「はい、上がりー!」

「えっウソ!!!!ウソでしょ赤也!?」

「これで先輩の負けっスね♪ふーっ危なかったー!!!」

「ウソだと言ってよ赤也!!ズルして上がったでしょ絶対!!」

の罰ゲーム決定まであと1敗、だな」












トランプのカードをシャッフルしている私の顔が、ふくれっ面なのには理由がある。


私たち立海レギュラーは、幸村と真田の2人が部活動会議に出席しているのを 良い事に、ミーティングが始まる前を利用してトランプをしていた。

そのトランプがまさにふくれっ面の原因だ。



、どんどんシャッフルが上手くなっていくのぅ」

「うるさいよ仁王!」

「まっあんだけ立て続けに負けりゃ上手くなるよな」

「・・・」



ただトランプをするだけじゃ面白くないから、と言い私たちはあるルールを決めた。 それは、「通算3敗したものは罰ゲーム」というシンプルなルールだ。

でも参謀や仁王・柳生は頭がキレるし、赤也やブン太・ジャッカルは 3人に比べると頭がキレるわけではないけど「勝負事」「ゲーム」になると やたら実力を発揮するし。ただ普通に勝負をしたのでは確実に私の負けは確実だ。


だから私はトランプの前にある条件を出した。それは。



「私に限り、5回まで負けるのは許して!」っていうルール。
そして「既に上がった人の知恵を借りてもOK」っていうルール!(ずるい!?)



・・・それなのに。




「まさかが此処まで運と引きが悪いとは知らなかった」




1位通過の参謀の頭脳を持ってしても、私のトランプはダメダメだった。
というわけで私は今4回負けている。だから次のゲームで負けたら罰ゲームが確定、というわけだ。 やだやだ!罰ゲームなんてろくなこと起きない!!

特にコイツらの考えることなんてろくなもんじゃない!




「次から勝つもん!」




私は皆の前にカードを配った。情けない事に、配るのがとても早く・手際の良い私。
このメンバーの中で誰よりもシャッフルとカード配りがプロだと思う。













「ウソ・・・・・・でしょ・・・・・・!!」



「はいっ、先輩残念でしたー!!!」

・・・同情するぜ・・・」

さん、すみません」

最高!!!!お前はやっぱ期待を裏切らないよなーっ」

が罰ゲームを受ける確率は100%と思っていたがまさか此処までとはな」




私は手札をバラバラと落とした。皆の手には手札は残っていないのに、 なぜか私の手札は数枚残っている。なんでー!?



「じゃあ、ちゃちゃっと罰ゲーム決めちゃいましょ♪」

「いやー!!!!」

「大富豪になったのは仁王だったな。仁王が決めれば良い」



参謀がそう言ったので私は仁王の方をバッと見た。
ちょっと余計な事言わないでよ参謀ー!!仁王に罰ゲームを考える権利を与えるなんて・・・

ロクなこと起きないんだから!!!

(なんか楽しそうな顔していらっしゃる!)(何、あのニヤリっていう笑い!)



「そうじゃのぅ・・・。どうしようかの」

「ににに仁王くん!お願いしますっ!変な事は嫌です!」

「変な事とは、前回の赤也の罰ゲームみたいなこと言うちょるんか」

「・・・赤也の罰ゲームか・・・。懐かしいな・・・!」

「真田に下ネタを振る、って厳しかったよな」

「そんな事いって先輩たちお腹抱えて大爆笑してたクセに!!!」



私は仁王の前で手を合わせてお願いした。
すると仁王は何かを思いついたらしく、またニヤッと笑って口を開いた。



「・・・決めたぜよ」

「え!」



一体何を思いついたの・・・!!!



「えーっ何すか仁王先輩!!」

「早く教えろぃ!」



「・・・、お前さんは確か幸村の彼女じゃったのぅ」

「は・・・?そ、そうですけどそれが何か・・・!」

「幸村とは仲が良いか?」

「そ、そりゃまぁ・・・。一応彼氏ですから・・・」

「幸村もお前さんには甘いしの」

「ま、まぁそりゃ皆と比べれば甘いのかもしんないけど・・・」

「なら簡単じゃ」

「え?」




「罰ゲームは・・・ 幸 村 に 膝 カ ッ ク ン する事ってのはどうじゃ?」





!!!???


は・・・はぁー!!!???何を言い出すかと思えば!!!!!!





