私と蔵と謙也はこの日3人で一緒に帰宅をしていた。








「はぁ・・・。なんでテストで賭けごとなんてしちゃったんだろう・・・」



私と蔵と謙也は同じクラス。
クラスが同じという事は部活だけではなく、それだけ学校生活の方でも深くかかわる。

というわけでテストで「賭け事」なんかも気軽に出来ちゃったりする。



「すまんなぁ、!」

「謙也どや顔うざい!」

「でも俺も意外やわー・・・。まさかが謙也に負けるなんて」

「でしょー!?蔵!」

「どういう意味やねんそこのバカップル。」

「だって私だってそこそこいい点数とってたもん!謙也、世界史カスだったじゃん!」

カス言うな!!あのなぁ、確かに世界史はカスやったけどその代わり俺は英語頑張ったんや」

「・・・まぁ確かに謙也は英語と数学はええ点数やったな。今回は」

「なんや白石、英語の点数俺に2点負けたんまだ根に持っとんか」

「はっ。別に」

(コイツ鼻で笑いよったで!)




テストの点数(基本5教科)の総合得点を競った結果、
結局蔵が一番よくて(満点に近い)、次に引き離されて謙也、私の順番。

今回の敗者の罰ゲームは「コンビニでアイスを奢る」ことだった。
だから今私たちはコンビニでアイスを買った帰りなんだけど・・・・・・・




「・・・まぁいいや!今回は潔く負けを認めてあげるわ」



私はそう言いながら、コンビニのビニール袋の中から2人にアイスを渡した。
2人は「すまんなぁー!」と言いながらアイスを受け取った。


蔵も蔵だ。彼氏で庇うわりには、ちゃっかりハーゲンダッツ買ってるし。
(しかもハーゲンダッツの中でももっと高いやつ!!!)(私だって普段食べてないのに!)

謙也にいたっては意味不明な味のアイス買ってるし。
(意味不明な味なわりにはちょっと高かったからムカつく!!)(何なの?わさび味って!)
(アンタが買うべきはガリガリ君でしょ!!)(蔵は高くても許すけど!!)


私は無難に100円アイスを食べているというのに・・・!!!





「ほないただきまーす!」



3人でカップのアイスを開けた。
そしてぱくっと各々アイスを口に運んだ。



「んんー。やっぱおいしいわー!勝利のあとのアイス」

「蔵、本当ちゃっかりしてるよね・・・!!」

「こんな機会やないとこんな高いん食べれんしな♪」

「一口いただきー!」

「ん。ええよ」



私は蔵の許可を得ずに蔵のアイスをスプーンで掬い取り、食べた。
蔵は笑いながら私が取りやすい位置までカップを下げてくれた。(優しい・・・!)



「うわっ!めっちゃ刺激的な味やんこれ!!」

「うわ、謙也の何なん?ソレ。わさび味?気持ち悪いの食べよるなぁ」

「人のお金でそんなしょーもないアイス買ってー!!!てかそれ158円とか高すぎ!」

「ええやん別に!ちょ、も食べてみてやコレ」

「わさび味のアイス・・・?ちょっ、大丈夫?」

「ほーらー!」



すると謙也は、謙也のスプーンでアイスをすくって私の口まで運んできた。
私は取り合えず口を開けて謙也のアイスを食べた。



「・・・・・うわー!!!何この味ー!変な味ー!」

「せやろ!?せやろ!?これな、でもな、何故か癖になんねん!」

「いや、まずいよソレ!絶対途中で飽きるってー!」

「なんかちょっと抹茶っぽい味せぇへん?抹茶に炭酸入れた、みたいな。」

「抹茶に炭酸入れる人がどこにいんの。私の100円アイスの方が絶対おいしいし。」



私は謙也に「口直しに食べる?」といい、私のスプーンで手を伸ばした。
すると謙也も口を開けたので私は謙也の口にアイスを運んでやった。



「ん・・・!うま。」

「でしょー?謙也いっつもチャレンジしては失敗してるじゃん。ねー、蔵」

「・・・!」



私が蔵の方を向くと、蔵はなんかぼーっとしていた。



「蔵?」

「・・・・・っ!あ、ごめん。なに?」




蔵はにっこり笑った。・・・・・・蔵・・・・・???
・・・・・なんか、不機嫌????










次の日。




「蔵ー!お昼ご飯一緒に食べない??」

「ん、ええよ!食べよか」



私は蔵の席に椅子をもっていって、一緒にお弁当を広げた。
毎回思うけど、蔵が左手で箸を持っているのがかっこよすぎて私はドキドキする(かっこいい!)



「あれ?今日ののお弁当、オムライスなんやな」

「そうなの!自分で作ったから卵とかガタガタだけどね」

「え?自分で作ったん・・・??」

「うん。でも蔵が作った方が絶対上手いよねー。作ってて自分で思ったもん」

「へー・・・・・・」



蔵は体を乗り出して私のお弁当を覗き込んだ。
(こんなのチキンライスに卵乗せただけの適当オムライスだけどね!!)

興味津々に蔵はオムライスを見つめていた。



「蔵、一口食べる???」

「えっ」



私が一言普通にそう言うと、蔵は目を丸くしてこっちを見た。
え?なんでそんなに蔵、動揺してんの!?



