「あーもうなんでなの!」

弱か〜。もうちょっとコツ掴まんと勝てんばい」



本日の部活終了後。

蔵が日誌をオサムちゃんのとこに届けている間に、私は千歳とオセロをしていた。

オセロってあのオセロ。白と黒の。


ここ数日、うちの部室でのプチブームになりつつあるオセロ。
なんだかんだハマってて皆で代わる代わるやってるんだけど
まぁこれが千歳がすごく強い。いつも部室にいないくせにとても強い。
もしかしたらの願掛けで私はいつも蔵の名前の通り「白」を選ばせてもらうけど、 当たり前に勝てない。(当たり前か!)

ハッキリ言って頭のいい小春くんですら千歳には惜敗する。
私とは比べものにならないくらい頭のいい小春くんが勝てないんだから私が勝てるはずはない、 と少し言い訳をしてみる。



「千歳強っっっっ!!!!敵なしやん!」

「先が読める、ってセコイっすわぁ・・・」

「強すぎて話にならんな」

「いや、ていうかこれはが弱すぎたってのもあるやろ。俺でも指さんトコ指したで」

は多く引っくり返せるトコば置くけんね。あんま考えてないけん逆にやりにくい」

「えっ!多く引っくり返せるとこじゃだめなの!?」

「アホか。こういうんは先の先読んで相手の指せるとこなくしていくんや」

「え〜!!!私、白が一気に一列なるとことか楽しかったんだけど」

アホか!それ千歳のワナにハマっとるだけや!」



まんまと千歳のワナにはまっていってたのか・・・!!!!
そうとは気づかず楽しく引っくり返してたよ・・・。盤面が途中まで真っ白だったし。
でも皆の分析によると「あれはわざと」「千歳が勝たせてあげてただけや」らしい。

千歳は将棋とか囲碁は学力とは別の賢さがある。
それってただ勉強ができる人よりも凄いなぁと思う。
・・・って私、勉強もできないんだけど。。

先を読む力・・・・・・ねぇ。




「おつかれー。あ、まだ皆おったん」

「蔵おかえり」



皆で喋っていると蔵が帰ってきた。
そして皆の中心に置かれていたオセロの盤面を見て、「・・・真っ黒やん」と呟いた。







「あー千歳に勝ちたい!」



部室から出て私と蔵はいつものように喋りながら帰路についた。
コンビニに寄って飲み物を買って帰るのが最近のお気に入りだ。
学校からでて歩いて10分くらいのとこにあるコンビニに寄って、飲み物片手に今日の事を話した。



「ビギナーズラックってあると思うんだよね」



あんな惨敗しといてそう言い放った私がおかしかったのか蔵はハハハと笑った。



「確かに一瞬困ってたわ」

「あはは!」

「ある意味千歳を一番困らせた人かもしれへんなぁ」

「ねえ、蔵もいつか勝てる???」

「俺も無理。あれは千歳の得意分野や」

「ただ引っくり返すだけなのにズルイよ。角取れたし勝てると思ってた〜」

「俺も千歳に負けてばっかや。小春も強いし」

「そんな事いって蔵は小春くんにも勝ってたし、謙也に今日の私みたいなことしてたじゃん」

「あははっ、そうやっけ?」



蔵もいわゆる「先を読む能力」が長けているんだろうな。
チェス得意だって言ってたし、別物だけどオセロと通ずるものがあるよね。
千歳とは将棋の話したり、チェスの話したり、なんか楽しそうに話してるとこたまに見る。



「千歳ってばひどいんだよ。5手目ですでに勝ちは見えてたんだって」

「ははっ、そら早いなぁ」

「でも私みたいな頭悪い奴はそういうのが分からなくて降参しないから 最後まで付き合ってくれてたんだって、財前くんに言われた」

「ははは!」

「ひどいよね!」

「千歳っていうか、財前くんの口が悪いんちゃう?」

「・・・・確かに!



「今度やるときは蔵が私の味方になってね」と言うと蔵は「もちろん」と笑ってくれた。
先を読む能力がある人ってどんな世界が見えてるのかな。
すごすぎて私にはわかんないや。(でも蔵賢いから、やっぱかっこいい)

蔵も賢いから私に付き合ってくれてるのかな・・・?
「賢くなりたかったなぁ」と呟くと蔵は「の得意分野はそこちゃうからええやん」と言ってくれた。 蔵って本当フォローするのが上手いよね!

先を読んでオセロに勝てる能力・・・・ね。
ま、日常生活では使うことないだろうし気にしない気にしない!




「それにしても。頭使ったらお腹減っちゃったね」



頭使うと無性に甘いものが欲しくなる。
ああ、さっき寄ったコンビニでウーロン茶買うんじゃなかった!

しかもオセロしてたからか分からないけど、無性にオレオが食べたい・・・・!!!
あのビターで黒いカカオクッキーで白くて甘いミルククリームをサンドしたあのオレオ。




「さっきのコンビニでお菓子買っとけばよかったね」

「・・・ああ、がそう言うと思って」

「?」



蔵は急に立ち止まってカバンから何かを差し出した。
なんだろう?とよくよく見てみるとそこには。



「えー!!!!!オレオ!!!!???なんで!?」



蔵が持っていたのはオレオ。
なんで!?私今声に出してた!?

私が戸惑っていると蔵は笑った。



「お♪その感じはビンゴやな?」

「なんで!?」

の事やからもしかして・・・?と思って予測して買ってん♪
あと俺がと一緒に無性に食べたくなったからっていうのもある」



そう言いながら蔵はオレオの封を開けて私に「はい」と開け口を向けてくれた。





(蔵の先を読む力って、千歳以上かもしんない・・・・!!!!)





オセロの次の手は読める人はたくさんいると思う。だけど 私みたいな生身の人間、ルールもなにもなく規則性もないただの突拍子の気分に 対応できるなんて蔵凄すぎない?その面では千歳を遥か上回ってるよ!

少なくとも私がオセロの後にオレオが食べたくなることを予測できるのは 蔵だけだよ、と心の底から感心した。






(・・・ん。美味しい♪)(ホンマ美味しそうに食べるなぁ)(えへへ!)(それが見れるから予測楽しいねん)



そんな白石くんを選んだヒロインが一番の先見の明。(17.7.27)