「みんな!!!!!リベンジよ!!!!」



そう叫ぶを見て、皆が一斉に振り向いた。



「いや、リベンジって・・・。」

先輩めちゃくちゃトランプ弱いじゃないっスか〜」

「そーそ!また罰ゲームで苦しむのはお前なんだぜぃ?」



また無謀なことを言って、と皆がため息をついた。
なぜならのゲームの腕前は皆のレベルの遥か下なのだから。
何の勝算があってそう言っているのだろうか?

なぜか自信満々なを不思議に思い、柳が口を開いた。



「・・・、どうやら勝算があるらしいな。その顔は」

「えへへ!悪いけど、今回は私が勝つから!」

「!?」











前回は、「5回まで負けてもOK」「既に上がった人の知恵を借りてもOK」という ハンデをつけてもらったにも関わらず、持ち前の運のなさで惨敗し 罰ゲームをさせられてしまった私。

その罰ゲームは「幸村に膝カックンをする」という、考えただけで鳥肌が立つ話だった。 もちろん罰ゲームは絶対。だから私は泣く泣く幸村に膝カックンを仕掛けた。 (もちろんその後幸村に制裁を加えられたけどね・・・!)(仁王め・・・!)


だけど私はどうしても皆に仕返しをさせたくてたまらない。
(皆にも罰ゲームを受けてもらわなくちゃ気が済まない)

だから今回リベンジを申し込んだの!



「別にいいけど、がまた負けるだろ」

「だから!今回は私のハンデをちょうだい」

「いや、前回もハンデやったのにお前惨敗しただろい!」

「大丈夫!!!ちゃーんとその辺も考えてハンデ考えたから」



勿論、私もバカじゃない。
このまま私が勝負を申し込んだところで勝てるとは思ってない。
だから今回は頭を使って・・・絶対に勝てるアイディアを思い浮かべた。

それは!




「私に最初から助っ人をつけさせて」

「・・・助っ人?」

「助っ人って誰っスか?いっときますけど、柳先輩はダメっスよ」

「大丈夫。この中のメンバーじゃないから」




と、その時だった。私が呼んだ"助っ人"が部室の中に入ってきた。




、手伝うって何をすればいいの?」



(・・・ゆっ・・・)



「幸村ありがとう!!!今からトランプ始めるから手伝って!」



((幸村は卑怯だろ!!))




そう、私の呼んだ助っ人とは幸村!

幸村を味方につけてれば負けるはずもないし、万が一負けたとしても 幸村も罰ゲームすることになるから皆もハードなのを設定するハズもない。



(ちょっ、・・・!)

先輩、考えたっスね・・・!)

(ほぅ、これは面白くなってきた)

(見事なり。




そんなわけで今回は真田除くメンバーと(真田ごめん)
私&幸村でトランプで勝負することになった。大富豪で勝負だ。




先輩ずるいっスよー。幸村部長に勝てるわけないじゃないですか!」

「うるさい赤也。私1回も勝ってないんだからいいでしょ、これくらいのハンデ」

「フフ、大富豪か。頭を使いそうだね」

「精市。このゲームに負けたら罰ゲームを受けなければならないという旨は聞いているか?」



前回敗者の私が手際良くトランプを配っていたその時、蓮二が幸村にそう言った。



「罰ゲーム?そんなのがあるのか?」

「ああ。大富豪で勝った者が、大貧民になった者に何でも命令することが出来るというものだ。」

「へぇ。それでこの前、が罰ゲームを受けてたんだね」

「う・・・!そ、そうです」

「・・・ねぇ蓮二、勝ったらなんでも命令できるって本当かい?」

「ああ。これまで赤也ととジャッカルと丸井が負けた事があるが、 全員過酷な罰ゲームを受けている」

「・・・・ふぅん、そっか」



幸村が何かを企んだような笑みを浮かべる。
こ、怖い・・・!でも今回幸村は味方だもん!!!何があっても私が負けるわけない!

幸村が命令する、なんて怖すぎるけど幸村が命令するには大富豪にならなくちゃいけない。 ということは同じチームの私も大富豪になるということ。 命令は大貧民の人にしか出来ないから、絶対に私が罰ゲームを受けることはない!

私にしては頭いいと思う!




