よくある授業風景。
今日は体育で女子はバレー、男子はサッカー。

女子のバレーは手っ取り早く終わって体育館のドアの近くで皆で座って涼み中。
それと同時に男子のサッカーを見て、男子の話をしている。
ガールズトークの最中、なぜか話題は蔵の話になった。




「あっ、白石がシュート決めた」

(蔵かっこいい・・・!!!)

「あ。またエクスタシー言うてるでアイツ」

「いやー白石って、ホンマイケメンやのに、いろんな意味で残念やなー・・・」

「ホンマやな。白石、あのままやったらかっこええねんけどなー」

「わかるわかる。口癖が全てを台無しにしとるよな」

「それや!あと何かどことなく変態っぽい」

「わっかるわーそれ!、アンタ白石に変な事されてないやろな!?」

「え゛・・・」

「うちらの可愛いをサラッと持っていって・・・!!!」

「許せん、白石蔵ノ介」



皆は蔵のことを見てぎゃーぎゃー騒ぐ。



「あいつ黙っとったらパーフェクトやのに」

「ホンマ、も言うてあげた方がええって!」

「あー・・・」

「エクスタシー言うてる内はどんなに頑張っても完璧なイケメンにはなれへんって言うたり!」



友達の一人がそう言うと、友達全員が手を叩いて爆笑する。

・・・・・・・。



私も合わせて笑った。


・・・・・だけど。










体育の次の時間の授業。

退屈な呪文が唱えられてる古典の授業。上の空になるには丁度いい時間だ。
私はさっきまでの体育の授業のことを思い出していた。



(・・・・・わかってるんだけどなぁ。冗談だって)



そう、さっきまでの友達との会話のことだ。

友達みんなが蔵をいじって楽しんでるのは分かる。
蔵が皆に残念なイケメンだと言われてるのもすっごくわかる。
あんな綺麗な顔した完璧な人が、唯一身近に感じられるポイントだし、 私は別にイイと思う。皆がどう思おうと皆の勝手だし、 蔵への愛情の裏返し(?)っていうのもすーっごく分かってる。


だけど・・・・・・




(やっぱり彼女としてはそんなこと言われると、凹む・・・なぁ)




ぺたっと机に耳をくっつけるようにして突っ伏せる私。

・・・・・そう。
やっぱり蔵が気持ち悪いとか言われるのは、いくら分かっててもへこむ。
だって・・・そりゃ皆にとっては「残念なイケメン」かもしれない。


だけど私にとっては蔵はいわゆる「王子様」だ。

私には変なとこ見せないし、むしろ何やらせてもかっこいいと思う。
エクスタシーだなんて言ってるけど私の前ではそんなに言わない。
女の子が喜びそうなことたっくさんしてくれる。
私を幸せにしようといつも一生懸命でいつも頑張ってくれてる。


いつも優しいし、冗談だって通じるし、空気読んで甘えさせてくれる。
たまに私にしてくるいじわるも、その後「ごめんな」って笑って謝ってくるところとか・・・

蔵は全然残念なイケメンじゃない。
私にとって蔵は勿体なさ過ぎるくらいの彼氏。




そんな蔵の一面を知ってるから、私は友達が「残念な彼氏でが可哀想」って
言うのが少し許せなかったりする。



分かってる。分かってるんだけど・・・・・・・

やっぱり蔵のことが本当にかっこいいって伝わってないのを目の当たりにすると
なんだかすっごく嫌な気持ちになってしまうんだ。









、」

「へっ??」




今日はずっとそんなことを考えていたからずっとボーッとしてた。
蔵の声に気づかなかった。あ、今もう部活の時間なんだね・・・!!




