「なぁ白石!!!」



いつも元気がない時に話しかけてくる金ちゃんが、 今日は自信満々に話しかけてきた。


このくだり、いつまでやんねん!











「しーらーいーしー!ワイと勝負やー!」

「金ちゃん、勝負はアカン。今から基礎練習や」

「なんや白石逃げるんか!」




やたらと勝負をしたがる金ちゃんに、白石は疑問を抱いた。

いつもは素直に部活をする金ちゃんが此処まで勝負にこだわるのには何か理由があるのだろうか? 白石は「何かあるな」と直感で思い、金ちゃんの身長に合わせてしゃがみこんだ。

するとその時、いつもの3人・・・ユウジ・小春・謙也が通りがかった。

3人は「またあの2人が話しよるで」と顔を見合わせ、2人に近づいた。





「金ちゃん、何かあるな?言うてみ」

「あんな!あんな!さっきなー、と喋っとったらな!」

「うん」

「"金ちゃんと蔵ってどっちがテニス強いのかな?"って言うとったんや!!」

「へぇー」

「ワイが勝つに決まっとるやろー!!って言うたら、が笑ってな?」

「うんうん」

「じゃあ、金ちゃんが勝ったらほっぺにチューしてあげるって言うたんやー!」




!!!!!????



ちょっ・・・!!!!金ちゃん!!????)

(あら☆金太郎さん、まだ諦めてへんかったんやね♪)

もここまでくると小悪魔やな・・・!




どうやら白石と金ちゃんが試合をして、金ちゃんが勝ったらからの ほっぺにキスが待っているらしい。ユウジ・小春・謙也の3人は、 バッと白石の方を見た。

すると白石は黙り込んでいた。




「白石ぃー???」

「・・・金ちゃん、それホンマか?」

「ホンマやー!!ワイは嘘つかへん!!!」

「嘘はアカンで」

「嘘ちゃう!!!!に聞いてみてやー!!ーーーー!!!」




の事を大声で呼ぶ金ちゃん。
すると、が此方に気がついてやってきた。




「金ちゃんどしたの???」

「白石と試合してワイが勝ったらほっぺにチューしてくれるって言うたよな!?」

「ホンマなん・・・?

「うん!本当だよ

「ちょっ・・・!、何言うてんねん!ほっぺにチューやで!?」

「うん♪金ちゃんがそれでいいって言ったから♪」




にこにこ笑うに、白石はため息をついた。
どうやらも面白がっているらしい。




「な!白石やろうやー!!!ちょっとでええからー!」

「はぁ・・・。分かったわ金ちゃん」

「ホンマ!?」

「ただし、本気で行くからな




白石の本気・・・・・!!!

いつもの3人は顔を見合わせて「嫌な予感がする」と思った。





「白石ーーー!!!いっつでも準備はええでー!!!!」



かくして、白石vs金ちゃんの激レアな対決が始まった。
面白さ重視の部員たちはもちろん大喜びでコートを1つあけてくれたのだった。



「ええか金ちゃん。部活の始まる時間も限られとるから、1球勝負やで」

「ええでーーーー!!!」

「それと、勝負がついてももう1回はナシや」

「わかっとるー!!!」

「ほな、小春審判よろしゅう」




「・・・・なぁユウジ、今の白石の言い方、なんちゅーか・・・」

「わかるわ。なんか含ませた言い方やな」

「ちゅーか金ちゃんのバカ力相手に白石大丈夫なんか・・・??」

「白石は勝算ない事はせんような気ぃするけど・・・」

「あいつ、なんか秘策でもあるんか?でもテニスでは小細工きかんやろ・・・」




「ほな始めるでぇ〜♪蔵リンサービスプレイ♪」


「ほな行くで」



白石がサーブを打つ。すると金ちゃんがそれを力強く返す。



(・・・ホンマバカ力やな)



金ちゃんの打球はとても重い。何球か返しているうちに腕がきつくなってくる。



「うまい!白石のやつ、金ちゃんの決め球を両腕打ちで防いだ!」

「でもそろそろ勝負つくんちゃう?」



「金ちゃん!ホンマ強ぅなったな!」

「せやろー!!!!!もう白石よりめっちゃ強いでぇ〜〜!!!」

「せやけど、これはどうや??」

「!!!」



「白石のドロップショット!!!

「巧い・・・!此処にきて緩急をつけてのドロップとは、さすがバイブル」

「でも金太郎・・・」

「ふんぎーー!!!!」

「返した!!!」



白石のドロップショットも、金ちゃんは持ち前の野性的なカンで何とか拾う。
しかしネット際には白石がすでに詰めていた。



「上手い白石!ネットにつめて金ちゃんの拾った球を・・・!」

「でも金ちゃんもすぐに後ろ下がったで!?早い!!!」



白石のスマッシュをさらに返そうとする金ちゃん。
しかし、そのときだった。



「金ちゃん!!!!」


「?」



白石が金ちゃんのことを呼んだ。



「金ちゃん、見てみ!たこ焼きが空飛んどる!!!

うそぉ!!!???どこどこ!!!!????


!!!!!!!!!!!!!


白石が金ちゃんの後ろの方の空を指さしてそういった。
金ちゃんはボールそっちのけで空を見上げる。


(しっ・・・白石きたねぇぇえええ!!!!




「・・・・・あ。」




ポーンポーンとボールがコートをはねる。




「ゲームセット!蔵リンの勝ち☆」

ええええええええ!!!!!!!うそやぁーーーー!!!!!!」

「すまんな金ちゃん。」

「ずっずるいわ白石!!!!!もう1回!!!もう1回!!!!」

「金ちゃん、最初に約束したやろ。もう1回はナシやでって。


(なるほど・・・白石のやつ、この秘策があるから勝負の前に強調したんやな・・・!

(しっかしこんな子ども騙しのテニスが通じるんは金太郎さんだけやで)


「金ちゃん、テニスはパワーとか才能だけじゃアカンねんで」

「えっ」

「・・・こうやって、頭使うてその隙間狙うやつもおんねん」

「白石ぃ・・・」

「俺は金ちゃんの先輩としてそれを教えたかったんや。ごめんな金ちゃん」

「・・・なんや、そうやったんか・・・。わかった。ありがとな!!!白石!!



うわ、ホンマ最低な先輩や。

小春と謙也とユウジの3人は、上手い事言って話を上手くまとめる白石にそう思った。
相変わらずがかかると大人げないらしい。






「あれっ?金ちゃんどうしたの??」



試合が終わった時、がコートに入ってきた。



・・・!あんな、ワイやっぱ白石に負けてもうたわ。の言うとおりや」

「あははっ、勝負できたんだ」

「せやからワイ、にほっぺにチューしてもらえへん」



ガックリ肩を落とす金ちゃん。
そんな金ちゃんを可哀想に思ったのか、謙也とユウジが金ちゃんに駆け寄る。







「もう蔵、金ちゃんに何したの」

「・・・何って、を取られるわけにもいかんから小細工しただけや」



が白石に話しかける。
珍しく子どもっぽい白石を見て、もため息をついた。



「あんまり後輩いじめてると、バチが当たっちゃうかもよ」

「ははっ!確かにな。でも」

「?」

「バチあたっても、は誰にも渡さんけどな」



白石はの頭をぽんっと軽く小突いて、の横を通り過ぎて行った。
はそんな白石の背中を見て、呆れたように笑った。




(・・・ごめんね金ちゃん)





(13.4.15)