、」

「ん???」



いつものように蔵の家(部屋)でまったりしながら、 その日に出た宿題を一緒にしていた。そしたら蔵が急にシャーペンを動かす手を止めて 私の名前を呼んだ。思わず私もシャーペンを止めてしまう。



「こっちおいで。」

「へっ!?」

「いーからおいで。」



蔵は手招きしながら自分の座っていた場所の隣(もとい、自分の膝)を指さした。
え、今数学の基本問題が分かってリズムに乗れてきたのにな・・・!
でもまぁ・・・いっか。そう思って私は蔵の言う通り隣に移動した。
・・・ちゃっかり自分の飲み物も持って。


よし座ろうとしゃがもうとしたら、蔵が「もっとこっち」と言って私を引き寄せる。
というわけで私は蔵の足と足の間に座る事になった。

そしたら蔵が私のことをうしろからぎゅっと抱きしめた。
首の付け根におでこをくっつけて「あー・・・」とため息をついた。



「どしたの蔵・・・?」

「んー。なんでもない。ただこうしたかっただけ」



ぎゅっと抱きしめる力を強める蔵。

なんとなくだけど、いろいろストレス溜まる事でもあったのかなぁ。
蔵が露骨に甘えるのは珍しい気がする。(それはそれで凄く嬉しいけど!)
普段ああやって完璧な姿を見せているから、それだけに息をつく場所も蔵には 必要だと思う。その落ちつける場所として私が選ばれたのなら、それはすごく嬉しい事だ。



、こっち向いて」



蔵は少しだけ体を離して、私の肩を少し押して上半身だけ自分の方を向かせた。
すると今度は蔵が正面から抱きついてきた。
急に抱き寄せられたから私も少しびっくりして、蔵の方に倒れ込んでしまった。



「蔵、ごめん!重いでしょ」

「全然重くないって」



そうやって笑いながら言って、蔵はまた私の事を抱きしめてくれる。
頭をぽんぽんと撫でてくれて「もう・・・めっちゃ可愛い」って言ってくれた。



「えー?何何?もう1回言って!」

「・・・わざとやろ」

「えへへ」

「でもまぁええわ。何遍でも言うたる。・・・、かわいい。」

「・・・!」



蔵は倍返しにしないと気が済まないのか、抱きしめた時に 私の耳元でそう言ってきた。蔵の甘い声と少しだけ漏れる吐息が凄く色っぽくて、 私の耳は自分で気づくよりも速くポッと赤くなってしまった。


(もー!!!蔵なんでそういうこというの!!)

蔵の胸元に顔をうずめて顔の赤さを隠していたら、蔵にあごを掬い取られた。



「あははっ!、顔真っ赤やん!」

「誰のせいだと思ってるの!(ぺちっ)」

「俺かな!」



私からもぎゅーっと抱きつく。
そしたら蔵が「おっ、嬉しい事するやん」と喜んでくれた。

そうやって蔵が喜んでくれるなら、私だってなんでもするよ。
何時間でも抱きついていたいって思うよ。



「あーもう、なんでこんなに可愛いんやろ・・・。」

「それを言うなら、蔵ってなんでこんなにかっこいいのかなって思うけどな」

「それは顔がええからやろ?」

「うわー!自分で言った!(否定できないけど!)」

「あははっ!冗談や冗談!・・・それにしても、なんでこんなに好きなんやろな」

「・・・ほんと?蔵、私のこと好き?」

「当たり前や。めーっちゃ好き。」



そう言ってまた抱きしめてくれる蔵。
蔵の体温が私の肌に伝わってくる。すごく落ち着く。
蔵の心地良い体温も、この匂いも全てが私にとって愛しい。

こんなこと、もう他の誰にもしないで。

蔵は私だけにこうしてくれればいいの。

そう思うのはわがままなのかなぁ・・・・・・。



は俺のこと好き?」

「・・・大好きだよ」

「・・・・・・・・っ。」

「ん?どしたの蔵」

「・・・ごめん、今めっちゃ嬉しくてちょっと・・・照れた」

(かわいいぞ蔵・・・)



「幸せすぎてアカンな」

「あははっ!そうだね。でも私は蔵が抱きしめてくれるの、嬉しいよ☆」

「・・・・・ホンマには・・・・・」

「ん?私が??」





蔵はそう言うと顔を傾けて私の唇に唇を重ねた。
その瞬間私も目を瞑って、彼のキスに応えた。

自然と蔵の首の後ろに手を回して、蔵も私の後頭部を抱えるようにして。


私も蔵もまだ子どもだし、同じ年数しか生きていないのに
いつのまにこんなに大人なことが出来るようになっちゃったんだろうね。

それは「愛し合っているから」だって思うのはちょっとダサいかな。




蔵は私にだけこういう姿を見せてくれる。
だから私がいなくちゃだめなんだって思ってしまう。

皆の前ではファンデーションを塗ったみたいに完璧でいなくちゃいけないから、ね。



「・・・、好きや」




私にとって蔵は自分の肌そのもののような、大切な一部分なんだよ。




( 「(私はあなたの)ファンでしょ!」っていう言葉とちゃっかり掛けています。) (12.2.12)