「!あんたその唇どしたん!?」 「え?」 「ガサガサやん!!!」 友達に指摘されて鏡で自分の唇を見てみると、びっくりした。 (めっちゃガサガサ・・・!) 私の唇はガサガサに荒れていて、ひどいところは皮がめくれていた。 みかんの白い皮みたいな感じだ。 「あんた・・・。彼氏おるのに凄いな」 「ホンマや。こんなに唇ガサガサなのにあんなかっこいい彼氏おるってホンマ持っとるわ」 「うちらなんて毎日頑張っても彼氏出来ひんのに!」 友達にいうとおり、これは確かにひどい・・・!!! 言われてみれば私はこういう女の子のメイクとかに無頓着でリップなんて持ってない。 こういうのは高校生に上がってからでいっかーなんて思ってるから興味なんてなかった。 確かに友達はみんなリップをこまめに塗ってる。 しかもリップグロスまで持ってる子も中にはいる。 私はペットボトルの口のとこにつくのが嫌だし、髪がへばりつくから好きじゃないけど・・・ でもそんな事も言ってられないから、ちゃんとリップクリーム買わなくちゃ! 蔵だって、唇ガサガサよりつやつやの方が好きだよね! 「・・・ってな感じで、なんかオススメのリップクリームないかなぁ、小春くん」 困ったら小春くんに相談するのがベスト。 小春くんは物知りだしいっつも的を得た事言ってくれるんだよね! 「あら☆確かにちゃんの唇、荒れて見てられないわね」 「や、やっぱそうかな・・・!」 「そうやってペロッと唇なめると余計に乾燥するで」 「そ、そっか!」 なるほど、唇なめるのもダメなんだね・・・!! 「いい?ちゃん。男はね、無意識的に初対面の女の子と出会ったらまず唇を見るもんなのよ!」 「そうなの!?」 「それくらい唇は女の人にとって印象づける場所ってわけ」 「そうなんだ・・・!」 「セクシーな人っていうたら真っ赤な口紅つけとる、みたいなイメージあるやん」 「はっ!確かにそうだね!!」 「諸説あるけど、唇は女性のセックスシンボルっていわれてんねんで」 「ほほう・・・!」 「つまり。唇の印象が良ければ顔全体の印象も良くなるっちゅーわけや」 「なるほどー!!」 「せやから、唇荒れてるのなんて論外」 うーん!確かに言われてみればそうだよね・・・! 「せやから今日の帰り道にでもリップクリームくらい買ってみたらええんちゃうの?」 「そうだね・・・。うん。そうする」 「そういえば今週デートするって言うてなかった?」 「はっ!そうだ!」 「どうせなら、そのときにつけるリップグロスとか選んでみたらどうかしら♪」 リップグロス!!!いいかも!! 「ちゃんみたいに可愛い女の子の唇がツヤツヤだと、蔵リンだってドキッとするわよ♪」 小春くんのアドバイスを受けて、私は帰り道にドラッグストアに寄った。 そこにはたくさんの種類のリップスティックが置いてあって、私を迷わせた。 これはいちごの香り・・・!バニラの香り・・・ やっぱ匂いとかあった方がいいのかな? なぜか自分の唇のことなのに、意識するのは蔵の事ばかりで。 蔵がどう思うかを基準に考えている私は、まだ女として捨てたもんじゃない・・・かもしれない。 そんなことどうでもよくて! とりあえず普段つけるやつ買わなくちゃ。 うーん。どれがいいかとかよく分かんないけど、潤いのあるものにしたいな・・・ 私がたくさんのリップに翻弄されていた、そのときだった。 「あれっ!誰かと思うたらやんか!」 「えっ!」 私を呼ぶ声が聞こえてきたのでそちらを振り向くと、なんとそこには。 「く、蔵ー!!!なっなんでここに!!!」 