、2組の白石がアンタのこと気に入ってるっぽいで」

「えー?あはは!そんなわけないよー。白石くんアイドルじゃん!」

(ダメや・・・!)











「白石、気に入ってるっていう言い方しても、あの子気づかんかったわ」

「・・・。ほんまか。いや、ありがとな」




俺の気になる子、というか好きな相手はめちゃめちゃ手強い。
手強いその子の名前は「」。

今、の一番仲良しの友達に「の中でどれくらい俺ってありなんかな」って いうのを探りだしてもらうために、さりげなく俺の名前を出してもらったとこや。

の友達とは去年同じクラスで結構話しやすい部類の子やし、よしみで 聞いてもらったわけやけど、「白石が!?」と驚かれた。 驚かれたのはきっと俺がのことが好き、っていうところではなくて 俺に気になる子がおるっちゅーとこやと思う。



俺は部活が一番大事やから、恋愛に興味はなかった。
いや、厳密にいうと興味はある。
(女兄弟がおるせいか、その影響で恋愛ドラマをよく見るせいかはよぅ分からんけど)
ただ、それにバシッと当てはまる女の子がおらんだけの話。
女の子はどの子も友達にしか見れへんっちゅーか、「何か違う」と思う子ばかりで 自分からは手を出してない領域やったけど、

は見事俺が目で追ってしまうくらいのバシッと当てはまる子だった。



はどんな子かというと、素朴な子やった。

見た目もまぁ、ふつう。でも中の上。(俺のひいきのメガネをはめると凄く可愛いと思う)

授業中はまじめに受けとるのに、成績はあんまり良くないらしくて(の友人曰く)
成績はよくないけど、でも思いやりは人一倍あって、素直で。
一言でいうと「素朴」。でもすごく目につく素朴。


気になるきっかけになったのも素朴な出来事からやった。



その日、俺はいつものように朝練に出ていた。
朝練が終わって他の部員はとっくに教室に上がっとるっていうのに
俺は部活日誌がどこにも見当たらんのに焦って、寄れいのチャイムが鳴る時間ぎりぎりまで 部室を探しとった。

でもどこにも見当たらんで、諦めて走って教室まで上がろうとしとったとき。
部室から校舎までショートカットできる道を抜けよったら、自転車置き場に差しかかった。
そこにはいた。


は何やら焦っていた。
なんで焦っているのかは視線をずらして一瞬でわかった。
自転車がドミノ倒しになっとった。
(おそらく、遅刻スレスレで焦ってチャリを止めようとしたが倒したんやろな)

「アホやな・・・」「どうせ放置してこの子も教室に上がるんやろな」って横目で見ながら、 俺も無視して走り去ろうとした。せやけど・・・・・・・・・



は、遅刻なんか気にせず綺麗にチャリを1つ1つ直し始めた。
元々ここのチャリ置き場は皆乱雑に置いとって、(校舎に一番近いチャリ置き場で、 今のみたいに遅刻スレスレのやつが置いていくからガチャガチャやねん) ドミノにあってもしょうがない、此処に置くとしたらそれを 覚悟して置け、っちゅーのが暗黙の了解やってんけど・・・
(ここのチャリ置き場だけはようドミノにあっとるのよく見るし)

はそれを知らんのか、元々の置き方より綺麗に置き始めた。

なんかよぅわからんけど、無性にその必死な姿に足を止めてしもうた。


ほんで「手伝うわ」っちゅーて気づいたら手伝っとった。
そのときの「ありがとう!」っていうの嬉しそうな顔がやけに頭に残った。





そんなこんなで俺はが好きなんやけど、
の方は全然俺の事を相手にしとらんみたいや。

積極的ににアプローチしてない俺も俺なんやけどな・・・!






でもある日、俺にチャンスが巡ってきた。

先日あったクラスマッチの打ち上げを2組と1組(のクラス)の合同でするらしい。


クラスマッチといえば、が他の女の子たちと見学にきとったから
俺は張り切ってサッカーでハットトリック決めたのに、は全然見てへんかったな・・・!
(ちなみにハットトリックっちゅーのは、 試合中に一人の選手がゴールなど勝利に繋がるプレイを3回以上達成することな)


せっかくの友達が、サッカーやっとる俺のとこまで連れてきてくれたのに、 は全然興味なさそうや。俺が気になっとるって友達伝いにいっても 冗談やとしか見てくれんし。

こうなったらこの打ち上げで距離を縮めるしかあらへんよな。





打ち上げは最初ファミレスみたいなとこで皆でわいわい。
二次会はカラオケやった。
はどうやら二次会にも行くらしい。良かったわ。

二次会のカラオケは半分くらいが返ってしもうてちょうど1クラス分の人数や。
謙也が「1番や1番!」といってマイク争いに参加しとる。


も歌うんやろか??




