「ほな帰りのHRはこれで終わりやー!放課後は委員会があるでー。お前らサボんなよー」



3年2組の教室に「はーい」という声が響く。
そう、今日は委員会が行われる日。

彼氏の蔵も、隣の席の謙也もそれぞれ保健委員と放送委員だし、 ていうか大体テニス部の皆は委員会に入っているから、 部活の時間は遅れるだけになりそうね。



「ほな、また後でな

「うん!」



私は蔵と別れ、ペンケースを持って委員会の行われる教室に行く。
教室に入るとすでに十数人が集まっていて、私はパッと皆に見られてしまった。

下級生の女の子たちが私の顔を見てこそこそと何かを話し始める。

こんなのはもう慣れっこだ。
こういう場合、大抵が「あれ白石先輩の彼女や!」って言われてるパターン。
蔵みたいなイケメンの彼女というのも、なかなか苦労するんだよね。


慣れているとはいえ、やっぱり「言われてるな」って思うのはアウェイ感を感じてしまう。 委員会は仲良しの子とも別れちゃったし、知ってる人はあんまりいないし。 誰か知ってる人が一人でもいてくれたら嬉しいんだけどなぁー。



と、その時私の目にはある人物が飛び込んできた。

あ!!!


いた!!!知り合い中の知り合いが!!!













あーあ。委員会なんて小春おらんしつまらんわ!


俺の委員会はオモロイ事を見つける委員会やっていうのに、 そもそも小春がおらんと俺がオモロない!(なんやねん!) でも、この委員会を頑張れば小春と会える。部活で一心同体できる。

後ろの方で下級生の女らがザワザワと騒いどる。


あー・・・。うっさいわ。



そんな事を考えながら、早よ委員会始まって早よ終わらんかなとか考えてたその時やった。




「ユーウージ!」

「うぉあ!?」



背もたれに体重を預け、椅子の後ろ脚2本でガタンガタンしよった俺は、 自分でも予想外の大きな声で驚いてしまい、バランスを崩しかけた。
なっ、誰かと思えば!



「なんだっ、ユウジもオモ会(※オモシロ探索委員会の略)に入ってたんだ!」

・・・っ!!なんやお前か・・・!!」



俺に急に話しかけてきた女、それはやった。
といえばテニス部のマネージャー。
そして白石の彼女。小春と仲良え。そんな奴。

なんや3-2の代表コイツか!コイツもオモ会入ってたんか・・・!?

なんちゅーか、意外・・・。


は俺に構わず、空いていた俺の隣に座ってきた。




「知り合いいないから委縮しちゃってたけど、ユウジいるなら安心だね!」

「安心てなんやねん・・・!」

「心強いでしょ??ねっ☆」



なんやねん「ね☆」って!!!!!!!!

といえば今では白石の彼女として有名や。
確かに見るからに白石とはお似合いやし、いっつも仲良さそうにしとるし、 2人とも幸せそうにしとるイメージがある。


もっと言えば白石バカ。
「あたしは蔵の彼女だけど部活に私情は持ち込みません!」って言いながら、 思いっきり部活中に白石の写メ撮りまくったりしとる。
俺が白石のモノマネしたろって思うた時、大体の白石の情報は 小春に聞くよりコイツに聞いた方が精度が高かったりする。 俺も白石のクセとか見てマネできるけどな。でも情報は大事やん?


だからといえば、完全に俺の中で「仲間」。
特別気に入ってるワケやないし、おったら楽しいし嬉しいレベル。

俺の意識としてはそんなかんじやけど・・・



「私、オモ会入るの初めてなんだよね。ユウジは何回かなったことあるんでしょ?」

「は?え・・・あ、おおお、おう・・・」

「オモロイ事するの?」

「あー・・・せ、せやな・・・」



なんやねん!

俺なんやねん!


何っ回でも言うけどは部活仲間やし、別に意識したことなんかない。
そもそも「白石のモン」っちゅー先入観があるためか、考えた事なかった。

せやけどいざと2人になると変な感じがする。(いや、2人ではないけど!)



俺は隣に座るをチラリと横目で見た。




・・・今まで全然興味なくてまじまじと見たことなかったけど・・・



コイツ、意外と可愛らしい顔しとるよな・・・・・いや、小春よりはブスやけど。
彼氏持ちやし、どことなく男に対しての余裕みたいなんがあって 気兼ねなく話しかけてくる。せやから俺も変に 意識せず話す事が出来る。いや、小春の方が話しかけやすいけど!