「ちょっ!!えええええ!?何言ってんのアンタ!?バカだ!絶対バカー!!!」

「ぎゃはははははははは!!!!!それ最高!」

「見たい!見たいっス!めっちゃ見たい!!!」

「そ、それは・・・プッ・・・!面白そうですね・・・!!」

「うむ・・・。精市が膝カックンされる所は俺も見てみたい・・・!」



みんな他人事だと思ってーーーー!!!!
(てか柳も柳生も笑い堪えてるし!!)(2人とも滅多に爆笑しないのに!)




「なぁに簡単な事じゃ。幸村もに膝カックンされたんなら酷い事にはならん」

「あのね!!!あんたたちが私の事をどう思っているのか知らないけど、 私だって幸村怖いんだからね!?

「でも何でも分かりあう仲なんだろぃ?」

「部長も先輩には甘いから大丈夫ですって!」

「ちょっ!本当ヤダっ!」

「罰ゲームで負けたが悪い」

「そんなぁー!」

「うっし!!!なら今日の練習のときに実行決定な☆」

「いやぁあああああ!!!」














「赤也!今のストロークはもう少しテイクバックした方が良い」

「うぃっす!」

「ジャッカル、もう少しブン太の動きを見て。ブン太も 攻めてばかりじゃなくてジャッカルがしんどそうなら緩急をつけて守りに入っても良い」

「わかったぜ」
「OKー!」

「柳生、もう少しラケット面を抑えた方が、レーザーのスピードが増すよ」

「やってみましょう」




はぁ〜・・・・・。今日も相変わらず部員の指示が凄いよ幸村・・・。

練習中の幸村はまるで人が違う。普段では見せない厳しさを纏っていて、 彼女の私ですら軽々しく幸村に話しかけることはできない。テニスをしているときの 彼の眼はとても真剣な目をしているんだもん。


そんな幸村に・・・・・・




膝カックンをしろと!!!???

(もーやだぁー!!)(本当にヤダ!!!)





、大丈夫か?ぼーっとしてるけど、調子悪いの?」



どのタイミングで幸村に膝カックンを仕掛けようか、 幸村の膝後ろを眺めながらぼんやり考えていたら幸村本人に話しかけられてしまった。 やばっ!ぼーっとしてたのバレたかな!?



「うっううん!大丈夫だよ!ただ、幸村こんなにたくさんの部員に指示出してすごいなと思って・・・」

「そうか。なら良いんだけど。熱中症にならないように水分補給はするんだよ」

「うん・・・!」

がいなくちゃ俺もやる気が出ないからね。フフ」




・・・・・かっこいいなぁ幸村・・・・・。

幸村はとにかく部員一人一人の動きを見落とさない。
さっきまであっちで赤也を指導していたと思ったら、背を向けていたコートに入っている ブン太とジャッカルの事もちゃんと見ていて指示が出せる。しかも レギュラーだけじゃなく部員全員一人一人に的確な指示を与えてる。

そしてただのマネージャーの私にもちゃんと声をかけてくれる。
幸村は本当に凄い。幸村が皆の厚い信頼を集めているのも頷けるし、ついていきたいと思う。 (幸村は部員の憧れでもあり、倒したいと思う相手だと思うし)


・・・・そんな彼に・・・・・・・




はマネージャーなんだし、日陰にいてもいいんだよ」

「あははっ!ありがとう、でも平気だよ」

「無理しないで」




膝カックンを・・・・・・!!!!!(もう本当にヤダ!)







練習中は幸村はいろんな部員に指示するためにコートをウロウロするから、 なかなか膝カックンを仕掛けれなかった。何が悔しいって、幸村と真田以外の レギュラーメンバーが私とコート内ですれ違うたびに「頑張れよ」「ファイトっす!」とか 「いつやんだよ」「期待しています」「データを取る準備はいつでもできている」とか 応援をしてくれること!
あんたたち絶対楽しんでいるでしょ!!!



しかし、そんな私に絶好の膝カックンチャンスがやってきたのだった。





「よし!今から試合形式を行う!レギュラーはコートに入ろうか」

「「「「「イエッサー!!!」」」」」



どうやら今からシングルスを行うみたい。
幸村の周りにレギュラーの皆が集まっている。



「最初は蓮二と赤也、入ろうか」

「ええ!?柳先輩っとスか!?」

「よろしく頼むよ赤也」

「へへっ。潰しちゃいますよ♪」



最初の試合は赤也と柳かぁ・・・・・。
どんな試合になるのか楽しみ!・・・と、私がわくわくしていたその時、 仁王とバチッと目があった。

ん・・・???仁王何で私を見てるの・・・?

