今日は珍しく朝練がない日。

朝練がない日はかなり寝坊できるし、ゆっくり朝を過ごせるから好き。
余裕を持って朝を過ごすと一日の過ごし方も違ってくるって本当だよね。

いつもより寝坊して、いつもよりゆっくり支度して。
私は「いってきまーす」と家を出た。


今日は朝からいい天気!いい気分で一日過ごせそう!












学校に近づくにつれ、同じく立海の制服を着た生徒をよく見かける。

いつも朝練の時間が早すぎて、テニス部以外の生徒はあまり見ないから こういうのって新鮮だ。


テニス部の人たちと顔を合わせないのってほんっと新鮮!

まぁ、たまにはこういうのも良いかもしんないよね。
(気分転換にね)(幸村に朝から会えないのはさみしい気もするけど)



「・・・あれ?なんか立ち止まってる生徒がいっぱいいる・・・」



どうしたんだろう。
昇降口付近に近づくにつれ、引き返す生徒・Uターンして立ち止まる生徒が 多い気がする。何かやってるのかな・・・。

・・・・・・。


・・・・・・いや、立海生徒歴3年目の勘からして・・・これはきっと・・・




「そこ!!!ネクタイはちゃんと締めんか!!」




やっぱり・・・・!!!

出たよ出たよ、風紀委員の服装検査!!!


はぁ〜・・・・これが朝からある日ってテンション下がるのよね・・・!
特に真田に怒鳴られた日なんて・・・!午後の練習前にも注意されるしめんどい・・・!

ヒロシならまだ優しく注意してくれるから良いんだけど。


・・・でも今ならちょうどたくさん生徒が登校してるし、真田にバレずに 教室まで上がれるかも!よし。このまま何気なく通り抜けよう。



私はスタスタスタと真田(とヒロシ)を避けるように昇降口へ入り、速やかに 上履きに履き替えた。そして何事もなかったかのように風紀委員の 並ぶ箇所を避けて教室へ上がろうとした。が、しかし。




「・・・!!!」



・・・げ。



「見て分からんか?今朝は風紀委員にチェックされなければ、此処を通り抜けることは 出来ない」

「・・・う・・・!」



う・・・!!!よりによって真田に見つかってしまった・・・!!!

真田はさっきまで私とは反対方向を、腕を組んで厳しい目線で見ていたのに 私を見つけた途端私のことを腕を組んで足元から頭のてっぺんまで見つめる。 ぎゃー!絶対言われるーー!!



「・・・

「は、ハイ・・・」

「スカートが規定より短い!!直せ!!」

「なっ、テニス部じゃん!いつもこうじゃん!見逃してよ〜!」

「たわけ!!!バカなことを言うな!!」



そんな怒鳴らなくても!冗談じゃない、真田ー!
真田が怒鳴る声と私の声に気がついたのか近くにいたヒロシが笑いながら此方へやってきた。



「おはようございます、さん」

「あっ!おはよう、ヒロシ!」

「真田くんとの口げんかは部活中だけではないのですね」

「も、もう!そういうわけじゃ・・・」

、お前香水をつけているな?」

「つっつけてないってば!もしするとすればワックスの軽い匂いで・・・」

「言い訳は聞かん!!ったく、赤也と言いと言い・・・たるんどる!」



あ、赤也も捕まったんだね・・・!(午後練に愚痴大会開こう)
真田が私のスカートを指さして「直せ」と促す。
すると、その時だった。



「フフ、うちの部は朝からにぎやかだな」

「あ!幸村ー!!(助かった!)」

「む・・・。幸村・・・」



朝からご機嫌良く登校したのは、幸村。
私たちのやり取りが聞こえていたんだろう。状況を一瞬で飲みこんだらしく、 クスクスと笑いながら私たちのところへ近づいてきた。



「真田、朝から怒鳴ってたら血圧上がるよ」

「・・・そうだな」

「で、俺の服装はどうなんだ?」

「うむ。テニス部部長に恥なし!模範的な格好だ」

「そうか。フフ、良かった」



真田め・・・!!相変わらず幸村には甘いんだから・・・!!
いや、幸村が強すぎるのか。でもまぁ、幸村は身なりはピシッとする タイプだし引っ掛かる部分なんてないんだけど。 たまにネクタイを緩めるくらいで。



「それで?は何で引っ掛かったのかな?」

「あたしは別に・・・」

さんは規定よりスカートが短いそうです。幸村くんからも言って下さいませんか?」

(ヒロシ!裏切った!)