(そういえば女子の中でいっちばん喋るのってかも)


白石がコイツのこと大事にすんのも分かる気がする・・・
なんかコイツの動き可愛い気がするし・・・(小春には負けるけど!)
うわ、今更何思うてんねやろ俺!?
俺には小春という最愛の恋人がおるのに!!



、お前あっち行けや」

「えっ。やだよ!いいじゃん。喋る人いなくてつまんないし」

「・・・・・・なら俺あっち行く」

「えっやだ!一人にしないでよ!」



去ろうとする俺の制服の裾をキュッと掴む
・・・う・・・!!!!な、なんやこれっ・・・・・・・!!!



「数分の辛抱じゃん、お願い!」

「・・・・・んなっ・・・!!わ、分かったから離せや!死なすど!」

「えへっ、ありがとう*」



俺はこの数秒間で、何で白石がにハマるんかが分かってしまった。
アカン・・・!コイツ天然たらしや・・・!!!アカン!

普通中学生の男女いうたら思春期やん!?
触れんやん!?
なのにめっちゃボディタッチ多いやん!しかも俺彼氏ちゃうのに!
彼氏持ち特有の無意識の行動やんなぁ!?(なんやねんマジで!)



「ねぇユウジ聞いてよ!今日5時間目のオサムちゃんの授業ひどかったんだよー。」

「・・・っ!(なんやねん!顔近いわ!)」

「無茶ぶりで謙也可哀想だった。あれ絶対滑ってた」

「・・・・・っ!!!(ちゅーかまつげ長!肌白っ!ええ匂いするし!」



俺はあえて「フーン」「ほんまか」とか冷たい相槌を打った。
悪いけどの話、全部聞き流しとる。

だって・・・俺はそれどころやない。
なんか変に意識してまうやん・・・・・!!
あれ?コイツこんなに女っぽかったか・・・!?

おかしい!



もう一度をチラッと見てみる。

こいつ白石とどこまで行ってんねやろ・・・。
いや、白石の事や。もう行きつくとこまで行っとるに決まってるよな。
よく見たら、ええ体つきしとる・・・よな・・・


・・・・・・胸とか・・・小春より・・・いや、その辺の 「ちょっと男子ー」とか言う女らより全然あるし。てか、良い意味で大人びとるっちゅーか、 余裕があるっちゅーか・・・。
ぴーぴーぎゃーぎゃー言う女子なんかと違う。
めっちゃ心広いし気がつくし優しいし。嫌味じゃないし、気取ってへんし。



俺は目線を脚から腰・胸・口元・目元へと移した。

後ろに座る下級生のやつら見ても、何とも思わんけど、 見とると「女っぽい・・・」と思ってしまう。独特の女らしさというか、 思わず目に留まる色気があるっちゅーか・・・。



女らしく見えるのはやっぱり白石の存在がデカいと思う。
白石がを女らしくさせとるんやな・・・きっと。


って!いや、アカン!何考えてんねん!?
俺には小春という存在がおんねん!!!(ブンブンッ)




「あのオサムちゃんの無茶ぶりも、きっとユウジみたいに面白い人だったら 面白く返せるんだろうなぁ」

「・・・!!(今の伏せ目何やねんマジで!)」




その後、委員会が始まってそして終わるまで。
俺は隣に座るが気になってしゃあなかった。(今更やけど)

別に好きとか嫌いとかじゃなくて、なんちゅーか・・・視線を奪われるっちゅーか!
女子には一切興味ないし俺には小春とテニスとお笑いさえあればええけど。

・・・でも・・・



「やっと委員会終わったね!意外と楽しかったな、オモシロ探索♪」

「おお、おう・・・」

「この後部活出るよね?ユウジ」

「そらな」

「じゃあついでだし一緒に行こうよ♪」

「嫌や!なんでお前と行かなアカンねん!!俺の恋人は小春!!お前が隣歩くと 小春が嫉妬してまうわ!」

「あははっ。小春くんに嫉妬されるんならユウジも本望じゃない」

「そ、そういえばそうやな・・・」




アカン!俺このままコイツとおると調子狂う!
全然俺オモロない!コイツとおるとオモロいことできんようになる!

俺は、しぶしぶの隣を歩いて部室に向かうものの、そんなことばっかり考えてた。




「あれ!?にユウジやんか!お前ら何で一緒におんねん!?」

「あ、謙也!」



ちょうど昇降口で、放送委員会終わりの謙也と鉢合わせた。
あ、なんか安心したわ・・・。これでの存在に意識がいかんようになる・・・!



