謙也はその日、一人で街中を歩いていた。


趣味でもあるウインドウショッピングをしながら色々と街を物色中。
だがしかし、あるお店の前で謙也はピタッと立ち止まってしまった。
そう、そのお店こそまさに。




(は・・・・!!???なんで白石とウエディング系のお店から出てきてんねん!?











そう謙也が目撃したのは、と白石が2人で楽しそうに例のお店から出てくる姿。
2人はウエディングドレスを試着した後ということもありとても楽しそうだった。

だが、ただの試着ということもつゆ知らず、謙也の手から携帯が滑り落ちた。



「なっ・・・!!!!!もしかして・・・・・結婚するんか!?



「俺聞いてへん聞いてへん!!!!」と一人胸騒ぎがしだす謙也。



(とっとりあえずこの事を誰かに伝えな・・・っ!!!せっせや!!!財前や!!!!!)




すると謙也は財前に電話をかけた。
が、しかし。




(・・・・着信や。・・・謙也先輩から?)




ディスプレイには「忍足謙也」という文字。
財前は数秒ディスプレイを眺めたままで、電話には出ようとしなかった。




(・・・どうせしょうもない事やろ。出んとこ)





(・・・・なんやねん財前!肝心なときに出ぇへん!!)



謙也は電話をかけるのをやめて、今度はメールを打ち始めた。

そのメールを送った相手は、メールに気づいて携帯を開いた。





20××/ ×/× 17:32
From 忍足謙也
Subject やばいで
-------------------------------
ユウジ
大変や

と白石が結婚するらしい

----END----







「はああああああ!!!??????」



「あら☆どしたのユウくん!そんなに驚いて!」



此方は白石や謙也や財前とは別ルートで街にいた小春とユウジの2人。
ユウジは携帯に届いたメールを見て大声をあげて驚いていた。
すぐに小春がユウジの携帯を覗き込んだ。



「なななっ・・・!!!!け、け、結婚!?」

「あら♪ちゃんと蔵リン、結婚するのね!」

「はぁ!?いや意味不明すぎるやろ!!つくならもっとマシな嘘つけや・・・!」




20××/ ×/× 17:34
From 一氏ユウジ
Subject Re:やばいで
-------------------------------
嘘つくなや
俺と小春に先駆けて
結婚とかありえんわボケ

----END----




20××/ ×/× 17:34
From 忍足謙也
Subject Re:2
-------------------------------
ホンマや
証拠つけたるわ

----END----

XXXXXXXXXXXX.jpg






「げ・・・!!!!ホンマや!!!!」



謙也から送られてきたのは、例のお店の前で楽しそうに笑い合う2人の姿。
その写真を見たからには信じられずにいられない。



「マジやんけ!!!なんやコイツら!」

「あら、ホンマやわ。まぁあの2人なら結婚する思うてたけど・・・でもこんなに早く するもんかしらねぇ」

「でも男は18まで出来ひんやん!?」

「前撮りとかするんかもしれへんやん。蔵リンならプロポーズも考えれるで」

「た、確かに・・・!!!!」

「でもおかしいわねぇ???蔵リンなら十中八九自分の就職が決まって 安定するまでは結婚とかせぇへん気がするけど・・・・・」

「それもそうやな・・・!白石完璧やもんな・・・」

「!!・・・・ユウくん、これもしかして!」

「ん?」



出来ちゃった、ちゃうん???




!!!!!!!!!!!!!!




「蔵リンとちゃんがこんなに急いで結婚する理由ってそれしかないやん!?」

「マジで!!!!???えっ、つかと白石・・・えっ?」

「何動揺しとんの!あの2人ならそこまで発展してないハズないやん」

えーーーー!!!!まっ・・・マジか・・・!!!」

「とりあえず光に伝えましょ♪」

「ちょ、俺謙也に電話してみるわ!」




小春は財前に、ユウジは謙也と連絡を取る事になった。




「もしもし!?謙也!?今の話マジなん!?」

「ホンマや!!見たやろあの写メ!!!!結婚や結婚!!!」

「・・・アイツら、俺と小春を差し置いて・・・・!!!!許さん!」

「結婚するなら言うてくれればええのにな!なんやねんアイツら、水臭いわ」

「・・・いや、謙也。結婚するって伝えたくても伝えれへん理由があったんかもしれへんで?」

「え?どういう意味やねん」



「・・・・・・授かり婚っちゅー言葉、知っとるか?