「白石ー!!!盛り上がっとるんか!お前!」



カラオケ開始から1時間くらいたって謙也が話しかけてきた。
言うまでもないけどコイツにのことは言うてへん。(余計なことしそうやから)



「そこそこ楽しんどるで」

「でもお前また歌ってないやんけ!いっつも打ち上げには参加するのにカラオケに来ると 歌わんやん」



・・・そういやいっつもはカラオケ来ても歌わんな。



「テニス部で来た時しか歌わんよな、お前!めちゃ上手いのに歌わんから腹立つわ〜」



普段は女子らが「聞きたい〜っ」て言うてマイク回してくるけど断る俺。
・・・でもまてや?もしかして今此処でかっこええとこ見せたら・・・・・・・

も分かってくれるかも??



「・・・謙也」

「ん!?」

「俺歌うわ。」

「え゛ーーー!!!!ホンマか!」




俺が歌う、とのことでみんなザワついとった。

!白石くんが歌うらしいで!!激レアやん!!」「あんたのためやないん!?」って の友達がに言うてくれとるっぽいけど、は そんなことよりもポップコーンやポテチやポッキーが乗っているお皿に夢中みたいで、 「へー」という生返事で返していた。(手強いわ・・・!)



俺は自分の中での十八番を入れた。
自分でいうのもアレやけど上手く歌えたと思う。
現に打ち上げにきとるやつは大盛り上がりしてくれた。
(白石お前めちゃ上手いやん!!とか、女子が騒いでたりとか)

の方をちらっと見たけど・・・


は、普通に拍手をして隣の友達に「上手いねー!!」って笑ってるだけやった。






あっけなく打ち上げが終了した。
あーやっぱりは手強いわ、なんて思いながら俺はちょっと凹んだ。



でもその次の日。

昼休憩に教室で謙也とご飯を食べよったときのことやった。



「ん?なんか騒がしくないか?廊下の方」



謙也がご飯を食べながら廊下の方をきょろきょろ見ていた。
俺は「ほうか?」と言いながらご飯を食べる。
・・・でも確かに女子の声がよう聞こえるかも・・・



「ちょっと!!アンタ話しかけや!」
「せや!ほーらー!」
「ちょっとみんな押さないでよ!!」


ん?
そんな声が聞こえたと思うたら、俺の目の前にが現れた。
どうやら女友達に押されたらしい。



「えっ・・ちょっとみんな・・・!もう!」

「???どしたん?」

「えっ、えと、いや、その・・・白石くんが私のこと気にしてくれてるって 言うのを前から聞いてて、その、この前の打ち上げの歌を・・・」

「歌を?」

「・・・・・・・・皆が私のために歌ったんや絶対っていうから、違うよって否定したら、 皆に"それなら本人に確認してみぃ!!"って押されて・・・!!!」

「・・・!」




廊下の方をちらっと見るとの友達が楽しそうにこっちを見ていた。
・・・どうせ俺がこっそりのことを気にしとるのが面白くて、 本人を俺の前に連れてきたんやな・・・。(人の色恋沙汰を完全に面白がっとる・・・)

はなんか困っとった。
無理もないよな・・・。俺とは1回も同じクラスになったことないし
ましてや会話なんてあのチャリのときだけ。

(これくらいの接点やから成功率低い思うて積極的になれへんかったわけやし)



それでも俺に気を遣わせんように、必死に喋るは優しいなと思った。
俺が変な事いうたばかりにちょっと恥ずかしい思いさせてゴメンな。



「ちっ違うよね!?変な噂立てられるのも白石くんにもファンの人にも悪いから、 ハッキリしとかない!?なーんて・・・」

「・・・・・ホンマやで」

「え?」



「友達が言うとること、全部ホンマや。」

「え・・・・・・」



は凄く驚いた顔をしていた。
(ついでに目の前に座る謙也も口開けてポカーンとしとる)




「チャリんときから、気になっとるよ。」

「チャリ・・・え・・・それすっごく前・・・」

「そんなすっごく前のことでもしっかり覚えとる。せやからホンマやで。」

「・・・・・・・!」



はどうしようっていう顔をしていた。
の動揺してドキドキしとるとこ、初めて見た。
たぶん冗談やと言ってほしかったんやろうけど、これだけは嘘つけへんかったから。ごめんな。 いつものやないみたいや。耳が赤いし、なんか顔を嬉しそうやけど困っとるみたいな・・・?





「は、はいっ!!!」




俺は箸を置いて、ガタッと席を立っての前に立った。


俺はそんなの耳の位置まで口元をさげて、こっそり耳打ちをした。





(好きや)






そう言うとさすがのも目を丸くして、耳も真っ赤にした。
そんなが可愛くて新鮮で、「これで信じてくれる?」と意地悪く聞いてみた。



は小さくコクン、と頷いた。





(謙也は首を横に傾けたけどな)


(12.5.7)