、これ良かったら一緒に食べようや」

「えっ!いいの!?」



うちに遊びにきてくれた蔵は、手みやげをかかさない。
しかもそれがいつも女心をくすぐるようなスイーツだったり、
一度は食べてみたかったものだったりする。

今日の手みやげは話題のプリンだった。


しかもご丁寧に私の家族の分まで用意してくれてる。



「いつも悪いよ蔵。無理しなくていいんだよ?」

「なんでやねん。俺こういうん選ぶんめっちゃ好きやで?せやからむしろありがたいんやけど」

「蔵・・・!(なんで蔵はそんなに性格いいの・・・!)」



でも、頻繁ではないとはいえさすがに毎回もらってると悪い気がする。
そりゃ蔵の家に私がお邪魔するときは同じく手みやげ持っていくけど、 それでもやっぱり蔵には申し訳ない。



「ねぇ蔵、なんか欲しいものとかない?」

「えっ?欲しいもの?」

「うん。それで何か還元させて」

「気にせんでええ言うたやん。それに俺欲しいものはもうもらってるしなぁ」

「えっ?うそ!先越された・・・!」

「ははっ。なんでやねん。欲しいものってやんか! 俺はがおれば何でもええよ。それが一番楽しいし嬉しい」

「・・・なんでそんな嬉しい事言うかなぁ!蔵は!」



私が嬉しさのあまり、そう言いながら蔵にばふっと抱きついた。
すると蔵は笑いながら私のことをキャッチしてくれた。



「まぁ、しいていうなら・・・せやなぁ・・・」

「何々!?」



目をキラキラさせながら私は蔵のことを見上げた。



から告白、されたいかも!」

「告白???」








どうやら蔵は、私から「告白」をされたいらしい。


なんでも、「好きな子から告白されたらどれくらい嬉しいんか知りたい」らしく、
私の口から告白を聞きたいと言い出した。


確かに私と蔵が付き合い始めたのも、蔵からの告白だし
実際大好きな蔵から告白されて私はすごく嬉しかったことを覚えてる。

そっか、蔵は好きな子からの告白されたことがないんだ。


でも、改まって告白してなんて言われたら恥ずかしいよ!



結局この話は「また今度ね」という形で流れて行った。
だけど私は大好きな蔵の喜ぶ顔がみたくて、真剣にこの話を考え始めた。
蔵に告白・・・かぁ。


うーん・・・!難しい・・・


だって告白ってよく考えたら凄い事だ。

相手に自分を好きになってもらえるように、気持ちを伝えなくちゃいけない。
私は蔵のことが好きだけど、言葉にしろって言われたら難しい。
気持ちを言葉にすることって凄く大変なことなのに、それを本人目の前にして ちゃんと言えるのかなぁ??


蔵の告白を参考にしてみるけど、蔵の告白は本当に完璧だった。

シンプルかつ、好きって気持ちが伝わってきた。
(まぁ私が好きだからそう感じたのかもしんないけどさ!)

タイミングや場所、全てが完璧だったと思う。




、何塞ぎ込んでんねん?」

「あっ、謙也」



チャイムの鳴る時間が迫ってきたのか、席に戻ってきた謙也。



「いや、告白しようと思っていろいろ考えててさー」

告白!?は!?何なん、お前白石と別れたんか・・・!?」

「ちーがーうー!蔵に告白しようと思って」

「白石に告白???は?お前ら付き合うとらんかったんか?」

「ううん。いや、実は蔵が私の口から告白されたいって言い出してさ・・・」

「何なんその新しいプレイ」

「やめてよ!蔵は至って普通にそう思ってるんだから」



蔵にやましい気持ちは一切ないと思う。

だって私に「告白されてみたいなぁ」って言った時の蔵の顔、凄く可愛かった。
というか、「叶えてあげたい!」って思うような優しい顔だった。
蔵が何かを欲しがるなんて滅多な事じゃないし、 彼女の私としては叶えてあげたいじゃない。



「いろいろと考えてるんだけど、なかなかいいのが思いつかないんだよね・・・。」

「おっ!いろいろメモしてるやん。見してや」

「どうぞ」

「何々?・・・"私は白石蔵ノ介のことが大好きです。 なぜならば、それが運命だからです。"・・・小学生か。

「だめ?」

「もう1個あるやん!えーと、"私には白石蔵ノ介が必要であると考えられます。 なので白石蔵ノ介は私のことを好きになってもらわないと困るのです"・・・何コレ。説得文?