「ええええええええ!!!?????こっ子どもできたんか!?」




「絶対そうやって。小春が言うたんや間違いない!

ちょちょちょちょ!?待ってや!でも、お腹凹んどったで!?」

「まだ発覚して日が浅いんや。それくらい察せやボケ」

「はーーーーーー・・・・・。マジか・・・!!!!!せ、せやな。
よぅ考えたら、白石が学生結婚とかする性格ちゃうしな・・・!」

「それや。」

「どうしても結婚せなアカン理由があるって・・・!!!!子ども出来たんか・・・!!!!」

「・・・そうみたいやな」

「なら俺らとしては祝ってあげなアカンな。・・・俺ちょっと皆に伝えるわ」




ユウジと謙也は電話を切った。
どうやらその間に小春がメールを作成し終えたようだ。
「送信☆」といい小春は財前にメールを送った。




20××/ ×/× 17:37
From 金色小春
Subject 可愛い後輩、光へ
-------------------------------
謙也クンから聞いた?
ちゃんと蔵リン結婚ね
光にならアタシもらわれても…

エエで

----END----

XXXXXXXXXXXX.jpg





・・・え。先輩と部長結婚するんや




思わず驚いて携帯を二度見してしまった財前。
おそらく謙也から転送されたであろう画像を見て納得してしまう。




20××/ ×/× 17:40
From 財前 光
Subject 無題
-------------------------------
初耳っすわ

----END----





財前がメールを送った直後、謙也からまた電話が入った。
財前は出る気が起きなかったが、一応気になる話題ではあったので仕方なく電話に 出る事にした。



「・・・・もしもし」

「財前!!!!聞いたか!?」

「あー。部長と先輩の話でしょ?小春先輩からメールきましたわー」

「何のん気なこと言うてんねん!」

「おめでたいやないですか。結婚でしょ?」

「お前・・・!今はそうやけど・・・!!!白石とは今から ごっつ大変な目に遭うんやで・・・!?」

「大変な目?」

「せや・・・!!!!!金めっちゃ要るやろうし、学校やめなアカンかも・・・・・・ 今から10ヵ月言うたらまだ在学中やねんな・・・。卒業式は大変や絶対・・・・・」

「何をぶつぶつ言うてるんスか」

「いや、此処だけの話やで!?・・・・・・出来たらしいで

「は?」

妊娠したらしいで!!

「はっ!?ちょ、何言うてるんスか。全然元気そうやん」

「今は、や。・・・・・アイツらきっと俺らに隠すためにわざと明るく振舞っとったんや。 ・・・・・と白石は部活の雰囲気を大事にするからな。」

「・・・。」

「そういう事や財前。いくら毒舌なお前でもの前で毒舌吐いたらアカンで。 の胎教に悪いんやからな!!」

「・・・・・はぁ」

「ほなまた明日学校でな!」




ブチッと切られた電話。

しかし財前にとって複雑な心境だった。
そうか、あの2人は今から乗り越える困難が多いのか、と。

財前には兄がいるが、兄は結婚して今子どもが1人いる。
兄夫婦とは同居しているため、妊娠しているときの女性の様子を身近に見ていたが とても大変そうだった。それに兄が「子ども1人出産するのにこんなにお金がかかるんか」と 母と相談していたのを見た事がある。
まだ就職もしてないただの学生が、今から結婚して出産を迎える・・・・

リアルな状況を見た事のある財前にとっては素直に祝えなかった。




―――――――その日、財前は2人の名前を伏せてブログに書いた。

それは校内のソーシャルネットコミュニティーみたいなもので、 いわゆる四天宝寺の生徒だけのコミュニティーサイトだ。 パソコン部が作ったサイトで、四天宝寺の生徒だけが参加できる。 参加した生徒にはブログ機能があり、各個人で楽しむことができるというものなのだ。


通常友達同士でしかブログを見ないのだが
財前の場合、自己満足で書いているものであり、特別他人には自分から教えない。
が、しかし。財前には多くのファンがいて、閲覧者数は圧倒的に多い。
マメに更新しているなら尚更多い。

つまり。



ブログに書いた事によって、白石との話は一気に拡散されてしまい・・・



翌朝には大変なことになっていた。






◆   ◇   ◆







「聞いた!!!???3年のさんと白石先輩、結婚するらしいで!!!」
「聞いた聞いた!!!!!なんかワケありなんやろ!?」
「妊娠したらしいで!」
「マジで!!!????」

