今日は日曜日!待ちに待った蔵とのデートの日だ。


年が明けたくらいから、毎週末予定が合わなかった。
部活があったり練習試合があったり・・・そんな感じで毎週末の休みはつぶれていて 休日にデートなんて全くしていなかった。(マネージャーとして部活も一緒だから ワガママ言えないんだけどね)

でも今日の日曜日は部活が休み!!
数ヶ月前から蔵とこの日はデートしようねって約束してたんだ。
だから今日すっっっっっっごく楽しみーーー!!!!









デートに向かう途中、私はいろんな事を思い出していた。



私はこの日のデートにかけていたから、この日のために頑張ってきた。

まず髪のことだ。
小春くんに聞いた情報によると蔵の好みのタイプは「シャンプーのにおいがする子」らしい。
だから私は昨日、思いっきり丁寧にシャンプーしてトリートメントもバッチリした。
もちろん今朝も匂いをつけるためだけにした。
ちゃんとサラサラでつやつやの髪になるように、お姉ちゃんのスタイリング剤も勝手に借りた。

いつもはただ結んでいるだけど、今日は毛先も少しだけ巻いて大人っぽく。



そして爪!
普段は部活でどろまみれになってるから、爪なんか気にしない。

だけど今日は蔵にちゃんと女の子として見てほしくて、
いい匂いのするハンドクリームを塗ったり、爪も磨いたり
少しだけツヤツヤするマニキュアを塗ってみたりして、頑張ってみた。


中学生だから化粧とか全然わかんないけど
とりあえずまつげはビューラーであげてみたし、リップもちゃんと塗った。


服だってこの日のために先週お姉ちゃんと選びにいったし
いつもはスニーカーだけどパンプスとか履いてみた。

これでかっこいい蔵の隣を歩いても恥ずかしくないはず!











待ち合わせ場所に行くとすでに蔵が待ってくれていた。



「蔵!早かったね!」

「・・・え?ああ、誰か思うたらやん!」

「えっ?」

「・・・遠くから見てもいつも雰囲気ちゃうから誰かわからんかったわ」



蔵はそう言うとにっこり笑った。
そして足のつま先から頭のてっぺんまで見ると、少し照れたような笑みを見せてくれた。



「どしたん、今日めっちゃ女の子やんか」

「本当!?」

「ホンマホンマ。可愛いやん!」



頑張ってきて良かったーーーーーー!!!

蔵は本当に細かい事にまで気づいてくれるから凄いよ。



「こんな可愛い子隣におったら緊張するわ」

「蔵・・・!(きゅん)」



そういう蔵もめっっっちゃかっこいいよ。
私服姿までおしゃれでかっこよくてずるいよ・・・!!
普段はつけない時計姿も超似合うし、ちゃんとベルトもしてるし。

そういう細かいとこのおしゃれもしてて本当にかっこいい。




「ほな、行こか!」

「うん!!」




私と蔵はきゅっと手をつないだ。
普段はできない分、めちゃくちゃ嬉しい。
蔵の手、大きくてちょっとごつごつしてるけど男の子にしては綺麗。



まずは2人でファッションビルに入って、いろんなものを見た。

そしてその後は一緒にお昼ご飯を食べた。


お昼を食べた後は、街中を2人でぶらぶら。
そしたら何かのお店の近くで風船を配っていて、風船もらっちゃった。

毎日顔を合わせているのに蔵との会話は途切れない。
むしろ普段聞いてない話がいっぱい聞けてすごく楽しかった。



「それにしても、女の子ってホンマすごいよな」

「え?」

「いつものと雰囲気ちゃうもん。やっぱちょっと力入れるだけで変わるんやな」

「そうかな・・・!」

「デート、楽しみにしてくれてたんやな」

「当たり前だよ〜!蔵とデートするのすっごく楽しみにしてたんだもん!」

「あははっ!めっちゃ嬉しいこと言うやん!」



うう・・・!頑張って本当に良かった。
蔵が褒めてくれるから、私もすっごく嬉しいしこれからも頑張ろうって思った。


と、そのときだった。

一瞬強い風が吹き抜けた。



「わ。すごい風だったね」

「せやな。謙也が駆け抜けた後やったりして」

「あはは!そうかも」

「・・・あれ、。風船もつれてんで」

「うそ!!」



さっきもらった風船を見ると、風船の糸が私のカバンにひっかかって変な結び目ができていた。



「あー!本当だ!・・・ちょっと待ってて、蔵」


からまった糸に私が手を伸ばそうとすると、蔵がその手をぎゅっと握って止めた。
え・・・・・・?



