ああ〜・・・。またアイツらふざけとる。







次の大会も近いし、それに合わせて他校との練習試合もセッティングした。

せやのにこいつらと来たら、練習と並行して遊んどる。


みんなのええトコはいつでも明るくておもろくて、それでもマジメなとこやのに
たまにこうやってダレてるときがある。

俺は部長やし、こういうときどうしてもピリついてまうんやけど
それも分からんくらい、皆ふざけとったりする。



「あのなぁ、皆一日ぐらい真剣に取り組まなアカンやろ!」

「もぉ〜!!!!蔵リンったら、そんなにピリピリしてちゃアカンで♪」

「でも今週末は他校との試合が・・・」

「白石ー!!!!大変や金ちゃんが!」

「え?」

「あっちで筋トレしよったら野球部とケンカに!」

「・・・あ〜〜〜。わかった、行くわ・・・」




俺の思い通りには絶対ならん。

俺は基礎練習含めて、きっちり時間通りにこなしたいのに
絶対にみんなはそうさせてくれへん。


雰囲気を盛り上げてくれるのは分かるけど、たまには真剣に取り組んでもらいたいわ。
俺かて真剣に部活に取り組んでるのに、ふざけられたら嫌や。
普段多めに見てんねんから、たまには俺の言う事ぐらい聞いてや。

テスト前に勉強の邪魔されたら、皆やって嫌やろ?




「蔵、おつかれ」

「え?ああ、・・・・・ありがと、




今日は結局最後までみんなふざけとった。
というか予定しとったメニューこなせんかったし、野球部に謝罪しにいったりで 俺もこの日コートにおる時間短かったし。

金ちゃん宥めるのも俺しかできんから、そっちに時間とられてもうた。



「あの、大変だったね!今日」

「ん?ああ、せやな・・・。」

「・・・」

「たぶん皆も蔵を困らせたくてやってるんじゃないし、大丈夫だよ!明日はちゃんとしてくれるよ!」

「せやな」

「あっ、今日は家までじゃなくてあそこの角までで大丈夫だよ!」

「えっ?」

「蔵も疲れてるだろうし、そこまでで大丈夫」



あかん、にも気をつかってもろうとるし・・・!

でもそれに優しい言葉を返すことが出来へんくらい、今日は落ち込んでるかも。
俺とは沈黙のまま、その角へと歩を進めた。



「ほな、また明日な。」

「うん・・・」

「・・・」

「・・・・・」



はぁ、何やってんやろ俺。
と別れてまた帰路についた、そのときやった。



「!」



突然後ろから腕を引かれたと思ったら、正面から思いっきりギュッと抱きしめられた。


何が何だかわからんかったけど、俺の腰にが思いっきり抱きついとった。




「っ、??」

「思いつめないでよ」

「えっ?」

「蔵1人で悩むなんてずるい!!あたしにも分けてよ!」

「・・・!」

「1人でなんでも抱え込んじゃだめ!」

「・・・・・!!」



・・・・・。

するとは顔をこちらに向けた。



「知ってる?蔵」

「?」

「抱きしめられたら、1日の1/3のストレスが減るんだって」

「!」

「私は蔵が少しでも楽になるんだったら、何でも手伝うから。ちゃんと言ってね」

・・・」

「言われなくても気づいてやるけど!」



そういうとはにっこり笑った。

ホンマにこの子は・・・・・・・・・・


俺はの頭をポンポンとなでて、こっちからもぎゅっと抱きしめた。
普段はこんなこと住宅地の中とはいえ、道の真ん中では絶対せぇへんけど
それでもの気持ちが嬉しかったから抱きしめた。



「わっ・・・蔵、苦しいよ!あははっ」

「ありがとな、

「まいど!」

「ぷっ、アホやなぁー!」

「あははは!」



1/3どころか。


今日一日の疲れも嫌な事も吹っ飛んでまうわ。

ありがとな、。ホンマにありがと。







次の日、昨日が優しくしてくれたせいか少し気分は楽やった。
けどやっぱりアイツらは相変わらずはしゃいどって、少しうんざりした気分になる。

はぁ・・・。どうやったらまじめにやってくれるんかな。
また金ちゃんが問題おこさんかったらエエねんけど・・・


すると、そのときやった。




「こらー!!皆ちゃんと蔵の話聞きなさい!!」




!!!!!!!!



俺がコートを見てため息ついたのを心配したのか、が大声でそう叫んだ。




「大会も練習試合も近いんだから、ちゃんとしようよ!!」

「・・・!」

「蔵が毎日みんなのためにメニュー作ってるのに、皆がそんなんだから 全然出来てないんだよ!?」



・・・




するとみんなは顔を見合わせて、申し訳なさそうな顔をした。




、すまん。ちょっと調子に乗りすぎたわ」

「あたしに謝らなくていいから、蔵のためにちゃんとしてよね!」

「お、おう・・・」

「そうね、私たち蔵リンの話全然聞いてなかったわね」

「確かに大会も近いし、ここらでちゃんとせな勝てへんもんな」


「でしょ!?みんな分かってくれてありがとう!」




の一言で、みんなは心を入れ替えたみたいや。
その後もしっかり練習メニューをこなしてくれた。

俺が少し離れた場所にいるの方を見ると、はにこっと笑ってこっちにピースサインをしてくれた。





「なんか、先輩って部長の彼女っていうより奥さんって感じですね」

「!」



いつの間にか隣にいた財前くんがそうつぶやいた。



「いい嫁っすね」

「・・・ホンマやな」








(13.4.8)