「ねぇ幸村・・・私たちが付き合ってることについて提案があるんだけど・・・」

「うん、何?」

「あのさ・・・」

「うん?」



「付き合ってること、皆には内緒にしとかない!?」








2年越しの片思いを経て、数日前から晴れて両想いになれた私と幸村。

私はずっと前から幸村のことが好きで(それ目当てにマネージャー始めたしね!)、 幸村もここ数か月前くらいから私のことを好きになってくれたみたいで、 好きな相手から告白されるという理想的な形で交際をスタートさせた。


幸村と付き合えてることが幸せでたまらない!


・・・だけど・・・



私はどうしても、周りにはこのことを言いたくなかった。
だって・・・



絶対反感買うから!!!




私にとって立海テニス部の皆は大事な仲間だし、これからも大切にしていきたい友達だ。 でもそれとは別に「女子」の交友も大事にしていきたいんだよね。

ただでさえテニス部のマネージャーってだけで反感買いやすいのに
幸村の彼女です。だなんてバレたら何をされるか分かんないもん!!
(幸村目当てに部活してたのかよ!!って嫌がらせされちゃいそうだし)


幸村はバレンタインデーにチョコレートをくれた人全員にお返しを返すくらい優しくて 心が広い寛大な人物だ。さらに勉強もできてスポーツもできるし、 テニス部の部長やってるときは誰よりもかっこいいのに、普段の姿は 穏やかで優しい。そのギャップにやられてる女子は多数存在する。

つまり、多くのファンを抱える幸村の彼女になるのは困難だということ!



確かにきっかけは幸村目当てだったけど、決して幸村目当てに部活してたわけじゃない。

さっきも言ったけど、私にとってテニス部の皆もテニス部の部活内容も大切なこと。
だから幸村が好きな事も周りには秘密にしていたし、 皆には平等に接してきたつもり。



そうでもしないと・・・ほら・・・女子って・・・

男絡みとなると友情や交友関係が崩壊するって・・・よく聞くじゃない?


こんな言い方をすると、本当に幸村が好きなのかと問われそうだけど
私にとって幸村も大事だけどでも友達も大事なの。




だから、私はその説明も踏まえて幸村に

「この関係は秘密にしとかない?」

って提案をしてみたんだけど・・・・・





「・・・フフ、。面白いことを言うね」



・・・不敵な笑みを浮かべる幸村。
この顔は絶対に秘密にしない顔だ。



「幸村、違うの。何回も言うけど私は幸村のことが大好きだよ、だけど」

「へぇ。じゃあ俺と一緒にいるのが恥ずかしいって意味かな?」

「だから違うってば!だからその、女子からの反感が怖いっていうか・・・」

「反感なんて勝手に買わせておけばいいだろ?」

「だからそうじゃなくてー・・・!!」

「それともは、俺がそういう女子からのイジメからを守れないとでも 思ってるのか?」

「そんなことは・・・!(むしろそれは女子の方が可哀想かな・・・)」

「じゃあ良いだろ?俺だって嫌なんだよ。に馴れ馴れしく話しかける赤也を見るのは。 これでやっとが俺のものになったんだから、知らしめたほうが良いに決まってる」



恥ずかしがらずに淡々と顔が赤くなるようなセリフを吐く幸村。
お、俺のものって・・・言われると嬉しいじゃない・・・!!!(幸村のばか!)

いやいや、でも此処は幸村に流されちゃだめよ私!



「幸村、お願い!頼むから!ねっ??」

「お願いされてもねぇ。どうしようかな、フフ」



幸村は私のことを何か企んだような瞳で見て笑う。
右手を口元に当てて、まるで「全ては俺次第」と言わんばかりの表情だ。


・・・と、その時だった。




「あっれー!!!!お前ら2人来てたのかよ!!!」

「!!!!」

先輩に幸村部長が部室1番乗りって珍しいっスね〜!!」

「ピヨ」

「げっ!」



げ・・・!!! プリガムレッド・・・!!!(こんなときに!)
正直今一番会いたくない人ランキングベスト3の3人だわ・・・!だって


顔に出る・うっかり口を滑らせる・隠し事向いてないNo.1の赤也、

女友達が多い・すぐ喋る・お菓子で買収されて秘密を漏らすNo.1のブン太、

口は堅いけどやたらと面白がる仁王・・・!!!


