「どしたん、そんなにため息ついて」




はぁ、とがっくり肩を落として席につけば 隣の席の白石くんが私の顔を覗き込む。

これはもうお決まりの光景だ。




「わかった。またフラれたんや。当たり?」

「ムカつくけど正解……………」

「ホンマ、"また"やな」



白石くんは私の気なんて知らないであははっと楽しそうに笑った。

白石くんが笑うのも無理はない。
私が白石くんと隣同士になって半年くらい経つ。その間に私は3人と付き合い、たった今 3人目に別れを告げられたのだから。………白石くんももう「毎度おなじみ」の目で私を見てる。


ちなみに白石くんとは半年の間に2回あった席替えの中で
2回とも隣同士になったっていうエピソードを持っている。


隣同士だからそれなりに仲が良くなった私のことを白石くんはよく知っている。
3人に恋をして、その3人がとんでもない人で、またフラれてしまった。
白石くんはこの3回の恋の最初から最後まで知っているから、何も言わなくても 笑ってくれた。ちょっとその笑ってくれるところで安心できる。




「3回目も失敗なんて………さすがに凹むよ」

「今回はなんやったん?」

「………他に好きな人ができたんだって」

「うわ、また??2回目の人もそうやなかったっけ」

「あれはちょっと違う!!!………前気になってた人に告白されたって言われたの」

「………同じやん。」

「彼氏ができたのに、1回もカップルっぽいことしたことないよ…!何が楽しくて恋してるのか わかんなくなってきちゃうね」

「ははっ、ええんちゃう?次付き合うヤツが喜ぶかもしれへんやん」

「どういう事??」

「だって次付き合うヤツはのお初を全部もらえるわけやん!」

「……なーんか白石くんが言うと気持ち悪いんだよね」

「そう?」

「そうやって爽やかに笑うから半減してるけど、普通の人がいったら気持ち悪いと思うよ」

「ははは!」




私の恋はいつだって逃げられてばかり。

牽制したかと思えば盗塁されてばかりの、どうしようもないプレーヤー。
これで3人に振られたとなると、これはまさに3アウトってかんじだ。




「でも、そうやって変な男ばっかり近寄ってくるっちゅーことは………」

「えっ」

「自分もそれなりの女やって思わな」

「!!!」



なっ何それーーーー!!!!
ちょっと今ショックだったんですけど!!!!



がそのままやったら、また同じ事が起こると思うで」

「どういうこと!?」

「ええか?人っちゅーのはな、鏡やねん。せやから自分の評価は近寄ってくる友達の人柄や 人間性が反映されとんや」

「………………!!!」

「せやからロクでもない男が寄ってくるっちゅーことは、自分もロクでもない部分が あるって事や」

「な………なるほど………!でっ、でも私の場合はしょうがなくない??」

「でもそのままやったら、また次も同じようなんくるで。何かしら良い変化がないと 良い人は寄っては来んと思うな」

「そっか…!」

「……ははっ!そんな難しそうな顔せんでも、なら出来るって」

「そりゃ白石くんは上手くいくかもしれないけどさ〜…。難しいよ」




人は自分を映す鏡、か………。
いいことをすればいい事が返ってくる。ギブアンドテイクの世界ね。

私は誰かを好きになって全てを上げようとするのに、なんで何も返ってこないんだろう。





「………なんか白石くんと付き合う子って、絶対楽そうだよね」

「ん?なんで??」

「だって白石くんが色々教えてくれるし、分かってくれるからさー…。 こんなかんじでいろいろ私の悩みもサラッと相談に乗ってくれたり気づいてくれたりするから、 絶対楽ちんだよー」



すると白石くんはちょっとだけ目を丸くして、頬杖をついてフッと笑った。



「楽、………な。まぁ、そうかもしれへん」

「私も白石くんみたいな人が寄ってくるように、今日から女子力磨かなくちゃなぁ…」

「ホンマって騙されやすいっちゅーか、変な男に引っ掛かってしまうんやな」

「………ねー。なんでだろうね」

「せやから、最初から俺にしとけばえかったのに」

「…ねー。」






………………ん???????






ん!!!!????今なんて言った!?」

「え??が最初から俺にしとけば良かったのになーって」

「ええええええ!?いやっ、無理でしょ!白石くんレベルと付き合うっていう発想すらなかったよ!」


「でも俺なら、に嫌な思いさせへんよ!」





白石くんは爽やかな笑顔でサラッと言いのけた。
えっ!?これは冗談!?………だよね?





「その顔疑っとるやろ。………気づいてへんかもしれへんけど、俺 の事ずっと好きやってん」

「ええ!?うそだ!」

「でもが俺の事興味なさそうに3人ぐらいと付き合うから、 チャンスないなーって思って特に何もせんかっただけ」

「えー!!!」

「3人痛い目にあって気づいたやろ?そろそろ落ち着きたいって」




白石くんの言葉に私はうんうんとうなずいてしまった。




「なら決まり。俺、絶対のこと大事にするし」

「えっええ!?ちょっ、いいの!?これ、付き合うことになったの!?」

「当たり前や」

「じゃっ、じゃあ今から白石くんが…………?」

「そ。の彼氏、な」

「……………!!!」

は嫌??」

「ううん!なんか、嬉しい、かも………!」

「なら良かった!大丈夫。俺の事絶対好きにさせるから」





3人に恋をして3人に振られて、悲しみに打ちひしがれて自分の席に戻る。
席に戻れば白石くんが温かく励ましてくれる。

まるでそれは、ホームに返ってくる野球選手のようだ。


私の場合は3アウトチェンジでドンマイ、だけど……………



白石くんのおかげでホームランって気分になりそうだよ。




Tasty homerun ! Stolen base Complete !


(11.11.10)