「ねぇねぇ、小春くんって視力悪いの??」

「0.03やで」

「そんなに悪いんだ!」



部室には私・小春くん・謙也・財前くんの4人。
この組み合わせ、前にもあったような・・・。まぁいっか!



「コンタクトにしないの??」

「考えてへんねぇ」

先輩はメガネかけないんすか」

「私視力いいんだよね!」

「この前遠くから白石のこと探し当てとったしな・・・!」

「そういえば謙也、伊達メガネいっぱい持ってたよね?今持ってないの?」

「あるで。何個か」



私がそう言うと、謙也はカバンの中からメガネケースを取りだした。
おおお!黒ぶちめがねだー!



「ちょっと財前くん、かけてみてよ」

「・・・」



私は無理矢理財前くんに黒ぶちめがねをかけた。



「きゃーーーー!!!!!!光可愛いやん!!!!!」

「ちょっキモいっすわ!触らんといてくれますか」

「財前くん似合う!!!すごい!!!」

、俺もかけたで」

「謙也には聞いてない。ていうか何回も見た事あるから」

(冷た!)



財前くんの黒ぶちめがね姿・・・!これはファンが見たら泣くよね。
やっぱりかっこいい人がかけるとかっこよくなるよね!



「あっ♪こっちにはメタルフレームのがあるやん!」

「あー。それユーシがこの前忘れていったやつや。」

「インテリちっくだね。ちょっと謙也かけてみてよ」

「ええで!・・・どや」

「あはははは!!!!なんかウケる!」

「プッ。先輩、なんかオモロイっすわ」

どういう事やねん!!??

「いやん♪謙也くんイメチェンってかんじでええやーん!ロックオン!」



私たちがめがねをかけて遊んでいた、その時だった。



「なぁなぁ、ちゃんかけてみてや」

「へ?私??」

「ホンマや!人の事散々笑うとって・・・!ちょっとお前、これかけてみ」



そういうと謙也は私にメタルフレームのめがねを手渡してきた。
(さっきの逆襲!?)



「ええー!?私めがね似合わないからやだよ!」

「お前さっき俺のこと笑うたやろ!似合うとか関係ない。ええからほらっ」

「え〜〜。」

「ええやん。先輩もかけてみればええんや」

ちゃんほらほらっ!似合いそうやしかけてみて」



3人にそう言われたので、私はしぶしぶ手渡されたメタルフレームのめがねをかけた。



「ど・・・どう?」



めがねをかけて顔を上げた。だけど目の前の3人は目を丸くして私を見ていた。
え!?私そんなにおかしかった!?えええ!何固まっちゃってんの!?絶句!?



「そんなにおかしいなら外す!」

待て待て待て待て待て!!!外さんでええ・・・!」

「え?」

「・・・いや、先輩・・・反則っすわ・・・」

「んんん??」

ちゃん!!!!!ええやん!!!!めっちゃ似合う!ていうか、 ギャップ萌えやであんた!」

「ギャップ萌え・・・・・・ええええ!?」

似合うやん・・・!(アカン、めっちゃどきっとしてしもた)」

「優等生ってかんじっすね」

「そう??そんなに似合う?なんか乗ってきちゃったよ!私!」



そんなに褒められると嫌な気はしないよね。
私はめがねがもっとしっくりくるように、無駄に髪型を変えてみた。
(おさげ!)(ちょっと優等生っぽいかな?)

いつもは制服を着崩してるけど、敢えてかっちり着てみた。



「おおおお!なんか別人!」

「いやー。でも先輩がかけてもやっぱり、色気は存在しませんね。不思議や」

「財前くんうるさいよ!どうせ色気はないですよ」

「普通めがねかけたらエロくなるとかあるのに」

の場合、見事に健康的やな」

「でもでも!ちゃんええわぁ!似合う!可愛い!」

「本当!?」

「これなら蔵リンもグッとくるかもしれへんでー??」



え!?蔵が!!??
私は蔵に常にどきどきしてるけど、蔵は多分そんなのないと思う。
なんていったって私は健康的だし色気がないし、可愛くもないから。
だからそんな蔵をどきっとさせるのは嬉しい。

と、その時だった。



「小春ー!!!今日は青春コントで一緒に行く言うたやんかぁああ〜!!!」

「あ、ユウジや」

「ん?・・・・・っ!!!!ちょっ誰やお前!」

「じゃーん!ユウジ見てみて!優等生っぽい?」

おおおおお前・・・めっめがね・・・!!!!」

「可愛いやろユウジー!のギャップ!」

「色気はないですけどね」

「うるさい財前くん!(ペチッ)」

「っ・・・・・・・い」

「ん?」



ユウジは下を俯いたまま、何かを呟いた。(ん・・・?)