「そんじゃ、始めようぜぃ〜☆☆」














ゲームは順調に進んだ。
私が札を持って、幸村が私の札を覗き込む。

ふふっ、いいなぁこういうの。なんか幸村と一緒に戦うって心強いし、楽しい。



、違うよ。それは後で出そう。右から3番目の札を出しておいた方がいい」

「わかった!」



幸村の的確な指示に私は安心しきっていた。
さーて、命令は何にしてやろうかな・・・!とりあえず前回私に屈辱的な ゲームを与えた仁王に仕返ししてやりたい。


幸村に任せていればいい、そう私は思っていた。
そうすれば「命令大好き」(勝手なあだ名)な幸村は絶対勝つと思ってた。
常勝という言葉が大好きな彼が、絶対に負けるはずがないと思ってた。



・・・なのに。




「上がりぜよ」





え・・・!!!




ちょっ、ちょっと!!!???仁王が上がり!?」

「上がりぜよ。さーて罰ゲームは何にしようかのぅ」



順調に勝てると思っていた私にとって衝撃的な結果だった。
仁王は物凄く含み笑いをして此方を覗き込んできた。



「ちょっと!!!仁王、ペテンでしょ!カード隠してるんじゃないの!?」

「そんなマネするわけないじゃろ」



なっ・・・なんで!?

だって今回私は幸村が味方についてるんだよ!?
なんでこうなるの!?おかしい。何で・・・何が・・・・・・

いや・・・幸村といえどもこれはテニスじゃないもんね・・・
ちょっとくらい、手を間違えて負けることだってある。うん、そうだ!


要は最下位にならなかったらいいんだから!



だけど。



「上がりだ」「私もこれにて終わりです」「やっほい!天才的ぃ☆」 「悪いな」そう言い残して、次々とメンバーが上がって行った。
なんで!?幸村くんちょっとちょっと!?

幸村らしくない・・・!!幸村トランプ弱かったの・・・!?



「ゆっ、幸村頑張ろうね!赤也には絶対勝とう!」

「フフ」



そうよ!別に最下位にならなかったらいいんだから。
悪いけど赤也よりは幸村の方がトランプ強いに決まってんじゃん。

でもおかしいな・・・。赤也はあと数枚なのに・・・
私の手札、まだいっぱいある気がする。しかもよく見たらめっちゃ手、悪くない!?


幸村・・・これは作戦なんだよね?

でもそれにしては・・・手札悪すぎない?
どうやって勝つつもりなんだろう・・・



ふと、そんな事が頭に浮かんだ。
でも幸村はすごく余裕な表情を浮かべてる。 序盤から何か考えがあって、手札を選んでいるみたいだったし、 頭の良い幸村のことだから絶対に勘でカードを選んでいるわけがない。


だけどついに赤也の手札が残り数枚になった。



「へへっ!上手くいきゃ次の俺のターンでもう終わっちゃいますね〜♪」



何で!!!???
おかしい!!!!これは絶対におかしい!!幸村くん、これはどういう事!?



「ねっ、ねぇ幸村!これ本当に勝てるよね!?」



私は思わず幸村にそんな言葉を投げかけた。
だけど幸村は何も答えずニコッと笑った。

・・・・・・・・まさか・・・。幸村・・・・・・・




「フフ、どうしたの?




まさか幸村・・・ 私が負けるようにゲームを進行してる…??





ちょっと幸村!!?? もしかして最初っから・・・!」

「フフ!やっと気付いたのかい?もう遅いよ」




何考えてんの!?この人!!!




いやいやいや!幸村くん落ち着こう!?これ、負けちゃったら幸村も罰ゲームなんだよ!?」

「いや、俺は罰ゲームじゃないよ。なぁ、蓮二」

「ああ。あくまで精市は助っ人、だからな」

「えええ!?そっそんなのアリなの!?だめでしょ!」

「だって、俺はあくまで助言してるだけで、実際札を出していたのはだろ? だからは俺の指示を無視しても良かったわけだし、俺はゲームに 直接手を出していないから、参加者とは言わないと思うんだけど」



こっ・・・・・・・この男は・・・!!!!