「ほら、あーん♪」



私がスプーンでオムライスを掬って蔵の口に近づける。
だけど蔵は手を顔の前にかざして、顔をプイッと横にそらした。



「・・・っいや、ええって!恥ずかしいやん!」

「??なんで?」

「べ、別にそれくらい自分でとれるし」



すると蔵は自分の箸で私のオムライスを一口分だけ取って自分の口に運んだ。
な、なーんか・・・虚しいぞ。(せっかくあーんのチャンスだったのにー!)

蔵は案外こういうのにノってくれると思っていただけに
なんとなく、私はショックだった。
ま、まぁ蔵が皆のいるところでイチャつくのが好きじゃないっていうのは知ってるし、 私もそうなんだけどね!!でも、これくらいの一口交換、イチャつく以前に普通にサラッと やってくれてもいいと思うんだけどなー。

だってよく回し飲みするし。


なんか、蔵が不自然・・・。
ちょっと凹むけど、話題変えよう話題!



「あ、ねぇ蔵!今日の蔵のお弁当、アスパラベーコン入ってるね!」

「え?あ、ホンマや。友香里がそういや昨日母さんに頼んどったなぁ・・・」

「私、白石家のアスパラベーコン好きだよ!」



前に食べさせてもらったことがあるんだけど、ほんっとに蔵のお母さんの料理おいしいの!
たかがアスパラベーコンだけど、びっくりするくらいおいしい!



「ほな、食べる?」

「え?いいの!?」

「全然ええよ。はい」



蔵はそう言うと私のお弁当のフタ部分にアスパラベーコンを置いてくれた。
あ・・・。軽いノリで食べさせてはくれないんだ。
んー。やっぱりおかしい気がする。

なんか今日の蔵、やっぱりおかしい!


ていうか、頑なに私との「あーん」を拒絶してる気がする!



「・・・ねぇ蔵、」

「ん?」

「なんか怒ってる???」



私がそういうと蔵は思い当たる節があったかのように口元で箸を止めた。



「あ、やっぱりそうなんだ」

「べっ・・・別に怒ってへんって!」

「じゃあ何であーんってしてくれないの?」

「そっ・・・それは・・・まぁ別にええやん!自分で食べれるし!」

「じゃあ私は食べれないから、蔵にあーんして欲しいっていったらしてくれるの??」

「・・・・・・」

「蔵、なんか隠してるでしょ」




すると蔵は「はぁ・・・」とため息をついて口元を手で隠した。
そして目線を横に逸らしつつとても言いにくそうに口を開いた。




「・・・ホンマのこと言うと、嫌やってん。」

「??何が??」

「この前アイスを俺らと謙也で食べたやん?」

「うん」

「その時、謙也が普通に自分のスプーンでにアイス食べさせたのと、 のスプーンで謙也に食べさせたんがメッチャ嫌やってん・・・!!」



・・・ええええ!?あれが!?



「だってそうやん!!間接キスやん!」

「そ、そりゃそう言われればそうだけど・・・!でも謙也がフツーにアイスくれたからつい・・・!」

が謙也の事意識してなさすぎてそうなるんは分かっとるって。
せやからこうやって俺も隠し通そうとしとったんやし」

「・・・」

「でもと謙也がアイスを食べさせあいこしとるのを傍から見とったら、 通りすがりの人らは俺やなくて謙也のことをの彼氏って思うんやろうなーって思ったら、 無性にイライラしたんやって」

「蔵・・・」

「・・・・・が、あーんってする時の顔・・・謙也に見られたんがムカつく」

「え・・・」

が普段見せへん意外な顔とか、俺だけが知っときたいし誰にも見せたくないんやって」

「・・・!!!」

「・・・・・あーもう。こんなこと何で言わすねん・・・!言うつもりなかったのに」

「・・・ごめんね!蔵!!」

「え・・・」




蔵がそこまで嫌だったなんて・・・!!!

蔵が優しいとはいえ、私甘え過ぎてたよ!
そうだよね、謙也だってあんなんだけど一応私にとっては異性だもんね・・・!
私だって蔵の女友達が蔵とアイスの食べさせあいこしてるの見たら凄く嫌だ。


また私ってば、蔵のこと考えてなかったよ・・・!!!

だめだなぁ、私。




「私蔵のこと何も考えてなかったよね・・・!!」

「いや、これは俺が女々しいだけやから。自分でも嫌やねんけどなぁ、こんなしょーもない事で 嫉妬とかするん」

「ううん。蔵は悪くないよ・・・!それが普通。ごめんね・・・!」

「・・・アカン」



え・・・!蔵・・・!!!???

アカンて・・・!許してくれない・・・・の???



「俺、のそういうとこ弱いねん。もーアカンわー!」



蔵はそう言うと逸らしていた瞳をこっちにチラッと向けた。



「そういうとこ・・・???」

の事でイライラしても、結局にちょっとでも優しくされたら綺麗に許してまうわ」



蔵はくすっと笑いながらそう言った。



「ちょっといじわるしてごめんな」

「・・・」

「せやから、この事はこれでチャラにしたるわ」




そう言うと蔵は私のお弁当箱のフタに置いてあったアスパラベーコンを箸でとって、




、あーん」

「!!!!!!!!!!!」





思いっきり甘い笑顔で私に食べさせてくれようとした。
その蔵のかっこよすぎる顔と、今更ながらまたまた左手で箸を持つ蔵にきゅんきゅんきて




「あれ?(?)」




勿体なくてその一口がなかなか食べれない私なのでした。









(11.7.28)