「えー!それいい出来だと思ったのにー!」

「"私、は白石蔵ノ介の隣にいることを誓います" 選手宣誓?

「シンプルでいいと思わない!?」

「"は白石蔵ノ介を愛しともに歩んで行くことを・・・" プロポーズか!」

「だめ!?」

「いや、白石なら何でも喜ぶと思うと思うけどな」



はぁ〜。やっぱりダメかぁ。
だって告白の言葉って何ていったらいいのかわかんないよ。

謙也の言う通り、蔵は何でも喜んでくれると思う。
だけどそれじゃだめなの。どうせなら蔵が喜ぶ顔がみたい!
蔵のお願いを聞いてあげたいって思うよ。



「謙也はさ、なんて言われたら嬉しい?」

「まぁそりゃ・・・告白って時点で嬉しいけど・・・。 好きな子が考えた言葉なら何でも嬉しいわ」

「そうかな」

「だってもそうやろ?大好きな白石から言われた言葉は何でも嬉しいやろ?」

「うん・・・。でも蔵の場合、恋愛感情抜きにしても 完璧な言葉選びしてくれるからね・・・」

「せやな・・・!白石の場合そうやったわ・・・」

「でしょ!?」

「でもな、告白されてるときって長い事喋られても覚えてないねん! せやから、案外シンプルな言葉の方が伝わりやすいんかもしれへんな」

「シンプル・・・」




シンプルに自分の気持ちを言葉にするのって難しいよ。
告白って、すごいなぁ・・・。

蔵に無駄なく私の気持ちを伝えるにはどうしたらいいんだろう???












が告白についていろいろと迷っていたその日の放課後。
部活が終わり皆ががやがや騒いでいる中、は妙な緊張感を持っていた。



(うわあああ・・・・・。緊張する・・・!)



はすでに着替え終わって、部室の前で皆が出てくるのを待っている。
ドキドキしながら白石が出てくるのを待っていた。

正直今日の部活中は部活どころではないぐらい、は緊張していた。
頭の中で何度も考えたセリフをリピートして、何度も練習した。
しかし部活が終わる時間が近づくにつれドキドキが大きくなっていって。

は気が気でなかった。早く終わらせたい、けど心の準備ができていない。
そんな気持ちだった。



ちなみに何故部活の後に告白するかというと、それは白石が好みそうな シチュエーションだと考えたからだった。(蔵はベタ大好きなはず)(基本に忠実だしね!)
正直な気持ちをいうと2人っきりのときに言いたいが、白石を驚かせたいし どうせなら最高のシチュエーションで告白してあげたかったのだ。



(落ち着け私・・・。大丈夫、もし告白ですべっても、皆がいるからフォローしてくれるはず・・・!)



と、そのときだった。



ー!一緒に帰ろうやぁーーー♪」

「!」



金ちゃんを先頭に部室からレギュラーがでてきた。
もちろんその中には白石もいる。は白石を見た瞬間ドキッとした。

当たり前だが、以外全員は普段通りの部活光景なので普段通り騒いでいる。



何ぼーっと突っ立ってんねん。俺と小春の邪魔や」

ちゃん?帰らないの?」

「・・・蔵、蔵にお話があります!」



緊張のあまり、ラブルスの言葉が届いてないらしい。
は白石のことを呼び、白石の前で止まった。

話があると言われれば気になるのは当たり前のこと。
周りにいたレギュラーメンバーも興味深そうにのことを見ていた。
しかしの緊張した表情を汲み取ったのか、謙也だけは「・・・さては」と 笑った。



、話なんて後で・・・」

「シッ!ユウジ黙っとけ。オモロイ事になるから」



謙也はユウジの口を抑えた。そして楽しそうにと白石のことを見た。



(う・・・!面と向かうと緊張する・・・!)



