「いいのかなーあんなに強引に抜けて」

「それ言うたらアカン」

「あははっ!それもそうだね」





昼下がりの授業。

普通に授業を受けていて、先生が配ったプリントの穴埋め問題をしていた。
先生が教室中を巡回していたら、急に隣の席の蔵が「先生」と近くに寄っていた 先生のことを呼んだ。

蔵が質問なんて珍しいなぁー。

蔵は基本に忠実だから「教科書を読み返せば絶対答えはある」ってよく謙也に言ってるし。 (教科書こそ問題解くときのバイブルって言ってた)(謙也は知らんわって言ってた)


そんな蔵が質問って、珍しいー。
そんなに難しい問題があったのかな?




「どないしたんや白石?先生どっか間違うとった?」



パーフェクトな蔵の質問に先生も思わずその一言だ。



「いや・・・あの。さんが気分悪そうなんで保健室連れて行ってあげてもいいですか?」





・・・・・・・はい?



今私の名前呼んだ!?





「なんや、お前気分悪いんか」

「ええっと、その・・・!?」

「さっきから我慢ばっかして、辛そうなんです先生。さん、5時間目まで頑張ったんやから、 そろそろ保健室で休ませてあげてもええんちゃいますか?」

(えええええ!?蔵、何言ってんの!?)

「白石がそう言うならそうやなぁ・・・。、保健室いってもええで」

「えっ・・・!いや、あの、えっと・・・!」

、立てる?」



蔵が強引に私のことを席から立たせる。

あまりに突然のことだったため、足に椅子がひっかかり私は一瞬ヨロめいてしまった。




、フラついてるやん!先生、俺付き添います」

「え゛っ!ちょっ、違っ・・・!!」

「頼むわ白石」






そんなわけで私と蔵は、全生徒が苦痛の昼下がりの授業を受けているこの時間、 2人っきりで廊下を歩いていた。

私たちが教室を出た後、早速左隣の謙也から「テクニックだけやない。 強引さも兼ね備えとるんやな」ってうざいメールがきた。 そのあと「ごゆっくり〜(^^)」と謙也には似合わない言葉も丁寧に添えられていた。




そして、蔵が私の手を引いて連れてきてくれた場所は保健室。






「蔵、何考えてるの?サボりなんて珍しい」

「はははっ!なーんか急にと喋りたくなってもうた」

「・・・!」

「かと言って授業中に話せるわけでもないし」

「それで保健室にきたわけね」

「そういうこと!」

「先生が出張中って事も計算に入れてたってことは、蔵・・・ 朝からこの時間に抜け出す事を計画してたでしょ」

「さっすが。お察しの通りや」

「わっ・・・・」




蔵は後ろ手でカチャッと保健室の鍵を閉めるとそのまま私のおでこにキスをした。



そして子どものように笑って、保健室のベッドに腰かけた。




「こっちおいでや」

「・・・しょうがないなぁ!」

「めっちゃ嬉しそうな顔してるやん、も」




もう此処まできたら教室に戻るなんて事考えない。
ちょっと強引だったけど、蔵が私と喋りたいって思ってくれたのは嬉しいし!

私は蔵の隣に座った。
保健室のベッドがちょっとだけ悲鳴をあげた。




、好き」

「ん・・・・・・」




蔵はそう言うと、私にキスをしてくれた。
だけど私は蔵のことをパッと離した。




「!」

「蔵、言っとくけど私学校ではそういうことしないからね」

「・・・分かったわ。まぁそこは俺も同感」

「ほんとにわかってる?」

「わかっとるって。シーツぐっしゃぐしゃにしたら、先生に怒られるの俺やし」

「・・・・・んっ」

「先生の前ではええ子ちゃんでおりたいやん」

「性格わるーい」

の前だけな」




蔵は分かっているのか分かっていないのか、私のことを そのままベッドに押し倒した。そして軽く顎を掬いあげると、噛みつくようなキスを してくれた。



「・・・・・っ・・・・・」



息が出来ないくらい、蔵は私に深く深く口付ける。
全身の力が抜けたこの時、いつも思う。
自分の体が蔵に全て操られているような、蔵に動かされているような気がする。



「蔵・・・だめだって・・・・・」

「だめって言われるともっとしたくなる」

「んー・・・」



わざと耳元でそう言うのも、もう分かってる。
(いつもより低めの声ってところがかなり計画犯だと思う)

私の首筋にまで口づける蔵。その唇の感覚がくすぐったくて私は顔を横に逸らした。
蔵は左手で私の右手をぎゅっと握ってくれた。
だから私は蔵の手を握り返した。



「あっ・・・ちょっ、くすぐったい・・・」

「・・・そんなやらしい声、どっから教わってきたん?」




蔵はそういうとニヤリと笑った。
ああもう、本当この人性格悪い。いつもは優しいくせに不意に2人になるとすぐこれだ。 綺麗な花には毒があるって言うけれど、まさしくそれは蔵のことだと思った。




、ごめん」

「えっ・・・」

「やっぱ前言撤回」

「なに・・・???」




「やっぱり我慢出来へん」

「え・・・!」




そう言うと蔵は上履きを脱ぎ棄て、ベッドの上に上がった。
そして本格的に私に覆いかぶさると、私の頬を包みながら優しく笑った。
その表情にドキッとする。





「我慢する方が無理」










(10.11.23)