ・・・・・!
ん?でもなんで幸村が私のことを・・・?




「嬉しいよ。好きな人が好きなものをくれると」

「えっ・・・・・」



幸村はまたにこっと笑った。
え?今なんて・・・




「何か俺に言う事はあるかい?」

「あ・・・えっと、幸村、誕生日おめでとう!」

「フフ、ありがとう。それだけ?」

「・・・・・!!!」

「・・・・・」

「・・・・・・・・・!!!!!」

「・・・・」


「幸村、私・・・」

「うん」



「幸村が好き!」




すると幸村は私のことをガッと胸に抑えつけるようにして抱きしめた。
ちょっ!!!!!!ええ!?どどどっ、どういう・・・!!!





「俺も好きだよ。」

「・・・・・・えーー!!!!うそーーーー!」

「嘘なんかつかないよ。だから俺からも一言言わせて」

「へ・・・」




「プレゼントは花束だけじゃなくて、のことももらっていいかな?」






うそ・・・!!!!幸村が私のことを・・・・????

これは夢!夢だ・・・!絶対夢!!
でも・・・・・・嬉しい・・・・・!!!!




「そういうわけで蓮二。悪いけどは俺と帰るから」

「フ・・・。精市もまさか好きだったとはな・・・。俺も気づかなかったよ」

「蓮二に隠すのも苦労したぞ」

「完敗だ、精市」


「・・・じゃあ行こっか

「・・・!!!」

「一緒に帰ろう」




















その後、幸村と帰る私。
今までそんなに喋った事なかったから緊張して何話そうか困ったけど・・・!

でも幸村が優しくしてくれるから、自然と会話が弾んだ。




「へぇー。この時期にまだ白いバラがあるんだね」



花束の中の花を嬉しそうに覗く幸村。
あげたブーケは幸村のイメージカラーで白を基調としたものを選んだ。



「今は年中あるよね!なんか、幸村は白いイメージがあって白いブーケにしたの!」

「フフ、でもこれさ・・・多分結婚式の二次会とかで使われるブーケだと思うよ?」

「ええ!?嘘ぉ!?」

「だって、此処に"HAPPY WEDDING"ってメッセージカードが刺さってるもん。ホラ」



うわー!!!!ほんとだ・・・!!!!
白いブーケがいいですって注文したから、結婚式と勘違いしたのかな・・・!!
店員さんのばか・・・・・!!!



「でも白いバラが見えた瞬間、俺は確信したから嬉しいよ」

「え?どういうこと?」

「・・・・!、白いバラの花言葉知らなかったのかい?」

「え!うん・・・!ごめん、完全に見た目で選んだから・・・」



すると幸村は、あははっと笑った。




「じゃあ今度調べてみなよ」

「う、うん!」

「・・・・・・それにしても、HAPPY WEDDING・・・ね」

「ごごごごごめん!!!!誕生日なのに!!!!BIRTH DAYに書きなおすから ちょっと待ってて!!!」

「・・・いや、いいよ。このままで」

「!?」



私から幸村の指からカードを抜き取ろうとした瞬間、幸村はヒョイッと高いところまで 手を上げた。な、なんでー!?




「突然で申し訳ないけど・・・俺、入学式でのことが一番に目についてさ」

「!!」

「そのとき、感じたんだよね」

「なにを・・・?」

とは結婚する気がしてるんだ、俺」

「!?」


「だから、ね?」






・・・・・・・それってつまり?








幸村くんには白い花が似合うと思います。今回のイメージは、白いバラと かすみ草とその他の可愛いかんじの白かクリーム色っぽい花の花束に、 紺色と白のストライプのリボンが持ち手についてるかんじです。 おめでとう幸村くん!!!(11.3.5)