「なぁなぁ、

「ん???」

「今日ちょっといつもと違うルート歩いて帰らへん?」



部活帰りに、いつものように蔵と帰っていたときのこと。

蔵がいきなりそう言いだした。



「いいけど、なんで?」

「ちょっと遠回りして帰りたいやん。もうちょっと一緒におりたい気分」

「も、もー!(バシッ)

「ははっ!いつも同じやとつまらんし、なんかオモロイ事あったら 楽しいし気分転換にどうかなぁと思うて」

「いいよいいよ!楽しそうだし!じゃあ・・・こっちに曲がろっか☆」

「せやな」



いつもと違う方向を曲がって、私と蔵は歩きだした。
住みなれて通い慣れた大阪。だけどなんだか凄く新鮮だった。

いつもとは真反対の方向だから本当に遠回りだ。
えへへ!蔵と一緒にいれるなんて幸せ!(しかも蔵から一緒にいたいって!) (嬉しいなぁ)(本当に特別扱いって感じがしてニヤける!)



「へー。此処コンビニになったんや」

「あれ?此処って家だったっけ?」



いつも通らない道は、少し見ない間にどんどん街並みが変わっている。

私と蔵はそのまま「ちょっと街の方にも出てみようか」っていう話になり、 街へと繰り出した。少し時間帯は遅いけど、蔵と一緒ならお母さんも心配しないしいっか。 ついでと言っては何だけど、少し気になるお店に入ってウインドゥショッピングを 蔵と一緒に楽しんだ。

と、その時だった。



「!!なぁ、あれ見てみ!」

「ん?」



とあるショッピングモールで蔵が指さしたもの、それは。




、お化け屋敷があるで!」

「え・・・ええー!」



なぜかお化け屋敷のコーナーがあった。(何で!!!???)
どうやら期間限定で開催されているらしく、女子高生やデート中のカップルや家族連れなどが 何人か並んでいた。

で、でもなんでまた・・・!!!!



「オモロそうやし入ってみん??」

「え!!!!」



い、いや・・・私こういうのダメなんですけど蔵・・・!



「やだ!絶対やだ!」

「なんでやー。どんなんか見てみたいやん」

「蔵知ってるよね!?私こういうの本当だめなの!」

「はは!知っとる知っとる!あえて、やん」

「知ってるなら誘わないでよ!」

「俺と一緒なら平気やろ?」

「全然平気じゃない!!」

「大丈夫やって。こんな期間限定のお化け屋敷なんてたかが知れとるって。
ほら、あんなちっちゃい子どもも並んでんねんで?」

「でーもー・・・」

「怖かったら俺にしがみついて下向いとけば平気や」




私は蔵のうまーーーい口車に乗せられて、結局お化け屋敷に入る事になった。
・・・一応、お化け屋敷ってデートの定番だしね・・・
本当は入った事なんて一回もないけど、もしかしたら私が思ったよりもお化け屋敷って 怖くないかもしれないしね!人生経験のひとつとして、私も頑張ってみよう。チャレンジだよね! それに蔵もいるし大丈夫に決まってる!!




と、いうわけで。。。





「おお・・・!なんかめっちゃ本格的やん・・・!」



何これ。どこがたかがお化け屋敷!?

めちゃくちゃ本格的なんですけど。



「も、もーだめ!!!蔵絶対離れないでよ!!??」



最初はただ手を繋いで入っただけだったけど、私は思いっきり蔵の腕につかまった。



「ちょ、ちょっ・・・蔵もうヤバイ。は、走ろうよゴールまで!」

「そ、それはそれで勿体ないやろ」

「もー!怖い・・・!」



やばい。泣きそう。
恐怖で声が震えてる。早く出たい・・・!!!!

と、早速お化けが驚かせてくる。



「ひゃああああ!!!!(ヤバイ!!!!)」

「!」



驚かせてきた瞬間、柄にもなく叫び声をあげる私。
その瞬間蔵に抱きついて顔を伏せる。ややややばい何これ怖い!!!!



「くっ蔵お化け!!!」

「ははは!もう大丈夫やって。おらんおらん」

「もー早く行こー!!!」

「わかったわかった」


「ぎゃっ・・・ぎやあああああああ!!!!!」

「あはははっ!」

「蔵〜!!!」

「大丈夫やって」


「・・・」

「・・・あれ?さん無言になってますけど」

「・・・・・・♪とーれとれピーチピッチカニ料理〜・・・」

何ちゅー歌歌ってんねん


蔵は私のことを笑いながら小突いた。


「もももも、もうだめ・・・!!!早く出口きて出口・・・!!!」







結局、この後も散々驚かされた私は叫び続けた。
お化け屋敷に入っていた時間は5〜10分くらい。だけどずっとここに入っていたような気分だよ・・・!!! (もう絶対入らない!!)(ほんとに怖かった・・・!)

お化け屋敷を出た時はぐったり。




、大丈夫?」

「・・・・・・。」

「冷たいモン飲む?」

「・・・・・・うん」




蔵は私の背中をさすってくれた。
そして自動販売機でペットボトルのジュースを買ってきてくれた。








「ああ、もう絶対お化け屋敷入らない!」

「あははっ!」




その帰り道、私と蔵はお化け屋敷の話をしながら帰った。
夕日はすっかり落ちて辺りは真っ暗。・・・なんか怖い。




「なんで蔵は涼しい顔してたの??」

「いや、俺も多少はビビったって。心臓ばくばくやった」

「その割には超満喫してたじゃん!」

「ま、まぁな・・・」



・・・んんん???なんか蔵の様子がおかしい・・・。
口元に人差し指の第二関節を当てて、目を泳がせている。



「・・・そういえば蔵、お化け屋敷入った時もなんか笑ってたよね」

「え?そ、そうやっけ?」

「うん。あと出た後も笑ってたし」

「・・・・・・気のせいやって」

「そんなに面白かった?私のビビりっぷり」

「いや、ちゃうねん!」

「え?」

「・・・・・ただ、その、単純に・・・・・」

「単純に?」



蔵・・・???



が、可愛いなーって・・・・思うただけや」

「・・・・ええええええ!!!???どの辺が!?」

「だってそんなん反則やわ!ずっと俺にくっついてこられたら、お化けに集中出来へんもん!!」

「なんで!?だって私叫んでしかないよ!?」

「そっ・・・それもまた俺を頼って"蔵離れないで!!絶対だよ!?"とか 怯えた顔で見上げられたら・・・!!可愛いやんか」




あれが可愛いの・・・?(だって途中"お化けばかやろー!"とか文句言ってた)
それに女とは思えない力強さで蔵の腕、ぎゅーっと締めまくってたよ!?」




「なんか、俺としては最高に楽しい場所やった。・・・っちゅー話」




蔵はちょっと顔を赤くして照れながら、私の頭にポンッと手を乗せた。
その蔵を見て、私も自然とニヤけてしまった。




「・・・ふふっ!蔵がそんなにニヤニヤしてくれるなら・・・いっか☆」

「え?」

「怖かったからもう二度と入らないけどね!」







(守りたくなるってこんな感じなんやろな)(本当?守ってくれる??) (せやな。せやからもう1回、入ってみぃひん?)(絶対嫌。)



(11.4.14)