また見てしまった。


頭では分かっていても気持ちがついていかない、なんてことよくあること。


そう私は見てしまった。何をって、彼氏である白石が告白されてるとこを。


付き合う前から白石はモテてたし、白石に興味ない頃は「すごいな〜」ぐらいにしか思ってなかったけど、 いざ付き合うってなってからは・・・・なんか気になる。


これは昔から「よくあること」で、「白石=イケメン」は事実であり「イケメン=モテる」のは しょうがないこと。この学校における自然の摂理だ。なのに私はこれを受け入れることができない。 告白する子も彼女持ちと知ったうえで告白しているから余計に受け入れられないのかもしれない。



白石に告白されたとき、私はまさか白石が私の事好きなんて思ってもいなかったから ビックリした。でも嬉しかったから「お願いします」と言って私は彼と付き合い始めた。
白石みたいなキラキラした人と付き合うと周りが放っておいてはくれないだろうなぁ・・・と覚悟してたから、 あえて付き合ったことは言わないようにしてた。(聞かれてなかったっていうのもあるけど)

でも白石は周囲との会話の中でフツーに 「おるよ〜」「え?誰って、3組のやけど」って言っちゃってすぐ学校中に拡散。
私のことを隠さず、ちゃんと「彼女やで」って付き合ってることを言ってくれたところはすごく嬉しかったけど・・・! それを聞いて大騒ぎする人はたくさんいて。 中にはショックを受けて泣いちゃった子、私のクラスまで顔見に来てヒソヒソ言って帰る子、 いろんな人と遭遇してこのころは毎日学校に来るのが辛かった。




付き合い始めこそこんなトラブルに巻き込まれて、「白石と付き合うの大変だな・・・」 「こんなにつらいなら付き合わなかったほうが良かったのかな」なんて思って凹んでたけど・・・


なぜか何の素振りも見せていないのに、私のストレスやらプレッシャーに白石は気づいてくれていて。 「、周りが何と言おうとが俺の事を"生理的に無理!"って思うまでは絶対別れるとかないから」 って断言してくれて、私はかなり救われた。この人となら辛いのも大丈夫かも、ってそう思った。

そこから徐々に私も「白石の彼女でいいんだ」って開き直って、 白石のことどんどん好きになっていって今に至る。付き合って知れば知るほど白石は優しいし 面白いしかっこいいし頼りになる。たまにちょっと変だけど。




だからこそ。
白石が告白されてるとこを見ると、「こんなに優しくてかっこいい人が私と付き合ったままでいいのかな」って 不安になる。付き合ってもう結構経つけど、付き合い始めのあの「辛かった頃」の私の気持ちが 湧き上がってくる。
あの頃と違うのは、私が白石のことをもっと好きになったということ。
白石のことがもっと好きになって、離れたくなくて、不安があの頃よりもっと強い。





「・・・白石、今日告白されたでしょ」

「え?」




放課後、白石の家にお邪魔したときそう言うと白石はちょっと気まずそうに笑った。




「あー・・・まぁ、な。でもおるし」

「相変わらずモテるんだね」

「・・・嬉しいけど、ホンマに好きになった子に"好き"って言われた方が何倍も意味があるで」

「そっか・・・」


「・・・・・・・・なんかあった?





優しい声で白石が私を覗き込む。
本当に彼はよく気づく人だ。




「・・・・ただなんとなく・・・・・・・。白石がモテてるとこ見るの辛いなって思っただけ」

「あれ。やきもち焼いてくれたん?」

「・・・・そうなのかも」

「可愛いやっちゃなぁ」




白石はそう言って私の頭をポンポンとなでてくれる。



「ねえ白石、ちょっとめんどくさい事言ってもいいかな」

「ん?ええよ」

「好きだよ」

「全然面倒くさないやん!むしろめっちゃ嬉しいヤツやん」



白石のツッコミにちょっとだけ明るい気持ちになる。
笑っていると、白石が「・・・ちょっとこっちおいで」って手招きした。
だから私は白石に呼ばれるまま白石に近づいた。



「付き合った時からいつも辛い思いさせてごめんな」



見透かしたように言う白石。白石は本当に私の気持ちを軽くするのが上手い。
白石といると自分に前向きになれるし、すごく安心する。

私はあぐらをかいて座る白石に手を引かれ、白石と向き合う形で彼の膝に乗る。
白石は私の腰に手を回してぎゅっと抱き締めてくれた。



「やきもち妬いてくれるのも嬉しいけど、妬く必要ないくらい俺はのこと好きやで」

「・・・・・ありがと」


「なんかあったらすぐ言うてな」

「・・・うん」



優しいキスは契約書のサインのようだ。

ねえ、白石。心の中でさっきよりめんどくさい事言ってもいい?



もっと、もっと。





(18.4.8)