「白石くんとさん、結婚するんやってー!!」
そんなん一言もいうてなかったやん!?」
「なんでも出来ちゃった結婚らしくて誰にも言えずに、さんどんどん痩せて行ったんだって
「えっ?なんかさん来月には学校やめるらしいで」
「マジで!?」
ちゃんがどうしても産みたいって言うたらしいで!」
「白石くんもそれに賛成したんやろ!?」
「白石、今日挨拶に行くらしい。出来た事の親に報告しに行くらしいよ」
「マジなん!?うっわー・・・・・」




財前のブログといい、謙也の交友関係の広さといい、噂とお祝いごと好きな四天宝寺の生徒の 風土もあってか2人が結婚するというデマが1日でほぼ全員に知れ渡ってしまった。



そんな事になっているとは知らない、と白石の2人は
今日もいつも通りに2人仲良く登校していた。





「朝練ないと朝ゆっくり出来るから、たまにはいいね♪」

「なんかこの時期、冬に比べると汗かきやすいし・・・朝練の後ちょっと嫌やねん」

「えー?でも蔵、全然いい匂いするじゃん!」

「あんま近づかんといてや。・・・汗くさいとか思われとぅないねん!」

「あははっ♪」



今日も仲良い様子の2人。
朝練の時間ではないため朝練がない生徒に紛れての登校だ。
だがしかし、今日はいつになく視線を浴びている気がしたは白石に話しかけた。




「・・・ねぇ蔵、なんかすっごく視線感じるんだけど・・・・」

も思うた?俺も思った」



白石の場合、綺麗な顔立ちのため「イケメン」と称される事が多く
女生徒からの視線は常に浴びていて、視線が集まる事には特に抵抗はない。
だがしかし、今日の視線はいつもと違う感じがした。

皆から憐みの目を向けられているような・・・・????




「・・・もしかして、私また何か言われてるのかな!?」

「え?」

「ほら!冬に部活のおやつで、ケーキラッシュがあったでしょ!?
私あのときぶくぶく太って、蔵のファンから"蔵とは釣り合わん"って散々陰口叩かれてさー! ・・・もしかして、また最近・・・・太った!?」




はそう言いながら、自分のお腹をさすった。


その行為に、見ていた登校中の生徒たちがざわつく。






今の見た!!!!????ホンマやったんや!!!!!
「お腹触ったで!!!!!!!」
「うわー!うわー!!!!!ちょっ!?大変やーーーーー!!!!」





の行動が更なる噂の信憑性を高める。
そんな事とは全く知らない本人たちは、構わず会話を続ける。




「いや?は全然太ってへんと思うけどなぁ」

「蔵は毎日見てるから気付かないのかもよ??」

「・・・まぁ太っとっても、やし、俺はかまへんけどな☆」

「そ・・・そういう蔵の甘やかしが私をダメにするんだよ・・・!!!」

「んー。でも太ってへんと思うけどなぁ」




そう言いながら、白石はのお腹をさすった。



もちろんこの行動は更なる拍車をかけ、2人の知らないところで騒ぎはでかくなる一方だった。
「白石とは結婚する」「白石とには子どもがいる」
事実無根の噂が独り歩きして、とんでもない事になっていた。


いつもと違う視線を感じつつも、2人は3-2の教室へ向かう。
やたらとヒソヒソ話をされるような気がしたが、特に気にも留めなかった。

が3-2のドアを開け、いつも通り「おはよー!」と挨拶をしようとしたその時だった。




パーン!!!!!!!



「「!!!?????」」



急に鳴り響いたクラッカーの音。そして入口付近にはたくさんのクラスメイトたち。
わけが分からなくなったと白石はビックリして固まった。



おめでとう!!!!!!白石!!!!!

「は・・・!?」

「「「「「「おめでとーーーー!!!!!」」」」」」

えっ!?いやっ、ちょっ、なに!?」



2人は背中を押されて皆に囲まれた。
何が何だか分からない2人はあたふたしながら状況を読もうと必死だった。
だがクラスメイト経ちは皆笑顔で、そして大きな拍手をしてくれている。



!!!!おめでとう!!!!」

「へ・・・・????」

「白石!!!アンタ、を泣かせたら絶対許さんからな!」

「・・・・????」

、体育とかちゃんと休みや!無理したらアカンで」

「え・・・??」

「白石もも水臭いねん!めでたい事なんやから、堂々とせぇや」



クラスメイトに紛れて謙也が嬉しそうにそう言い放った。
水臭い・・・???一体何の話だろうか?