いざ白石の目の前にきて白石と目が合うと、全てが吹っ飛んだ。
あんなに考えて繰り返していた言葉も全く出てこない。
テンパったは、下を俯いた。


「話って、どしたん?」

「えっと・・・・その・・・・・・!」

「ん?」



まさか告白されるとは知らず、白石はいつものように優しい声で返事した。
は恥ずかしくなって逃げたくなったが、話してくれるのを待っている白石を見ると そうは言っていられなくなった。



(・・・・・よし、言おう)



は深呼吸をして、白石に向かって口を開いた。



「あのね」

「うん」

「蔵はイケメンイケメンって言われてるけど、私はそんなことどうでもいい。
確かに蔵はかっこいい。だけど、蔵はそれ以上にやることがかっこいいと思う」

「・・・!?(急に何言い出して・・・)」

「蔵は負けず嫌いなのに、誰よりも皆の実力を認めてる。 そしていつも自分より誰より皆優先で物事を考える。 いつも蔵は皆に平等に優しいし、皆のことを理解してくれてる。 私はそんな蔵のこと、分かってるよ。」

「!」

「蔵、私の事を理解してくれて本当にありがとう。 いつも優しさに甘えちゃってばかりだけど、それは蔵が頼りになるからだよ。 私はそんな蔵のことが好き、です。だから・・・その・・・・・・」



後半に行くにつれ声が小さくなり、顔も俯いていく

でも、あと一言だと思い白石の事を見上げた。



「これからも私と付き合ってください。お願いします!」




の突然の告白に、周りの人たちは大盛り上がり。
告白ーーー!!!」「ヒューヒュー!!!」と2人を騒ぎたてた。



(・・・う、考えたセリフと全然違う事言っちゃった・・・・・!!!)
(何言ったか全然覚えてない・・・!)(今の告白でよかったのかな!?蔵ひいてないかな!?) (ちゃんと伝わってるよね!?)



言い終えた後もドキドキがとまらない。

ギャラリーの騒ぎ声も聞き入れられないぐらいドキドキしているは、 言い終えた後ぎゅっと目を瞑って下を向いた。だが 白石の反応が気になったため、恐る恐る顔を上げてみた。 ・・・すると。



「・・・なっ何なんホンマ・・・!不意打ちすぎるわ・・・!」

「!」



白石は顔を横に逸らして、頬を赤く染めていた。
そして口元に左手を添えて目線だけをこちらに向けている。

その顔はいつものような余裕がなく本気で照れているような、そんな表情だった。



「告白されるとか全然考えてへんかったわ・・・!」

「・・・ごめん・・・」

「この前のアレ、覚えとってくれたんやな」

「え・・・」

「あんなん普通に流れる話や思うてたのに反則や・・・。うわーマジで俺テンパっとるかも」



どうやら本気で予測もしていなかったらしい。
嬉しさのあまり、白石はニヤニヤをこらえているような仕草を見せた。



「ありがと、。めっちゃ嬉しい」

「・・・!」

「返事、してもいい?」

「えっ」


「俺からもお願いします。付き合ってください」

「・・・蔵・・・!」



白石がそう言った瞬間、は白石に抱きついた。
白石はそんなのことをいつものように優しくキャッチした。 しかしその顔はまだ照れているらしい。



「なんやなんやー!見せつけてくれるわー!」

「小春ぅー!俺も告白してもええかー!!」

ちゃんと蔵リン、ほんっと超バカップルね☆」

「仲良しなんは良い事ばい」

、めっちゃ嬉しそうやぁ♪」

「はー。先輩もよぅやるわ。俺は絶対出来ませんわぁー」




レギュラーどころか、部員全員がひゅーひゅーと騒ぐ。
そしていつしかその歓声は「キース!キース!」というキスコールに変わって行った。




「ちょっ!え!?キス!?」

「早くキスせぇや白石とー!」



キスコールに戸惑うに、謙也が野次を飛ばす。



「絶対謙也が言い始めたでこれ」

「あいつ・・・!」

「でも、こうなったらキスするしかないんちゃう?」

「ええ!?本気でいってるの!?」

「本気やけど」

「待って!私はまだ心の準備がっ・・・・・・・」




がそう言いかけた瞬間、白石はの後頭部に優しく手を添えて 覗き込むようにちゅっと軽くキスをした。この行動にはさすがのも固まってしまった。




「これからもよろしくな、!」

(蔵・・・!もう、そういうとこも大好き・・・!)





(あのカップルほんまいつになったら安定するんやろ) (付き合い始めた時からずっとこの調子やんな)(も白石大好きやけど、 白石もの事溺愛しとるからな…。)(羨ましいわね☆)





(10.12.31)