「・・・スカート?」



真田と柳生に言われて幸村は頭に疑問符を並べながら、私のスカートに視線を落とした。 な、なんか男3人にスカート見られるとちょっと恥ずかしいんだけど! そりゃいつもこんな格好だけど、でもなんだろう・・・!変に緊張する!



「いいじゃない、真田。これくらい許容範囲だろ」

「しかしっ・・・」

「さすが幸村!!だよね!分かってくれるよね!!」



幸村は「フフ」と笑った。真田と柳生は眉間にしわを寄せてため息をつく。



「でも、いつもはこれで良いけど今日は校則を守る日だから、は とりあえずスカートを直すべきだと思うけどね」

「幸村くん・・・」

「幸村・・・!」

「えー!幸村までそんなこと言うの!?」



スカート、私より短い子なんていっぱいいるじゃん!
そんなに注意することじゃないじゃん!私は頭の中で反論の言葉をたくさん思いついたけど、 どれも陳腐なものばかりで幸村に全て言い返されそうだからグッと堪えた。



「当たり前だろ。真田と柳生に苦労かけるなよ、

「その通りだ。観念してスカートを正せ」

「気の毒ですが、これが風紀委員の仕事というもの」

「う・・・!」


「フフ。どうやら分かったみたいだね。真田、の事は俺に任してくれないか? スカート直させるから」

「うむ。幸村がそういうのならば後は任そう」

「ええ。幸村くんがいるのなら安心ですね」

「は!?」

、ちょっとこっちこようか」

「へ!?あっ、ちょっと!!」




顔に浮かべる笑顔とは正反対の凄く強い力で手首を引っ張られて、ズカズカと廊下を突き進んでいく幸村。

廊下を進むにつれ生徒がいなくなる。教室のある階は上だから 生徒がこの辺にいないのも当たり前なのだけれど。
ある程度進んだところで、私は急に壁に押しつけられた。
私の顔の横に幸村が左手をダンッとつく。か、顔近い・・・



「な、なんでしょう幸村くん・・・」

「誘ってるのか?」

「は!?」

「フフ、だから・・・誘ってるのかって聞いてんだけど」

「なっ・・・!」



幸村がだんだん私の顔との間合いを詰めてくる。



「幸村ちょっとストップ!!一旦待とう!」

「質問に答えてくれる?は俺だけじゃなく真田や柳生まで誘ってるんだ?」

「何言って・・・」

「スカートを直さないってことは・・・真田と柳生にもっと 間近で足を見て欲しかったんだろ?」



どんだけねじ曲がった発想してんの!!??



「ち、違うってば!ただ単にスカートはある程度短くしないと制服がもっとダサくなるから・・・っ」

「フフ、あの2人絶対ムッツリだからね。今の事考えてるよ、きっと」

「話聞いてる!?」

「あの2人にの事は考えて欲しくないな。だって・・・」

「!」



は お れ の だからね」と耳元でゆっくり言う幸村。



「あの2人の頭の中でが汚されると思ったら、俺も頭がいっぱいだ。」

「え・・・」

「フフ、今から部室行こうか?」

「え!」

「真田と柳生に約束しちゃったからね。任せてくれって」

「いやっ・・・あのー・・・それはちょっと」



幸村は超嬉しそうな顔でニッコリと笑う。



「ちょうど思ってたんだ。朝練がないとやっぱり朝が始まらないって」




余裕を持った、爽やかで優雅なあたしの朝を返して!






(幸村、朝から何言ってるの!?大丈夫!?)(俺はいつも大丈夫だよ) (1時間目あるしっ、ね??)(さんは、幸村くんが 調子が悪そうだから付き添ってます、って言えば大丈夫だよ) (仮病じゃん!)(俺が言うと信憑性あるだろ?フフ)(確かに…。じゃなくて!!とにかくいや!絶対いや! 朝から無理!)(フフ、そんな事言っていつも気持ち良さそうにし(してません!!)


(10.6.26)