よりによって大事な話の途中に〜!!!



「げ、とは何だよ

「べ・・・別に・・・」

先輩、幸村部長と何話してたんっスか〜!?」

「え・・・!えっと、そのー・・・部活の「の相談に乗っていたんだよ」



!!!???

幸村は私の発する言葉に言葉を重ねた。
パッと幸村の方を見ると、幸村は穏やかな笑顔でニッコリと笑っていた。

なっ・・・!!何を考えているのかな幸村くん・・・!!!



「ほぅ、お前さんが幸村に相談とは珍しいのぅ。

「え、ええっと・・・」

「相談って何の相談っスか?部活のことっスか?」

の好きな人についての話だよ」

「なっ!!!」



幸村ーーーーー!?



「え!?先輩好きな人いるんスか!?」

「教えろぃ!俺がキューピットになってやるぜぃ」

「ほぅ。の好きな人、ねぇ・・・」

「誰なんスか!?教えてくださいよっ!!俺の知ってる人っスか!?」

「そういう話は俺らにも聞かせろよなぁー!

「えっ、いや、あの、ちょっと待って!ねぇ幸村ちょっと!!」



めんどくさい3人が話に食いついてきた。
一体何を考えてるの?幸村・・・!!



「幸村部長は知ってんスか!?先輩の好きな人!!」

「フフ。それが俺にも教えてくれないんだよ」

「え・・・!」

「赤也も気になるだろ?だからそろそろ教えてくれないか?

「なっ・・・・・!!!!!」




厄介な3人に加えて幸村がにっこりと私を見てくる。




「相手が誰か教えてくれないと、恋愛相談には乗れないな」

「そうですよ!!で、誰っスか!?あっ!!テニス部の誰かとか!?」

「ちょっと!何話進めて・・・」

、誰なのか教えてよ?」



こっ・・・このドSめ・・・・・!!

秘密にしたい手前、私は誰が好きかなんて言えるはずがない。
それを知っていて誰が好きかこの場で言えって、幸村・・・・・!!



「黙っとるところを見ると、テニス部なんじゃな」

「何言ってんの仁王!!ていうかあたし好きな人なんていな・・・っ」



「いない」。私がそう言いかけた時、不意に視線を感じた。
視線の方を見ると 幸村が「それは違うだろ」という目を私に向けていた。

う・・・!!!最悪だ・・・!!!



「あーーー♪先輩絶対嘘ついたー!!」

「テニス部の誰だよ!?やっぱ3年!?」



ブン太と赤也が異常に私に食いついてくるし!!!(幸村が睨むからだよ!)
どうしろっていうのよー!!



「その様子を見ると・・・の口から言うのが嫌なくらい恥ずかしい相手なのかな?」

「え゛・・・!いや、そういうワケじゃ・・・」

「じゃあ誰か言えるよね」

「〜〜〜〜〜!!」

「・・・フフ、じゃあこっちから当てて行こうか」



は・・・・・・!?



が好きなのは真田?蓮二?」

「ち・・・違うわよ・・・」

「柳生?ジャッカル?」

「それも違うってば!」

「じゃあ分かった。赤也かな?」

「お、俺っスか!?」

「ち・・・違うし・・・」

(違うのかよ!)