「あははっ!何ボーッとしてるん??なんか今日ずっとそんなかんじやん!」

「ああ・・・うん・・・。ちょっとね」

「・・・ん?・・・なんか、あったん?」

「・・・うーん。なんていうか・・・・・」

「うん?」




私は蔵の顔をじーっと見つめた。
蔵はそんな私の顔を覗き込む。




「・・・・・・・蔵かっこいいのに、皆わかってないなーって」

「俺?」

「うん。だって蔵のこと、残念だーとか、やめときーとか、 勝手なことばっかり言うんだもん」

「はははは!そうなん?俺そんな風に言われとんや」

「笑いごとじゃないよ蔵!!私にとって蔵は全然残念じゃないもん」

「え?何?」

「・・・今の聞こえてるでしょ」

「バレた?」

「だから・・・蔵がちゃんと評価されてないのは勿体ないし、嫌だなって思うって話!」

「ふぅん・・・。でも別にええやん!俺はだけ分かってくれればそれでええし」

「えー!なんでー!?」



蔵はふふっと笑って私の頭に手を乗せた。



「ほなは俺がもっと完璧に振舞って、皆にモテて欲しいん?」

「えっ」



蔵がにやっと笑った。



「俺やろうと思えば、変な事とか言わずに生活できるで」

「そうなの!?」

「まぁそれくらい我慢できるって。ちょっとつまらんけど」

「じゃっ、じゃあ・・・・・」

「でも、よーーーく考えてみ。

「へっ?」


「どうするん?俺がモテて、俺がその中からより可愛いなーって思う子見つけたら・・・」

「えー!やだやだやだやだ!!それはだめ!」

「ホンマにそうなったらどうする?」

「・・・泣く・・・!!」

「へぇ・・・」



蔵はいじわるそうに笑った。



「ふぅん。泣くぐらい俺のこと好きなんや」

「・・・・・・・当たり前じゃん」

「ははっ!素直やなぁ!ウソウソ。そんなことせぇへんし、より可愛い子とかありえんって」

「・・・ホントに?」

「ホンマホンマ。ほら男子ってな、女子のこと見たら付き合えるか付き合えへんか考えたり すんねんけど」

(・・・女子が男子の評価してるようなもんかな・・・)

「そりゃ俺も色々考えたで」

「え・・・!!!そ、そうなの・・・・!!!!????」



う・・・!蔵が他の女の子と付き合う妄想してる・・・???
やだーーー!!!!なんかそれだけですっごくヤダ!



「うん、まぁそこは男やし。・・・せやけど俺の場合以外想像出来ひんかった」

「えっ」



蔵は頬をぽりぽりとかきながら、ちょっと照れくさそうに言った。



「・・・なんやねんそのニヤけ顔」

「え!?笑ってた??」

「笑うてるやん」



蔵は私のほっぺをプニ、とつまんだ。
でもそれでも嬉しくてなんだかニヤけてしまう。



と付き合うとると他の子が届かん部分が多すぎて、結局が一番やーって思うてまうよ」

「ほんとに!?」

「ホンマ。それが俺には分かるし丁度ええから、やっぱりが一番や」

「・・・蔵ー!!!!」




嬉しくて私は蔵に抱きついた。
蔵は笑いながら「大げさやって」と私を抱きとめてくれた。

するとそれを目撃した女友達が「あーーーー!!!!」と騒ぐ声が聞こえた。


振り返るとそこには部活中の友達。




「あー!!!白石ーーー!ウチらのに何してんねん!」

「ホンマや!!!公共の場で可愛いにセクハラせんといてくれるか!」



きゃーきゃーと騒ぎたてる友達数人。
だけど蔵はフッと笑ってその子たちに言い返した。





「しゃあないやん。が俺の事好きなんやから」





その言葉に友達は「やっぱり変態やん!」と騒いでいたけど
蔵は私のことを自分の胸元に近づけるようにして後頭部を抑えつけた。
そして騒ぎたてる友達の声に紛れて、私だけに聞こえる声で蔵はこう囁いた。




「さっきまでの話は、」

「!」

だけが知っとる俺ってことで、許してや」

「・・・!」




、白石にいちいち付き合うとったらアンタ変な事させられるで!」




友達が必死に蔵を否定する中、そんな声も聞こえないくらい

私は蔵の腕の中で一人キュンキュンしていたのでした。





いろんな白石くんがあるけど、私はかっこいい白石くん推し。(10.5.15)