「どれがいい?」って聞かれたら「どれでもいいよ」って言う。


「何がしたい?」って聞かれたら「何でもいいよ!」って言う。


私にはそれしか答えることができない。
だって私が選択して誰かが嫌な思いになっちゃ嫌だから。

例えばケーキを選ぶとき。
私がイチゴのケーキを選びたくても、誰かが狙ってちゃいけないから 最後に残ったのを選ぶ。残ったものでも何でもいいんだけれどね。

誰かが嫌な思いをするくらいなら、私が嫌なこと我慢すればいいと思うんだ。

そうすれば嫌な思いをする人は私1人だけでいいし、誰も傷つかない。




でもね、今こうしてると本当にこれで良かったのかなって思うよ。

それに気付かせてくれたのは・・・・・


偶然友達になった白石のおかげ。










「なぁなぁ!これ皆でつけようと思うて買うてきたから選んで〜!!」



連休明けの今日。

いつもいるグループの友達の1人が旅行に行ったらしく、色違いでお揃いの ボールペンを人数分買ってきた。
あらかじめセットで売られていたものらしく、 「ちょうどうちらの人数やから丁度ええなって思って!」と嬉しそうに友達は言った。

みんなが色をパッととっていく。

やっぱり赤やオレンジ・ピンクの色が人気みたいであっという間に取り合い。


私は残った1つの緑のボールペンをとった。



「皆でお揃いええな!」「これ今日から使うなー!」「ありがとうー!」と 皆が口ぐちに言う。私も「ありがとう!」と友達に告げた。
これで皆とのお揃いが増えた。
春休み明けにはキーホルダーもらったっけ。その時は青だったっけ・・・




ー、あんたいっつも残ったやつやけど、大丈夫?」

「え?あっ、大丈夫大丈夫!どれも可愛かったし私決めれないし!」

「ほうなん?ならええけど・・・」



私はこういうとき、めちゃくちゃ気を使ってしまう。
私なんかがわがままを言ってしまうことに物凄く躊躇してしまう。
本当はこうしたいなって思っても、口に出すことができない。

自分でもこういうの凄く良くないって分かってるんだけどね・・・。

でも私ってわがまま言うキャラじゃないし、そういう振舞いしても許されないっていうか。
我慢できない子がいるんなら、我慢できる子もいなくちゃだめっていうか・・・
とにかく、私は我慢が「できる」子だからそれを活かさなくちゃって思う。



あんまり普段会話も振られないし、ただ笑ってるだけ。

でもそれでいいの。

それで波風起きないならそれが1番いいの。



私も騒いで皆に嫌われるようなことはしたくないし、これが無難だし。

そういう星の下に生まれたんだからしょうがないじゃない。







そんな思いにふけっていた今日の授業。
「それ」は突然の出来事だった。




午後の化学の授業で突然「2人1組」となってしばらく実験をすると先生が言った。

なんでも此処からの分野は、皆が苦手分野になりやすい分野だから
実験を多めにとりいれつつ頭に入りやすくするために2人1組にするとか。

早速グループに分かれるための時間が10分設けられた。


いつも一緒にいる子たちが集まったので私もそこに集まった。
「どうするー?」と皆が口ぐちに言う。
それも無理はなかった。なぜなら・・・



(私たちのグループ、奇数なんだよね・・・!)



皆がどうしようという視線をそれぞれに配る。
・・・さっき先生が「男子も女子も奇数なら、残った1人ずつは男女ペアやな」って言ってたから 呟いてたしなぁ・・・。他の女の子たちはそうこうしてるうちにペアを組み始めていた。

うう、どうしよう・・・!



「そこの女子のグループが決まったら全部終わるでー」



先生がそういった。
ということは私たちの中の誰かが男子と組むってこと!?

この実験はずっと続くって言ってた。
それだけに男子と組むのはあんまり気が進まない・・・
どうせ決まった後にクラスのみんなに茶化されるに決まっているし凄く嫌だ。
(こういう性格だから目立つの嫌だし、それは凄く避けたい・・・)



「あはは・・・どうする?」

「んー・・・どうしよか・・・」

「・・・。」



皆が黙る。皆私は嫌だって顔してる。

でもこのままじゃ決まらないし・・・・・・・




・・・・・・・・・



・・・・・・もういいよ!!!わかった!





「皆2人で組みなよ。私1人でやるから」

「えっ!でも・・・」



皆があたふたする。けれど皆少し安心した顔をしている気がする。



「大丈夫大丈夫!なんとかなるって。死ぬわけじゃないし」



私は笑いながらそういった。皆はごめんな、と口々に言う。




「お、なんやが1人なんか」

「はい」

「まぁそんな嫌な顔しなや!せめて1番後ろの席にしたるから」



うう・・・また私ってば・・・言えなかった・・・。
あんまり男子と話すの好きじゃないのになぁ〜・・・。
いつもの選択肢は本当に「どれでもいい」けど、私男子は苦手なんだよぅ・・・!

はぁ〜。本当に損な役回りだ。



「ほな皆席ついて〜!早速今日から実験始めるでー!」



ガタガタと席移動が始まる。
1番後ろに行けって先生に言われたから、泣く泣く1番後ろの席に向かった。
(友達はみんなきゃっきゃっと楽しそうに盛り上がってる・・・!)(さっきまでは やっぱり私が引くのを待ってたってことね・・・うう・・・)




クラスの皆が1番後ろの席をちらちら見てくる。
男女ペアだと茶化すためだ。これでみんな盛り上がろうとしてるのが分かる。

・・・・・・と、その時だった。


ガタ、と椅子を引く音がして机に教科書類を置く音がした。



(あ・・・ペアの人がきた・・・)



男子と喋るのは得意じゃない私はずっと下を向いていた。


するとクラスメイトの忍足くんが大声で叫んだ。




「白石!!!お前結局1人になったんかい!」




え・・・・・・?




クラスがざわざわする。そして女の子たちがもっとざわつく声がする。

私も恐る恐る顔をあげて隣を見てみると、そこには「あの」白石くんが座っていた。


その格好やたるや堂々としたもので、大騒ぎする忍足くんに対して「やかましな」と 普通に突っ込み返していた。




「さっき俺誘うたん断ったんは女子と組むためやったんかい!」

「それは遠藤がお前と組みたがっとったからや」




女子は少なからず羨ましがっているようだ。
いやいやいや!これは私もちょっと緊張と驚きを隠せないぞ・・・!!!

なんで!?なんでよりにもよって、あの白石くんが!?





「あー。なんかごめんな。でもよろしくな」

「えっ、あっ、いや、こちらこそ、よろしくお願いします・・・!





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よくある女の子グループの1人のお話です。こんなポジションの子、絶対います。 誰にも気づかれないけどグループでは一番優しい。なのに普段は全然報われない。 だけど、報われないことに慣れ過ぎてて 不満すら感じないような子。そんな女の子にたまにはスポットライトが 当たればいいなぁという願望から書こうと思いました。席替えネタ大好きです。(12.11.5)