「じゃあ仁王?ブン太?」

「どっちも違うよ・・・!!」

(あれ・・・なんかちょっとショックなんだけど俺)

(プリッ)



すると幸村は腕を組んでいた手をほどいて、顎に手を当て わざとらしく「うーん」と悩んだ。そして、




「フフ、分かった。俺か?」




ニヤリ、と口角を上げて自身を指さしながらそう言った幸村。

とっさに「違う!!!」って言おうとしたけど、どうやら私の感覚や感情は 全て幸村に掌握されているようだ。勝手に私の耳と顔が赤くなり、 勝手に口が黙り込んでしまう。



「っえーーーー!!!!!じゃ、じゃあ先輩の好きな人って・・・」

「まさか・・・・・」



「俺みたいだな。フフ」




幸村は立ち上がった。そして私の腕をガシッと掴むと、 有無を言わさず部室のドアを開けた。



「きゃっ!ちょっと幸村どこに行くの!!」

「ブン太、仁王、赤也」

「「「は、はい・・・!!!」」」


「俺とはそういう関係だから」

「「「は・・・はい・・・・・。」」」」


「もしが嫌がらせを受けているのに気付いた場合は、すぐに俺に報告すること。 いいね?」

「「「はいっ・・・!!!」」」


「じゃあ俺はに大事な話があるから一旦席を外すよ」

「「「はい・・・!!!」」」



幸村の言葉に素直に返事する3人。

私は幸村に掴まれている自分の右手に少しの痛さを感じながらも、 「そういえば、幸村に敵う人なんていないんだった」と思った。 そうだ。よくよく考えてみれば幸村に敵はいなかった。


私は一体何を悩んでいたんだろう・・・


女の子に反感買ったって


幸村がなんとかしてくれるに決まってるじゃない



それに・・・冷静になって考えてみれば・・・

そんなことで嫌がらせする友達なんて本当の友達じゃないし・・・

幸村がそこまで考えてそう言ってくれたのかどうかはさておき、
(きっと彼のことだから、単に皆に言っておきたかっただけだと思うし)


秘密にしなくても、大丈夫かなぁ。






「・・・なんでしょう」

「まさかの方から皆にバラすとは思わなかったよ」

「は、はぁー!?違うじゃん!幸村がっ・・・」

「俺が?」

「・・・・・!!!・・・・もういいです」



幸村は私の気も知らないでクスクスと笑った。
これが本当に「趣味がガーデニング」っていう男の性格なんだろうか。
趣味が悪すぎるし、歪みすぎてる!



「フフ。大丈夫、俺はから目を離さないから」

「幸村・・・」

「それにきっと、嫌がらせなんてする人はいないんじゃないかな」

「え?なんで??」

「だって、俺がの事好きって周りにバレてるからね。 と付き合う前から、俺はそういうオーラ出してた」

「そうなの!?」

「うん。それでもは俺との関係を隠したいか?」

「・・・!」

「俺じゃ不満か?」

「そんなことない!・・・幸村の事は自慢したいくらい大好きだから・・・」

「そうか」

「幸村の言う通りかもしんない。隠したってそのうちバレるし、 自然体でいるのが一番いいよね」

「ああ。そうだね」

「ごめんね・・・。幸村」

「好きだよ、

「なっ!幸村、それごめんねの返し言葉じゃないよ・・・」

「そうだったかな」




幸村は私の頭を軽くなでると、そのまま片手で私の後頭部をグッと押し込み、 自分の胸の方に抱き寄せた。

「幸村!公の場でこういうのはちょっと!」と抵抗しても、幸村は 絶対にやめてはくれなかった。私は幸村に抱き寄せられていて 周りの状況が一切見えないけど、部活をしにやってきた生徒がざわざわと 私たちの方を見ているのが感覚だけで分かる。


ああ、なんで私の彼氏は、


こんなにも性格が悪くて

曲がっているのに




「フフ、やっぱり秘密の関係の方が燃えたかな?なんてね」




なんでこんなにかっこいいんだろう・・・。
幸村に言われると、なんでも飲みこんじゃうよ。



でもこんなこと幸村の前で口に出したら、それこそ嫌な予感がするので




これだけは私の胸でこっそり秘密にしておこうと思う。





「身も心も幸村次第」なお話でした(10.6.18)