すると仁王は楽しそうな顔をしながら口パクで何かを訴えかけてきた。



"チャンスぜよ"



確かにそう読みとれた。・・・・・まさか。
仁王が私の顔と幸村の顔を交互に見る。まさか、まさか!!!

私が斜め前に立つ幸村に視線を移すと、幸村は腕を組んで 真田と何かを話していた。そしてその足は片足に重心をかけている立ち方で、 仁王の言う通りチャンスすぎるチャンスだった。


え゛え゛〜〜〜!!!このタイミング!!!???




"今じゃ、"

(無理無理!!いや、今真田と喋ってるじゃん!)

"今やらんといつやるんじゃ"

(だって!)



でも確かに早くこの罰ゲームを終わらせておきたい・・・!!!
膝カックンに失敗してもう一回、と言われるのも嫌だし・・・!
今、確実に成功させておいておいた方がいい・・・(の?)

うう・・・!!!よし、やる!!!


私はこっそり幸村の後ろに移動した。そして目をギュッと瞑って・・・




えい!






私は幸村のピンと伸びた膝の後ろに思いっきり膝カックンを仕掛けた。

するとその瞬間だった。








「うっ・・・!?」





突然の膝カックンに対し幸村は案の定バランスを崩した。けど一瞬にしてバランスを取り戻しその場にとどまった。 しかし幸村の羽織っていたジャージだけがハラリ、と落ちてしまった。


それを見ていたトランプメンバーは顔をそむけて大爆笑だ。
練習中は笑ってはいけないからかろうじて堪えてるけど、口を押さえたり腕で顔を覆ったり、 必死に笑いを堪えている。

皆笑っているしこれで罰ゲームはOKでしょ!
よし!!これで罰ゲーム終了!!!


私は謎の解放感に包まれていた。が、しかしその瞬間ゾッと背筋が凍った気がした。





「・・・・・・





!!!!!!!

この声は・・・・・・・・・





肩にポン、と手を置かれた。

こ、怖くて後ろを振り向けない・・・・・・・・!!!!!





どういうつもりかな?





怖さで声が出ないのはこの事だ。


顔を引きつらせながら、私は恐る恐る後ろを振り向いた。

するとそこには満面の笑みを浮かべる幸村の姿。だけど
肩に物凄い力がかかっているんですけど・・・!!





「あははは・・・!幸村、緊張してると思ってリラックスさせようかと・・・」

「俺に余裕がないとでも言うのかい?」

「いやっそういうわけじゃ・・・・」



ぎゃーーーーーーー!!!!!怖い怖い怖い!!!

仁王タスケテ!!!
大富豪でしょあんた!!!!!助けなさいよ!!!
(お腹抱えて大爆笑してるじゃない!)

仁王やトランプメンバーの方へ助けの視線を送っているのに気がついたのか、 幸村が「ん?」と何かに気づく。



「分かった。・・・さては俺を罰ゲームにでも使ったね?」



バレていらっしゃるーーーーーーー!?



「困ったね。まんまとやられてしまったよ」

「あはは・・・・・!」

、負けはいけないね」

「そうだよね・・・!」

「それに俺に膝カックンを仕掛けるなんていい度胸してるよ」

「あはは・・・っ」

「しかも練習中に仕掛けるなんてね」

「そ、そうですネ・・・・!」

「これはお仕置きが必要なようだね」

「おしおッ・・・!?」




幸村はにっこりと笑って、私の手首をギュウウウウウッと思いっきり握った。
(痛い痛い!!!)(それ以上に笑顔が怖い!)




「俺からもに罰ゲームを与えよう」

「えっえっと・・・あっ!幸村!!!ジャージ落ちてるよ!!」




幸村の注意を逸らそうと、私は幸村に手首を握られたまま 落ちていた幸村のジャージを指さした。
すると幸村は後ろに落ちた自身のジャージに少しだけ目を向け「ああ、」と言った。




「ほっほら!ジャージ拾った方がいいんじゃない!?」

これはジャージを拾うゲームじゃないよ。俺ともっと違うゲームをしようか」

「いててててて!痛い!!!!!」

が楽しめるゲームだと思うから」

「いやだ!痛い痛い!!離してー!!!」

「皆は試合してて!俺はちょっとに用事があるから」

「「「「「イエッサー!!」」」」」


「はぁー!?いやっちょっとイエッサーじゃないでしょ!?たっ助けて仁王!!!」

「プリッ」

「仁王ーーーー!!!!(後で覚えてなさい!!!)」








(10.8.2)