「財前くん、いいかな?」

「いや忙しいんで」

「えっありがとう!あのね、」

「いや全然話聞かんやん。聞いた意味ないやん」











おやつの時間。
私は財前くんがおやつを食べている所に自分のおやつを持って移動した。

ちなみに今日のおやつはアッツアツの大判焼き。
外皮はパリパリ、中の生地はモッチモチ。粒あんもぎっしり詰まっている。
出来立てだから大判焼きを手で割ると、あんこから湯気が出るぐらいアツアツ。




「はぁ・・・・・・蔵ってかっこいいよね・・・・・・・」

「そーですねーイケメンっすねー」

「でもね財前くん、私すごい事に気づいたの」

「へー」

「私ね、蔵はイケメンだし中身もイケメンだし完璧でしょ?だから女子にモテるのは仕方ないと思ってるの」

「で?」

「そりゃ私と蔵が付き合ってたとしても、やっぱ蔵が告白されたっていう報告を受けたら 多少なりともダメージがあるの。モテるのはいいことだけどやっぱり嫉妬しちゃうよね」

(モグモグ)

「昨日も1年生の子から差し入れとかもらっちゃってさー・・・。部活前だったから 私と蔵の2人でラブラブミーティングしてたのに」

「そのラブラブって要ります??普通に打ち合わせてただけやろ」

「蔵は優しいから私が見てしまったものだからってめちゃくちゃ謝ってくれて。 差し入れも金ちゃんにあげようかな、なんて言うから 差し入れはちゃんと気持ちこもってるから蔵がキチンと食べなさいって言ったのよ」

「へー。意外と人間出来てますね。先輩」



「でもそんな女の子たちよりももーーーーーーーーーっと危険視しないといけない人がいることに 私は気づいてしまったのよ財前くん・・・!!!!」

「危険視って・・・。どっちかというと先輩の方が危険っすわ」

「誰かって?よくぞ聞いてくれました!!!!」

「いや聞いてへんし。ホンマ勝手やわーこの人」


「・・・金ちゃんよ・・・!!!!!」

「は?遠山?なんで?アイツ、めっちゃガキやん。てか何でオトコやねん」

「冷静に考えてみて。2年生までの蔵はただの完璧な人で、悪く言えば特徴のないひたすら かっこいいイケメンだったでしょ!?」

「はぁ。まぁ・・・そうっすね。イケメンってだけで悪いもクソもないけど、そこツッコんだらアカンのやろ?」

「しかし!!!3年生になってから金ちゃんが入学して、 蔵の見た事ない面倒見のよさ、問題児を扱うスキル、子どもを甘やかすような優しさ! こんな一面が見れたというわけです!」

「あ〜」

「またそれで蔵のファンが増えちゃったわけ!私はその事に気を取られすぎてたの」

「と、いうと?」

「金ちゃんって蔵にワガママ言うでしょ?」

「ハイ」

「あんだけワガママ言っても蔵はハイハイ可愛いな金ちゃん、ぐらいなかんじで受け流したり、 怒ったりするけど結局蔵も金ちゃんのワガママを聞くことに悪い気はしてないっていう!」

「そー考えたら甘え上手っすね、遠山」

「しかも!!部活の時も生活面でも常に金ちゃんの事を我が子のように心配して・・・」

「手間かかるほど可愛い言いますもんね」

「おやつの時なんかも金ちゃんの好きなものだったら半分分けてあげるでしょ?蔵。 普通なら蔵優しいーって思うだけだけど、金ちゃんはそれに対して全力で喜んでるのよ!! ここ大事なのよ!可愛いの、とにかく!あげ甲斐があるから貢ぎたくなるっていうか!」

「確かに・・・」

「どんな女子よりも、金ちゃんのテクニックの方が危険視するべき!って気づいたの!」

「いやそんなん気づかんでエエからちゃんと部活に励みや」

「ありがとう、心配してくれてるんだ」

「ホンマさっきから俺の話聞かへんわこの人。わざとやん」



財前くんが「ん。」と手を出してきたので、しょうがなく話の続きを聞いてもらうために 大判焼きを半分に割って半分あげた。いっつも話のキリのいいとこで要求してくる。特にあんこ系の おやつの時!!ここから先は有料ってこと!?
私だってあんこ好きだから楽しみにしてたのに!くっそー!
(猫舌だから冷めるの待ってたのが仇となったわ)