「何ユウジ、聞こえないよ」

「全ッッッ然似合うとらん!!!キモい!!!!死なすどお前!!!!」

「なっ・・・!ひどっ!!」

「小春のめがねの方が可愛いに決まっとるやろが!!めがねは被るからやめろや! 死なすど!!お前のめがね姿なんてこれっぽっちも可愛いとか思わんからな!! 死なすど!!」

「3回も死なすどって言われた!!ひどい!」

「顔真っ赤にしてよぅ言うわぁ。ユウジ先輩も」




すると次の人がやってきた。




「皆もう揃うとったと?」

「千歳!」

「・・・ん?お、可愛いばい!」

「ありがとう千歳ー!大好き!」



千歳は素直に私のことを褒めてくれた。



「似合うとるよ。よかばい!」

「本当?」

ちゃん、この調子やったら蔵リンも落とせるで!」

「そうだね!早く蔵こないかな♪」

「ん?なんね、白石を落とすと?」

「うん。せっかくだし蔵をどきどきさせたくてね!だからちょっと蔵が来るまで 待とうと思って。どきどきしてくれたらいいなぁ、蔵」

「ドキドキするやろ。白石」

「部長、意外とこういう古典的なんに弱そうや」

「わかるわかる!白石、基本に忠実やしな」

「あっ!そうだ!ちゃん、蔵リン来たら"白石先輩、おはようございます"って 言うてみたら?」

「白石先輩!?えええ!?」

「ちょっと練習しましょ!ユウくんに言うてあげてや☆」

「なっ何言うてんねん小春!、やめや!絶対すんな!したら殺す!!」

「"ユウジ先輩、おはようございます☆"」

お前ホンッッッッマ死なすど!!!!

「ユウジ先輩も好きですねぇ・・・。此処はツンデレで行ってもええんちゃいますかね?」

「"白石先輩、遅いっ!"みたいな?」

「白石喜びそうやねぇ・・・」

「えっ?蔵そんなんで喜ぶの!?」

には分からんやろなぁ〜。この男のロマン」



わかるわけないじゃん! 私女だもん!!

蔵をよりどきどきさせるための、小春くんの提案。
そんなんでどきっとするかな・・・???

というか、皆は蔵を別の意味でドッキリさせたいみたいだけど・・・!



ちゃん、蔵リンが来たらもうちょっと下から見上げる感じで、 めがねをクイッと上げながら言うたらええかもな☆」

「え?こう?」

「せやからこっち向くな!!!!!」

「ユウジ顔真っ赤や〜」

「そういう謙也先輩もさっきからニヤニヤしててきもいっすわ」



すると、その時だった。



「開けるでー!」



部室の外で蔵の声が聞こえた。
その瞬間、皆が私の背中を押して前に出す。

部室のドアがあいたかと思うと、目の前には普段通りの蔵が現れた。



「・・・ん?・・・・・!!!????


「"白石先輩、遅いです!"」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!!!」



私が皆に仕込まれた通り(?)例のセリフを蔵に言ってみた。
・・・すると。



「・・・・・っな、なんやねん・・・!」



蔵は普段通り普通に流すのかと思いきや、持っていたスコアボードや部活日誌を その場にバサッッッ!と落とした。そしてしばらく止まった後に、 口元を腕で隠して顔を横に逸らし眉間にしわを寄せた。

あれ?顔、赤くない・・・?蔵・・・。

(というか蔵っぽくないぞ?)




「あれ?蔵?おーい」

「・・・・・、」

「ん?」

「ちょっとこっち来なさい・・・!!!」

「!」



蔵は小さな声でそういうと、落ちたスコアボードと日誌を拾い上げた。
そしてそれを傍にいた謙也に渡すと、今度は私の手首を握って部室の外に 連れだした。

えっ!?え!?



蔵は部室のドアを閉めると、ハァとため息をついた。
そしてちょっと照れたような顔で、凄く言いにくそうに「あのな・・・!」 「その・・・っ」と言葉を詰まらせていた。



「蔵?」

「・・・なんやねん。反則やそれ」

「えっ」



そういうと蔵はスッと私のめがねを指さし、「それやそれ」と言った。
あっ・・・蔵、本当にこういうベタなのが好きだったんだ・・・



「蔵、めがね萌え?」

「めがね萌えっちゅーか・・・。が可愛くて、萌え」

「わっ」



蔵はぎゅっと私のことを抱きしめてくれた。
私は蔵に抱きしめられながら、蔵に「可愛い」といわれたことを 思いだしてはにやにやしていた。(可愛いだってー!)(う、うれしい・・・!)



「でもアレやな」

「ん?」

「・・・めがねのも可愛いけど、めがね邪魔かも」

「え?」



すると蔵は耳元でこそこそ声で。



「キスの時、じゃ、ま。」


「〜〜〜!!!」



その後の蔵のニヤリと笑った笑顔がすごくかっこよくて。
私は一瞬にしてどきどきをの仕返しをされた気がした。

蔵は私がかけていためがねの鼻の部分を掴んでめがねを外し、自分にかけた。



「っ蔵・・・!めがね・・・!!」

「1.5やからかけることないけど、めがねって何か違和感あんなぁー」

(かっ・・・かっこいい・・・!!!

「どう?」

「・・・・・・・参りました」



蔵の目が悪くなればいいのにと思ったのは、秘密だ。
・・・結論。蔵は何をしてもかっこいい。







(何なん、おさげも新鮮やな)(でしょでしょ!でももう取るけどね) (あ、もったいな。可愛かったのに)(やっぱり普段の格好の方が落ち着くよ) (あ、でも・・・。髪がパーマみたいになっとる)(あっ本当だ! さっきおさげしてたからだね)(・・・パーマも可愛いかも。) (っっっ!)(やっぱ俺はなら何でもええみたいや)(・・・蔵だいすき!)


(バカップルやなー相変わらず・・・!)(つか返せや俺のめがね)






(10.12.28)