「白石くんってあんまり男子とつるんだりしないよね」

「・・・・・・まぁ、確かに」



隣の席にいる白石くんは、誰もが認めるイケメンだ。
この学校で知らない人はいないと思うし、女子が一度はそのかっこよさに 視線を奪われることがあると思う。同じクラスになれたら何故か嬉しい一人。

白石くんのすごいところは、こんなにかっこいいのに凄く謙虚なところ。
そして頭が良くて気遣いができて、本当に落ち度がない性格だ。



それなのにあんまり人とつるんでるところを見ない。
こんなにかっこよかったら男子が嫉妬しちゃうのかな・・・

逆に完璧とは言いづらい私の彼氏である謙也は、男子とつるみまくってる。



「謙也はほら、いろんな人と休憩時間も一緒にいることが多いでしょ?」

「ははっ、確かに。今もそうやしな」



教室を見まわすと私たち以外にほとんど人がいない。

そういえば昼下がりの3-2の教室はほとんど人がいない。
女の子が1人読書しているのと、何人かの男の子が固まって談笑してるくらい。
あと違うクラスの女の子と3-2の女の子が数名廊下できゃーきゃー騒いでる。


・・・さっきグランドでドッジボールするでーって皆出ていっちゃったんだっけ。




「あんまり好きじゃないの??人といるのが」

「んー・・・。っていうよりも、一人でおる方が好きっちゅーか!」

「あっ、そうなんだ。」

「テニス部の奴等とも友達と絡むのも好きやけど、なんとなーく静かなんが好きやねん」

「あははっ!あーんな賑やかな部活の中心にいる人がよく言うよ」

「いや逆や。あんな賑やかなとこにいっつもおるから、テニスしてへんときは静かにしときたいねん」

「そっか。そう考えたら謙也って四六時中はしゃいでるよね」

「アイツはああいうヤツやからな」




「じゃあ私も今席外した方が良い??」

「なんでやー。は別や。そこにおって」

「ぷっ、何それ。」

は俺が唯一色々話せるヤツやから別。」

「白石くんのこと好きな女の子から嫉妬されちゃうね、そんなこと言われちゃうと」

「ははっ。どうやろ?」

「じゃあ白石くんはー・・・・・・静かな子が好きなの?」

「んー・・・。まぁ、一緒におって落ちつける子が好きかな」

「そういえば白石くんってモテモテなのに、彼女いないよね!」

「せやな」

「今はいらないってかんじ??」

「いや。そりゃ彼女はいつだって欲しいで。男やもん」

「じゃあなんで作らないの??白石くんならその気になれば今日中にだってできるでしょ??」

「あははっ!そうかなぁ。でも俺、彼女になってもらう人にはそれなりの子やないと嫌やから」

「何か特定な子がいるっぽい言い方だね」

「おっ、勘が良いやん!」

「本当!?じゃあいるんだね!だれだれ!?誰にも言わないから教えてよ」




私は白石くんの方に向かって耳を傾けた。
白石くんが「でも、謙也に良いそうやしな」といじわるっぽく笑った。

すると丁度その時、携帯が鳴った。
・・・謙也からだ!




「ごめんね、白石くん」

「ええよ」

「・・・もしもし謙也??どしたの??」

!?今な、ドッジボール勝ったで!』

「プッ!あははっ、それはおめでとう」

『今から8組と対決することになったんや!小春とユウジのクラス!も来ぉへん!?』

「えっ、それちょっと楽しそうだね♪いってみようかな」

『ほな待ってるで』

「うん」



謙也との電話を終えると白石くんが「謙也、なんて?」と言った。



「今から8組と対決するんだって。面白そうだから見に来ない?って」

「・・・・・」

「だから私、ちょっと行ってくるね。謙也のこと見てあげないとね」



私はガタッと席を立った。

白石くんは一人でいるのも好きだろうし、保健室に行きたいだろうし。
「また後でね」なんて言いながら私は椅子を納めようとした。

すると、その時だった。





急に座ったままの白石くんに手首を引かれて、私は白石くんにぶつかってしまった。
当たってしまってすぐに「ごめん!」と言おうとしたけど、すぐに白石くんが 私に腰に手を回してぎゅ、と抱きしめた。

教室の隅っこだし、白石くんの背中で誰からも見えない体勢だ。

えっ・・・????




「し、白石くん・・・・??」

「さっきの質問やけど、俺に好きな子がおるかって話やったよな」

「ん・・・、うん・・・」

「俺がの事好きって言ったらどうする?」

「えっ?」

「謙也と付き合っとっても、のことが好きっていうたらどうする?」




白石くんと至近距離で見つめ合う。
だけど私の顔は多分困惑で怯えた顔をしていて。

白石くんの顔は相変わらず綺麗だったけれど、その表情には温度がなくて
ただただ私のことを冷静に見ていた。




「俺は静かなんが好きやけど、」


「・・・っ」


を奪えるんやったら穏やかやなくてもいい」





耳元で吐息まじりに呟かれて、全身が熱くなる。




「その気になれば今日中にだって、やろ?」

「冗談はやめてよ白石くん・・・!私、謙也のとこに・・・っ」




言いかけたその後に重ねられた唇で何も言えなくなる。









(11.11.11)