「ぷっ。なんで此処にって。使っとるリップがなくなったから買いに来たらがおったから」 「リップ??」 「おう。リップ」 「・・・・・・・・蔵、男の子なのにリップ使ってるの!?」 「まぁ一応、身だしなみっちゅーか。ガサガサやと見てる人も不快かなぁ思うて」 たっ、確かに言われてみれば蔵っていつも唇綺麗!!! (いや唇だけじゃなくて顔立ちも全てが綺麗なんだけど)(肌も綺麗だし) 「も買いに来たん??」 「あっ、えっと、うん」 「・・・・・あー。ガサガサやん!」 「・・・っ!」 蔵は私の顔を覗き込んで、私の唇を優しく触った。 その仕草に思わずドキッとしてしまった。 「普段何使っとん??」 「あっ、実は持ってなくて・・・初めてなの」 「あっそうなんや。俺の使っとるリップ、結構オススメやけど」 「どれどれ?」 「これ」 「じゃあ私もそれにしようかな。マネしてもいい??」 「もちろん!とお揃いなら俺も嬉しいし、忘れても借りれるな♪」 きゃーーー!蔵そんなに可愛く笑わないでよ!!!(かわいすぎ!) 蔵とお揃いのリップとか!! しかもしかも借りるって・・・!(そ、それって間接的なアレだよね) 「ついでやし、俺レジ行ってくるわ。」 「えっ?いいの?蔵」 「全然ええで!ほなちょっと買ってくるな」 蔵はそういうと、私の分をあわせたリップ2本をレジまで持って行ってくれた。 優しいなぁ・・・。本当に蔵は優しくてかっこよくて・・・泣ける。 ・・・でも・・・あっ、そういえば・・・! グロス・・・!!!!! 私は思い出したようにグロスの置いてあるコーナーに走って行った。 どれがいいかとか分かんないけど、とりあえずパッケージの可愛いリップグロスを 1つだけ取って、蔵とは別のレジへと走って持って行った。 「はい、の分」 「ありがとう!」 せっかくやしおいでって言われたので、私は今蔵の部屋にいる。 私は蔵からリップを受け取った。 ・・・うん、やっぱりお揃いって嬉しいなぁ♪ 「せっかくやし、塗ってあげよか??」 「えっ!!!!」 「せっかく可愛いのに、唇がそんなんやったら台無しやん!」 蔵は嬉しそうに私にリップを塗ってくれた。 に、にやけちゃいそうだけど我慢我慢・・・!!! 真剣に私の唇に塗る事に集中している蔵の顔は職人っぽくて凄くかっこいい。 「うん!ばっちりやん!」 「本当!?」 「ホンマホンマ!」 ほっ・・・。良かった。 「あとは色つきのグロスとか塗ったら艶感が出て綺麗なんやけどな」 「じゃあさっき買ったこれもつけてみよっかな」 「おっ!いつの間に買うたん??」 「小春くんに勧められて、本当は今週のデートでつけようかなって思ってたんだけど」 「いいやん!ちょっとつけてみてや」 蔵にそう言われて、さっき買ったグロスをかるーくつけてみた。 「ど・・・どうかな・・・つけすぎてない??」 グロスをつけた私のことを、蔵は一瞬目を丸くしてみた。 なんか興味深そうに私の事を見た。(変かな!?) 「なんか・・・・!!雰囲気変わるな・・・!」 「そうかな?」 「大人っぽいっていうか・・・可愛いっていうか・・・」 「ん?」って私が首をかしげると、蔵はそのまま私に。 「っ!!」 キスをしてくれた。 「く、くら・・・!!今・・・!!!」 「ごめん。思わず」 蔵は悪戯が成功した子どもみたいに笑った。 蔵は私の頬に手を添えてほほ笑む。 そしてそっと親指で唇をなぞる。 「グロス、とれたけど許してな」 そう言ってさっきとは違う表情で嬉しそうに笑った。 (13.4.10) |