「これ・・・3-2から応援の意味も込めて、花束と・・・寄せ書き書いたから」



の女友達の一人が大きな花束を渡した。
わけが分からないはハテナを浮かべながら花束を受け取った。

同時に白石も謙也から寄せ書きの書いてある色紙を受け取った。
もう、何がなんだかわからない。



「ほな皆、せーので言おうや」

「せやな!!!!!!」

「いくでー!せーのっ」




「結婚おめでとうーーーーー!!!!」




「「はぁ!?」」




クラスメイトはきゃーきゃー言って、大騒ぎ。
「ひゅー!!!」というお祝いの口笛と、拍手喝采。
それを聞きつけた他のクラスの生徒も、3-2の教室をのぞきに来て大騒ぎしている。





「「結婚!!!???」」

「せやで♪お前ら結婚するんやろ」

出産は大変だと思うけどうちらで出来ることなら何でもするからな!」

「ええ!?しゅ、出産!?

「ホンマ・・・妊娠したならしたって言えや!何でも話してくれてええんやで」

ちょっ!?皆何言うとるん!?結婚!?妊娠!?何のことやねん!」

「隠さんでもええやん白石くん」

「は・・・???」




「え?だって白石くんと、出来ちゃった婚するんやろ?




はぁああああ!!!???だっ誰に聞いたんそんなん!!」

「え?皆知ってんで」

も子どもを産みたい、ってよぅ言うたわ・・・!!!」

いやいやいやいやいや!!!!妊娠!?何の事!?」

「え・・・??だって自分ら、今度結婚するんやろ?」

「は!?結婚!?」

「聞いたでー♪白石、この教室で放課後プロポーズしたんやろー♪」

「プロポーズ!!!???何が!!!???」





あまりに皆と話が通じないので白石とは、混乱する一方だった。
だが何となく状況がつかめてきた白石は、さっき受け取った色紙を見てみた。

するとそこには、「結婚おめでとう」の文字が。



(・・・もしかして、昨日帰り道にあの店行ったとこ誰かに見られたんか・・・???)




鋭い白石はだんだんと、この状況が読めてきた。
結婚する、そしてどんどん噂が独り歩きして出来ちゃった婚に話が広がった?
そう考えると朝、好奇の目で見られていた理由にも納得がいく。




「・・・・・皆落ちついてや!・・・俺とは結婚せぇへんって!」




今度は大きい声でクラスメイトがざわめいた。




「え!?でも証拠の写メ回ってきたで!?ほら!」

「・・・それはやな・・・!!!」




白石はクラスメイトに説明を始めた。
そして噂が事実無根であること、は妊娠していないこと、
クラスメイトの質問をひとつひとつ処理して、誤解を解いていった。




「・・・っちゅーわけで、何でこうなったんか知らんけど俺とは結婚せんって!」

「なんやそれーーーー!!!」




せっかく花束と寄せ書きを1日もしないうちに手配したのに!
勘違いのためにここまで行動できるのは凄いが・・・・・・
自分たちのやったことが素直におかしく思えてきたクラスメイトたちは
皆で大爆笑したのだった。

それにつられても涙が出るほど、笑った。



「あはははは!!!あーおかしい・・・!私が子ども産みたいって強気になったとか・・・ 何情報なの!」

「あはははははは!言いそうやもん!」

「うそ!言いそう!?」


「でもこんな噂、どこから流れたんやろな?」




クラスの一人がそう言った瞬間、クラスメイトの輪からスーッと離れる人物が一人。




白石は、それを見逃さなかった。






「待ちや謙也。どこ行くん?」


「・・・・・えっ?」


「・・・・・・・・・・お前やな?」


「〜〜〜♪」




「ちょっと話があんねんけど」

わ、悪気はなかったんや白石!!

「・・・学校中に広まったこの噂、どうしてくれるん??」

「・・・・・・・・どうしよう☆」




イミテーション・ワールド
(うそみたいな世界が広がってる、朝)



(でも私と蔵が出来ちゃった婚するって・・・1日で凄い噂だね!) (・・・俺は絶対そういうことはせんけどな) (あははっ!見てこの寄せ書き、超笑えるよね!) (なんやねん、謙也の"俺のオカン、俺産む時1分もかからんかったんやで☆ そんな俺と仲良しなんやから絶対安産"て・・・!)(ワケ分かんない理屈だよね) (ははっ!ホンマやな)



(11.5.22)