春の身体測定。

女の子は体重を計り終わったらキャーキャー騒いでしまって、
自分の記録紙の体重の部分だけ折り込んで、
「やだぁー!」って口ぐち言って、保健室の先生に静かにしなさいって怒られてる。


春の体重測定ってある意味、一大イベント。

そんなイベントには今まで何の関心もなかった私だけど・・・・


男の子の些細な素直すぎる一言で、気にしちゃうものなのです。









「なぁ

「何?謙也」

もしかして太った???」

!!!!!!!



謙也がそう言った瞬間、私は横に座る謙也をパッと見た。



「え!?あ、いや、その、そんな怖い顔せんといてや」

「・・・私、太った!?本当に言ってる!?それ!」

「あーいや、その、うん。今ふとの横顔見てたら、前ほど痩せてへんなーって・・・」



その瞬間私は自分の頬を両手で覆った。
体重測定のときは1〜2kg増えただけだから、てっきり胸が大きくなったのかな?とか、 身長が伸びたからかぁーなんて 納得してたけど・・・。顔に肉がついたってこと!?

確かにブラジャーのサイズは変わってない・・・!



「ほら、去年テニス部で撮った写真」



謙也に携帯を差し出された。
差し出された携帯を受け取ると、そこには今より少し細めの私の顔があった。



「・・・本当だ・・・!私やっぱり太った・・・!!!」

「最近俺の誕生日とか金ちゃんの誕生日祝いとか、白石の誕生日祝いも続いて、 2週間に1回はケーキ食うてたもんな」

「それだ!!!!」




目をそむけたい事実・・・!!!!
でも、ここで気づいたのをラッキーだと思わなくちゃ。

あまりに太ってたら蔵にも嫌われる!!!(かもしれない)

去年の写真の細さで、蔵は私のこと好きになったんだから
最低限去年くらいには痩せなくちゃね。






その日から私は大好きな甘いものをやめた。


部活のあとのおやつも、金ちゃんにあげた。

友達のお誘いも断って、パフェを食べに行く約束を断った。

お弁当もサラダに変えたり、蒸し野菜にしたり・・・
飲み物も水しか飲まないように気をつけたり。



最初の1週間は良かった。

だけどこれが2週間も続くとさすがにストレスになってきた。


あ〜・・・・う〜・・・・・

食べたい・・・・!!!甘いもの・・・!!!食べたい!
今猛烈に生クリームを体が欲している!!!!
でもダメ・・・!目標の体重までもう少しだし、顔つきもまだそんな変わってないんだから・・・

あーでも食べたい・・・!甘いもの・・・!!!!!

生理中になると余計に食べたくなる・・・!!!


だめだめだめ。





そんな生活を密かに続けていたある日のことだった。




、何か最近なんか疲れとるな」

「えっ??」



今度は謙也とは反対隣に座る蔵にそう言われた。
あのとき同様、私は蔵の方を振り返った。



「部活、キツい??」

「えっ??全然!いつもと変わらず楽しいよ!!」

「ならええんやけど・・・。なんかめっちゃストレス溜まっとるって顔してるで」



どき。



「・・・せや!今日の帰り道、の好きなケーキ屋さん行かへん??久しぶりに!」

「それは無理!!!」



私がすかさずそう言ったものだから、蔵は驚いたようだ。



「・・・え?行かへんの??なんで??」

「ほっほら、あそこのケーキおいしいけどちょっと高いし!!」

「でも高くても食べたいいうてたやん?それに安心しぃや、俺のおごりやから」

「で・・・でも早く帰らなくちゃいけないし・・・」



いつもは二つ返事で行きたがる私に、蔵は疑問を持ったみたいだ。

少しだけ何かを考える素振りを見せると蔵はぽつりとこう言った。



「・・・・・、もしかして、ダイエットしとる?」

(どき!)



さすが女兄弟に囲まれただけある・・・!!こういうとこに蔵はめっちゃ鋭い。



「その顔はそうなんやな?・・・最近サラダばっか食べてたもんなぁ」

「ち、違うもん」

が甘ーいいちごミルクを最近飲んでへんから、おかしいなぁ思うててんけど・・・。 それなら合点がいくな」

「・・・!!」



よく見られてる・・・!!!!



「そんな疲れた顔して、ダイエットなんてする意味あるん??」

「あるよ・・・!!男子には分かんないよ!!だって!!」

「だって??」

「蔵に嫌われたく、なかったから・・・」



私がしょんぼりした声でそう言うと、蔵はあははっと笑った。
なっ・・・!笑うとこじゃないのにー!!!



「アホやな、

「・・・ひどい。」

「そんな事せんでも、なんやから俺は変わらず好きやで」

「・・・!」

「ダイエットして甘いもの我慢してやつれとるより、おいしそうにケーキ食べとるの方が めちゃくちゃ可愛いし、めっちゃ好きや♪」

「・・・・・・ほんと?」

「ウソはいわんよ」



・・・・・・・・・・。



「よっしゃ。そうと決まったら行くで!」

「うわぁっ!!」



蔵は私の手を引っ張るように、強引に手を繋いだ。







手を引かれるがまま、私は大好きなケーキ屋さんにやってきた。


此処のケーキは、ケーキ自体もおいしいんだけど見た目がめっちゃカワイイ。
店内もおしゃれで可愛くて、お店の中で食べるケーキはもっとおいしく感じる。

女の人に人気のこのケーキ屋さんの店内には、女の人がたくさんいた。


私と蔵は席に案内された。
そしてケーキを注文して、ケーキが届くのを待つ。

・・・・・・どうしよう私・・・・・・・・。

食べてもいいものか・・・。




しばらくすると、私たちの目の前にケーキが運ばれてきた。

プレートの上にはおしゃれにケーキがのっていて、デコレーションも可愛かった。
ちなみに、注文するとき私があまりに乗り気じゃないのを見かねて、 私の分は蔵が勝手に注文してくれてたみたいだ。

目の前にあるケーキは、それはそれはおいしそうで。

蔵は私が食べたいものを絶妙にチョイスしてくれてるなって思った。




「ほら、。食べよ?」

「う・・・」



フォークにケーキを乗せる。


そしておそるおそる、口の中に運んだ。




「どう??」





「・・・・・・めっちゃおいしい!!!!!」

「良かった!!」





久しぶりに食べたケーキの味は、今まで食べたどんなケーキよりおいしく感じた。
一口食べるまでは渋っていたクセに、一口食べた途端に手が止まらない。
あっという間に私はケーキを間食してしまった。



「やっぱり、そうやって大きい口でおいしそうに食べるの方が、 めっちゃ可愛いしめーっちゃ幸せそうで見ててこっちが嬉しくなるわ」

「・・・蔵、ありがとう」

「俺はが幸せそうやったらそれでええねんから、無理したらあかんで」




ケーキのように甘い蔵の一言は、私を幸せ太りに近づかせる一言だと思った。




いっぱい食べるキミが好き♪(13.5.26)