「先輩たち聞いてくださいよ!!!」



部室のドアを開けると同時にそう言い放ったのは赤也だった。
既に部室で着替えている最中であったブン太・ジャッカル・柳・柳生は振り返った。
また、既に着替え終わって部室で日誌を書いている、マネージャーのも振り向いた。

着替え中に部室に居合わせているについては、いつもの光景である。




「赤也、なんか嬉しそう」

「なんだよ赤也」

「やたら機嫌良さそうじゃねーか」

「何か良い事でもあったのですか?」



いつもより凄く機嫌良さそうな赤也を見て、口ぐちに言う3年生。



「やっぱそう見えちゃいますか!?いや〜参ったなぁ〜」

「勿体ぶってねーで教えろ!」

「うわわ!痛いっスよ丸井先輩ッ!!」

「・・・さては赤也、彼女でも出来たか」

「・・・え゛ーーーー!!!!!!なんで柳先輩知ってんスか!?」

「やはりな」


「えー!!!!!赤也に彼女ーー!!!???」

「は!?お前何女なんか作っちゃってんだよ!?」

「すみませーん、丸井先輩」

「可愛いあたしの赤也が〜・・・!!!」

「って、先輩には幸村部長がいるでしょ!」

「良かったですね、切原くん。おめでとうございます」

「驚いたな・・・。まさか赤也に女ができるとは・・・」

「ジャッカル先輩もすみません、お先っス!」



部室は一気に赤也の彼女についての話題になった。



「で、どんなやつなんだよ?その女って」

「気になる気になる!どんな子なの!?」

「めちゃくちゃ可愛いっス。やばいっすよ」

「お前の可愛いじゃわかんねーんだよ!」

「ふむ。確かに赤也のさじ加減じゃ分からないが、確かにその子は可愛いと評判の子だ。 2年B組の去年文化祭実行委員をしていた、家庭科部の子だろう?」

なんで柳先輩知ってるんすか!??