「財前くんも金ちゃんみたいに喜べば、私もあげ甲斐あるんだけどなぁ!」

「ワーイ先輩やっさしー。先輩めっちゃ美人やし、カワイイし、惚れてまうわー」

「ほんっと棒読みがお上手!!!」

「ども。」



「まぁいいわ・・・。そんなかんじで金ちゃんを見習うべきだと私は思ったの。
もしかしたら蔵が私に飽きちゃうかもしれないしね!」

「飽きる様子なんて感じませんけどねー。部長」

「今はね。でもどうなるか分かんないから危機感を覚えないとねっ」

「うーん」

「私も金ちゃんみたいに・・・程良くわがまま言ったり・・・いやっ・・・できない・・・!!!! 蔵に負担はかけられないっ!だって蔵の困った顔なんて見たくないんだもん!ねっ財前くん!」

「・・・」

「あんなに細いけど蔵も結構たくさん食べる人なんだよ!? だからおやつも蔵にもらいたくなんてないのよ・・・むしろあげたいの。でしょ!?財前くん」

「・・・」

「蔵に常に心配なんてかけたくない。だって蔵にだって楽しんでもらいたいもん。 心配だけじゃなくってもっと別の事で想われるべきだよね?」

「・・・」



ん!?なんか財前くん反応しなくなった!?



「ねぇちょっと財前くん聞いてっ・・・・・・・・」

「聞いてるよ」
「えっ・・・」



財前くんの声・・・・・・じゃない!?
私が隣に目を向けるとそこにはななななんと!!!



「蔵・・・・・・!!!!」



私の隣に座って、膝に肘をついて頬杖をついてる蔵がいた。蔵はにっこり笑った。
えええーーーー!!!なんで!?いつの間に!?
だってさっきあっちの方で金ちゃんとイチャイチャしてたのにっ・・・・・・




がワガママ言うても心配かけても、おやつ横取りしても、 全部可愛いなぁ、って思うだけやけど。・・・そうやって俺の心配もしてくれるのがらしいな! ちゃーんと俺に気持ちを返してくれるとこがホンマ好きやわ」

「蔵・・・・!」

「俺もが気持ちを返してくれる限り、いや返してくれんでもいいから 隣にいてくれると嬉しい」

「・・・!!!」

「・・・せやから財前クンにだけ素直に話したりせんといて。・・・・・・妬くから。」

「!気づいてたの?」

「好きな子は目で追うやん・・・!俺の彼女やし、財前クンみたいな手出しそうな子と 一緒におられるとめちゃくちゃ焦るっていうか・・・!」

「!」

「あ、ゴメン。相談の場合とかもあるもんな・・・!・・・俺の本音が出てもうたな」




蔵はやってしまったっていう罪悪感でちょっとだけ凹んだ。
さっきから恥ずかしそうに言ったり、余裕ある感じであまーい言葉をくれたり
そうやっていろんな顔を見せるのはやっぱり金ちゃんじゃなくて私だからなのかな。



もうっ・・・・・・・・・なんでこんなにイケメンなの蔵・・・・・!!!!!


照れた顔も可愛いぞ蔵・・・!




「蔵大好き・・・!!!私、これからも大好き・・・!」



私がそう言うと蔵はちょっとだけ照れて、そのあとすごく嬉しそうに笑ってくれた。
私はもう財前くんのあげた大判焼きの事なんてどうでもよくなった。







(大判焼き半分ももらったら呼ぶぐらいはしますわ)(お幸せにー)(せやからもう俺んとこ来んといてやー先輩)




財前くんは迷惑こうむってるシリーズ!タイトルはあげたら返す、みたいな話なのでこんなかんじに。(17.8.21)