(え?)

「せっかく綺麗にした爪が痛むやん。俺に任して」

「くら・・・!!」

「ちょっとじっとしといてな。・・・・よっと」



蔵に言われた通り、私はじっとしてた。
ちょうど蔵が近くにいるからいつもより蔵のいい匂いが私の鼻をかすめる。

・・・爪、見ててくれたんだ。
全く色もつけてないし気づかれないと思ってたけどちゃんと綺麗にしてたの分かったんだ。



「よしとれた!バッチリや♪」

「ありがとう!」



蔵、本当にありがとね。

蔵がそうやって私の頑張ったところに気づいてくれるから、私も頑張れるよ。
小さい事に気づいてくれると、すっごく嬉しい。
こんなやつだけど、いつもしっかり見てくれてるんだね。





この日、私と蔵のデートは無事成功した。

夕方になったし今は帰ってるところだ。
楽しい時間って本当にあっという間に過ぎちゃうね。
・・・まぁ明日からも顔合わせるし、全然いいんだけどね!



「今日めっちゃ楽しかったな!」

「うん!すっごく楽しかった!蔵といつも2人で帰ってるけど、 それとはまた違う感じがして楽しかったよ♪」

「おっ、嬉しい事言うやん」

「蔵、またデートしようね」

「もちろん!また部活がないときは絶対どっか行こうな」



・・・蔵と付き合ってて本当に良かったって思えるような素敵な日曜日だったよ。
蔵を独り占めできてすっごく嬉しい!

もう少しでいつも蔵と別れる道だ。
その場所が近づくにつれ、蔵の手を握る力が緩まる。



「今日は本当にありがとね」

「こちらこそありがとな」



すると蔵は今まで繋いでいた自分の手を鼻にくっつけた。



の手、めっちゃいい匂いするから今日手洗うの勿体ないな」

「・・・!」

「お別れするんが名残惜しいわ」

「・・・蔵、ほんとに今日かっこよかったよ。私も帰りたくないもん」

「ほんま、嬉しいことばっか言うなぁ。は」



蔵はそういうと頭をなでてくれた。
そして笑いながら「俺ん家に連れて帰りたいくらいや」って言った。



「・・・あっせや!忘れるとこやった」

「え?」

「俺から今日のデートのお礼や」

「・・・えええ〜!!!???」



蔵はそういうと握りこぶしを私に差し出した。
私は蔵の手の下に両手を広げる。

すると蔵から渡されたのは。


「・・・これ・・・リップグロス・・・」

「それ、に似合いそうやから」

「・・・いいの!?」

「ありがとな♪」



蔵ーーー!いつの間にこんなの用意してたの・・・!!!

お礼はこっちが言いたいくらいなのに!



「ほな、もう遅くなるし帰るわ」

「あっありがとね蔵!これすごく大事にするから・・・!」

「使うてくれたら俺も嬉しい」

「蔵、・・・言いたい事あるから耳貸して」

「ん?」



蔵が私の顔の高さに合わせて、膝を曲げてくれた。
私はそれを利用して、耳打ちするように蔵の頬に手を添えて
周りから見えないようにほっぺたにキスをした。



「・・・・っっっ!・・・!」

「えへへ、これのお礼ということで」

「・・・可愛すぎやろ・・・」



すると蔵は私のおでこをピーンと弾いた。
でもその後ニヤニヤを隠すように、空を見上げるフリして顔をそらした。



「それ、他の誰にもやったらアカンで」

「あははっ!うん、分かった」

「ほな、また明日な。




(13.4.14)