「ゆ、幸村・・・じゃあもしかして私の味方になった時点で・・・!」

「そうだね。が負けたら面白いかなーって」

「・・・なっ・・・!!!」

「フフ・・・。楽しみだね、の罰ゲーム




幸村は物凄く楽しそうな顔をしてそう言った。

まさか蓮二に罰ゲームのルールを聞いてから、 最初から私に罰ゲームを受けさせるためにわざと負ける指示を出してたってこと!?


どんだけSなのこの人!!!




「あまりにもが俺の指示を鵜呑みにするからね」

「だって幸村に従えば絶対勝てると思ったんだもん!!!」

「フフ、ありがとう」

「ありがとうじゃないから!ていうか、まだゲームは終わってないから!」

「そうだね。でも勝てるのかい?そんな手札で」

「・・・・う・・・!」

「だって、あとダイアの3とハートの4と7しか残ってないのに、 勝てるわけないよ」

「ちょっと!!!!!何手札バラしてんの!?」


「俺の予想が正しければ赤也の持ってる手札は、の手を全て防いで 上がる事が出来るからね」

「えっ・・・!幸村、赤也の手札まで把握してんの!?なんで!?」

「ゲームしてれば分かるだろ?俺は皆の大体の手札が分かってたよ。 札を選ぶときの目の動きや、札を引く時の相手の表情だとか、ね」

「なっ・・・!!!!」

は見ていなかったのかい?まぁ、 きっと君の事だから自分の番しか集中してなかったんだろ?」

だめなの!?

「だってゲームは皆でやってるんだから、自分の関係ないところでも表情を見て カードを把握するものだよ。もう場に出てるカードも把握して、 今皆が持ってるカードを推測するのが、大富豪だと思うけど?」



そっ・・・そこまで頭良いのに何で負ける手を私に・・・!!!



、これでもう終わりだね」








そして、結果。




「よっしゃー!!!上がりっス!すんません、先輩!!」

負けた・・・!!!



負けた、というより味方に負かされた・・・!!!!!



「ならば、今回の一抜けした仁王が罰ゲームを決める権利があるな」



よりによってロクでもないヤツにまた権利行っちゃったよ・・・!!!



「お願い仁王!!!変なのだけは絶対にやめて!!!」

「そうじゃのぅ・・・。どうしようかの」

「いいよ、仁王。面白ければ何でもやるよ、は」

「幸村!!!」



頼むから変なのは回ってきませんように・・・!!!
私はぎゅうっと両手を組んで、目を瞑ってお祈りした。 そしてチラ、と仁王の方を見ると仁王は何かを考えているようだった。 だけどそのすぐあと、ニヤリと笑った仁王と目が合った。



「決めたぜよ」


「えーっ♪何スか先輩!!!」

「早く教えろぃ!!」

「・・・、お前さんは確か彼氏がおったのぅ」


なっ・・・何を唐突に・・・・・・!!!



「そ、そうね・・・!隣に今いるね、彼氏」

「幸村のこと、好きか」

「そっそりゃまぁ、好きだよ。彼氏だからね・・・!」



な、何なの・・・!この回りくどい質問!
隣で幸村は腕を組んでいた。



に聞きたいんじゃが、そんな大好きな彼氏がワガママやお願いを言ったら、どう思う?」

「どう思うって・・・そ、そりゃ可愛いとか聞いてあげたいなーと思うんじゃない・・・?」

「じゃろうな」

「は・・・!?」

「よし、決めた」

「なっ・・・!!」





「罰ゲームは・・・ 幸村のわがままを1つ聞く っていうのはどうじゃ?」






!!!???



は・・・・・・はぁあああああああ!!!???何言ってんの!?




「ばかーーー!!絶対バカだー!!!仁王アンタそれどういう意味か分かってんの!?」

「フフ、いいね!それ」

幸村は黙ってて!! 大体罰ゲームでわがまま聞くって何!?」

「ええじゃろ、カップルがもっとラブラブになれる画期的な罰ゲームで。 気を遣ってやったぜよ」

「ははは!!!、観念しろぃ!」

「ドンマイ、・・・」

先輩、ファイトっす・・・!」



幸村のわがままを1つ聞くなんて、何考えてんの!?
だって普通に考えて!?絶対ロクなこと言わないよこの人!仁王以上に!