「ああ、彼女ですか」

「家庭科部?・・・・・あーアイツか!マジかよ・・・」

「柳写真とかないの?」

「ああ、これだ」

「何で柳先輩が写真持ってんスか!?つか先輩たちもフッツーに知ってるしー!!」



どうやら、ピンとくるものがあったらしい。



「でも赤也、お前初カノじゃねぇの?」

「そうなんス!!今から何しようかドキドキっすよ」

「赤也かわいいーーー!!!その純粋な言葉、精市にも聞かせてやりたい!」

「へー・・・若いな・・・赤也」

「何すか、その"俺にもそんな時代があったな"的な目・・・!」

「身近なやつに彼女できると自分も欲しくなってくんのは何でだろうな?」

「これで部内で彼女がいる人は切原くんと幸村くんのお2人ですね」

「ま、幸村の彼女はだけどな」



「でも彼女っていいっスよね!マジ、可愛いっす。幸村部長が先輩のこと いじめる意味がちょっと分かった気がしますね〜」

「どういう事だ?」

「俺の彼女・・・結構M入ってんですよね。だから反応見たくてこう・・・ついつい 意地悪いこと言っちゃうっていうか!からかいたくなるんスよね」

「へー・・・。まぁ分からなくもねぇけど。」

「赤也、一応訂正するけど・・・。私がMなわけじゃなくて、ただ単に精市がSなだけだからね??」


「例えばどんな意地悪してんだよ?」

「例えばっすか?ん〜〜っ・・・。あっ!俺の事好きって言って・・・とか?」

「プッ!!!ハハハハ!赤也、お前かわいーな」

「あははは!!!可愛い可愛い!赤也最高!」

「何スか!!」



とブン太は手を叩きながら、ジャッカルと柳と柳生は堪えながら大笑いをした。
どうやら赤也のすることが可愛くておもしろかったらしい。

自分は彼女をいじめる立場だが、どうやら部活にいるといじめられる立場らしい。 赤也は少しだけ顔を赤くした。




「なっなら先輩方は彼女にどんな意地悪したことあるんスか?」



3年生は顔を見合わせた。



「そりゃあるだろぃ」

「それが楽しくて付き合ってる部分もあるしな」

「柳生先輩もスか!?」

「それは・・・否定はできませんね」



と、その時だった。



「なんじゃ、楽しそうに」

「お、仁王じゃん」

「今、ちょうど切原くんの彼女についてお話していたところだったのですよ」

「ん?なんじゃ、赤也・・・お前女が出来たんか」

「そうなんス!」


「ちょうど良かったじゃん!赤也、仁王に聞いてみようよ!」

「?」

「なぁ仁王、お前今までに彼女にしてきた意地悪、赤也に教えてやれよ」

「意地悪?」



仁王は、少しだけ目線を横にずらし考えた。
そしてニッと笑い赤也に返答した。



「残念。思いつくものは全部ここでは言えんような事じゃ」

「えーっ!!!」

「なんてな。例えば他の女と楽しそうに喋っとるとこを見せつける・・・とかかのぅ」

「え!?彼女いるのにですか!?」

「そうやっといて、後で拗ねとる彼女に優しくすると・・・いつも以上に 甘えてきて可愛いんじゃ。グッとくるのぅ」

「へー・・・・・。」


「俺はその逆だな!彼女が他の男と話してたら、その事について後ですっげー 問い詰める!!問い詰めた後、俺の機嫌取ろうとする彼女が可愛いーんだよ」

「ま、丸井先輩っぽいっスね・・・」


「柳はアレだよね。結構言葉攻めに近いよね」

・・・。それは人聞きが悪いぞ」




と、そのときだった。




「やあ皆楽しそうにしてるね」

「「「「「 幸村!!! 」」」」」


「あ、精市だ。先にきてるよ」

「ああ」




幸村が部室に入ってきた。




「何の話をしてたんだい?」

「あのね、赤也に彼女ができたんだって!」

「へぇ。赤也に彼女か。フフ、それはおめでとう。赤也」

「どもっす!!」


「そうだ。なぁ幸村、お前今までにどんな意地悪したことある?」

「意地悪?」

「そ。赤也がさー、彼女に意地悪するのが楽しいっていうから、 今皆でどんな意地悪したことあるか語っててさ」

「フフ。残念だけど俺は意地悪なんかしたことないよ」

「精市、嘘つかないの!」



幸村はテニスバッグをロッカーに収め、ネクタイを外しながら笑った。



「そうだなぁ・・・。俺は今までどんなことをしたかな。ねぇ、



(この時点で軽くの事いじめてるよな・・・幸村・・・)
に言わせて辱めようとしとるの、確実に)



「そういわれてみれば、私精市の意地悪に付き合いすぎて 慣れてるかもしんない」

「どんだけいじめてるんスか!部長!」

「フフ。からかいたくなるのは仕方がないからね」



思い返せば、いつも幸村はをからかっているような気がする。
幸村はシャツのボタンを外しながら、思いだしているようだ。



「うーん、そうだな・・・。何があったかな」

(ドキドキ・・・)

「・・・・・うん、俺が意図してをいじめてしまったのはアレかな」

「え??どんな意地悪なんスか!?」

「からかう程度に少し意地悪言っただけだよ?」

「教えてくださいよ!」




部内のレギュラー陣でさえも恐れるぐらいのドS、幸村。
そんな幸村がに言った意地悪とは一体何なのか。

赤也以外の面々も興味津津に幸村の言葉を待った。
すると幸村は微笑みながら口を開いた。



「で?なんて言ったんですか??」




「・・・・・舐めろ、かな。フフ」







(ちょっ・・・・えええええええええ!!!!!)
何を!?何を舐めろと!?)
(精市・・・お前はやはり、予測を超える男だ・・・!)
(幸村くん・・・さすがです)
、お前一体そのあとどうしたんじゃ・・・)
(何があったんすか先輩!)



幸村の想像を絶する一言に、皆一瞬にして固まり、そして焦った。

そんな部員達を見て幸村はクスクスと笑いながら、着替えを続けた。
焦る部員を見て一人楽しむ幸村に、は皆に聞こえないよう声をかけた。




「精市、そういう事言うから意地悪なのよ」

「フフ。そうか?嘘は言ってないけどね」

「そ、そりゃそうだけど・・・!」



実は先日デートをしたとき、2人でアイスを食べていたのだが その時の幸村の冗談なのである。「一口食べていい??」と聞くに対して、 ズイッとアイスを差し出し言った一言。



「ウチの可愛い部員だからね。いじめたくなるんだよ」

「・・・かわいそうに、皆」



は騒ぐ皆を見ながらひそかに「苦労かける、」と思った。




Borderless I love you.
(もちろん、が一番可愛いから一番いじめたくなるんだけどね)



(10.6.5)