私は幸村の方をチラ、とみた。
幸村は楽しそうに口元に手を当て「どうしようかな、フフ」と考えていた。
その時の幸村の表情はゲーム中よりも楽しそうだった。

っていうか、絶対"ワガママ"なんて可愛いもんじゃない・・・!


命令に決まってるよ絶対!!!




「よし、決めたよ」

(嫌な予感・・・!!)




幸村はそういうと、私にこっそり耳打ちをした。
不覚にもその時の幸村の仕草だとか、私の耳にかかる吐息とささやく声に ドキッとしたのは秘密だ。




「できるね。

「・・・・!!!!な、なんであたしがこんなこと・・・!!!」

できるよね?

「う、うう・・・!!!や、やだ・・・・!!!」

、立場がわかってないみたいだね。君に選ぶ権利はないんだよ。わかる?」




だっ、だからってこんな皆のいる前でするような事じゃないでしょ!




でも、ここでやらなければ絶対に幸村は納得してくれない。
やるなら早いうちにしないとどんどんワガママが悪化する。
そう思った私は、幸村に言われた通りの行動を起こした。それは。




「せ・・・・・・・精市・・・!」

「フフ、どしたの?



私は呼びなれない幸村の下の名前を呼んだ。
この時点でかなり恥ずかしい・・・!幸村はニヤリと笑って、私の事を見た。 足を組みなおして、腕も組んで。幸村は私の事を見つめてきた。

あー!もうっ、やだ!!!
でも、言わないと・・・!!!


私は幸村に言われた通り、幸村の膝の上に座った。
すると皆がゴクリと息を飲んだ。そして。





「わ・・・・・・私・・・」

「ん?全然聞こえないけど」

「だからその・・・・私・・・て・・・・」




幸村に言うように指示された言葉をどうしても言えない私は、 幸村の膝の上でごにょごにょどもっていた。 顔が熱い・・・!そして、言葉がでない。私は幸村に見つめられる事に慣れなくて、 顔を逸らした。
だけど幸村はそんなこと許してくれなくて、私の顎を掴んで無理矢理自分の方を向かせた。




「 ち ゃ ん と 言わないと。

「うう・・・!だってこんなの言えるわけないじゃん!」

「罰ゲームでしょ?」

「・・・!」




えーい!もう言ってしまえ!!!




「精市」

「ん?」



「わ・・・・・"私を食べてください" ・・・!!!」





言った・・・!!!!よし!罰ゲーム終了だ!

私がそういった瞬間、皆は「おおおおお!」「言うねー!」と大盛り上がり。 赤也も「なんか間近で人がイチャこいてんのって初めて見たっスよ!」と テンションがあがってた。


まっ、なんにせよ罰ゲームがこんなもんで良かった!

これで今回は綺麗に終われるー!!!



私がそう思いながら、幸村の膝の上から退こうとした、そのときだった。



ガシッ!!!




「・・・・・へ?


、どこ行くの?」



幸村は私の腕を掴んで、私を引き止めた。



「えっ・・・!!!どこ行くのって、幸村重いかなーっと思って・・・罰ゲームも終わったし」



すると幸村は凄い力で私の事を引っ張った。
その反動で私は幸村に飛び付く形になる。



「きゃあ!ちょっ・・・・何して・・・っ」

「フフ、罰ゲームは終わったけどまだのお願いを聞いてないからね」

「お願い!?あたしそんなの言ってない!」

「何言ってんの?今言ったよね?"私を食べて"って

「は・・・!?いやいやいやいや!!!!そういう意味じゃないから!!! それは罰ゲームの一環として言っただけでっ・・・」

「フフ!安心して。今度は俺がのワガママ聞いてあげるから

「きゃーーーー!やだーーーー!!!ちょっ、ちょっと誰か助けて!」

(無茶言うな、)(絶対無理に決まってんだろぃ・・・)(すみません、さん) (すまねぇっす!先輩!)


「皆はもう部活始めてて!!俺はに大事な用事があるから」

「「「「イ、イエッサー!!!」」」」


「は!?イエッサーじゃないでしょ!こらー!聞けーーーー!」

「ククッ、お幸せに。」

「仁王ーーーーーー!!!!(絶対ゆるさない!!!!)」







(10.11.7)