「ユウジと委員会が一緒だったの。だから一緒に向かってるとこ!」

「へぇ〜、なんやめっずらしいな。お前ら2人て」

「そう??」

「お前ら2人だと何の話するん??全然想像つかへんけど」

「謙也が5時間目に滑ったんだって話したよ!」

「な゛っ!!おまっ・・・!あれは不慮の事故や!オサムちゃんの振り方が悪い!」

「どうだか。だって同じ事されてもユウジだったら面白く返してるよ。ねっユウジ」

「おっ・・・おおおう・・・!!そ、そうやな」

「ん?なんやねんユウジ。お前。なんか固いで」

「はぁ!?やかましな!普通や普通!!!俺が変なのは小春がおらんからや!ボケ!」

「あははっ!ユウジは小春くんがいないと、ほんっと機嫌悪くなるよね。 だから早く部室行こうよ」

「せやな。スピードは大事やで」




俺がキレるのもふんわり返して、は笑う。
ななっなんやねんこの返し方!
ホンマええ加減にせぇや!この余裕のあるリアクション!!


アカン。なんか自分がおかしい。

が可愛く見える・・・・・・・!!!!


俺は「小春!!!早よ俺んとこにきて!」と心の底から願った。
小春がおらな、俺の気持ちがブレる!

と、その時やった。




「お、にユウジに謙也やん」

「白石!」「白石!?」「蔵だ!」




同じく部室へ向かう途中だった白石に遭遇した。
白石を見た瞬間に、なんか罪悪感がして俺はちょっと強張ってしまった。

白石は俺のことをチラッとみると、はてなを浮かべた。




「白石知っとったか?とユウジ同じ委員会なんやって」

「あ、そうなん??」

「オモ会、超アウェイだからほんとユウジいて助かったよ!」

「へぇー。謙也もオモ会入っとったらえかったんちゃう?」

「?何でや」

「今日5時間目滑っとったし、オモロイ事探したほうがええんちゃうん?」

「お前もそれ言うか!!!」




うっわ、白石が現れてからのの表情、

いつもよりも意識して見てみると全然ちゃうんやな・・・!!!


ホンマに嬉しそう。白石の事好きなんやなって思う・・・!
俺らに向ける笑顔とはまた別の種類の笑顔って思う。
人のクセを見抜く事に長けている俺の目からすればすぐに分かる。



そんなを見てると、小春とはまた違った意味で「可愛い」って思ってしまい


俺は顔が熱くなった。




「きゃー!怖い!ユウジ助けて!!」

「っ!?」



にそのつもりは一切ないと思うが、きゃっきゃと騒いで俺を盾にしてが俺の背中に隠れる。
触られた事によりドキッとしてしまう。うわっ、アカン!
絶対俺の顔赤い!!!



(・・・・・・ん?ユウジ・・・?)



なんやねん!マジで!俺にくっつくな気持ち悪いわ!

俺を挟んでと謙也がじゃれあっとる。けど俺はそれどころやない・・・!!
俺の腰辺りをきゅっと掴んどるが・・・アカン!!
・・・と、俺が初めての感覚にあたふたしていたその時やった。



(・・・!!)



不意に白石と目があった。
なんかめっちゃ気まずい!!アカン、これはもうアカン!



「あ゛ーーー!やかましいねんお前ら!俺から離れろや!死なすど!!!」

「ユウジの言う通りやで。謙也、あんまにくっつかんといてくれるか」

「せやかてコイツ!人の滑りをペラペラと・・・!!」



なんとか白石が仲裁して、と謙也は俺から離れた。
そしてまた普通に歩いて部室に向かった。

・・・今日の俺、なんかおかしいわ。変なモン食ったか?
いや、が悪い。せやっ、が悪いんや!!



「ごめんな、ユウジ。困らせてもうて」

「(白石・・・!)お、おおおう・・・別にええし」



白石が俺の隣に並んで謝ってくれた。
と謙也は俺と白石の前を歩いている。俺と白石は前で 謙也の顔を見上げて話すの横顔を見ていた。

白石はそのの顔を見てふわっと笑う。
あ、コイツほんまにの事好きなんやなって思った。

なんちゅーか、白石ってと話すときだけ声のトーンが微妙に違うし。
(モノマネすんのが結構ムズいねん)



「でもなユウジ」

「?」



白石はの方を見ながら俺の名前を呼んだ。
なっ・・・なんや・・・




「あんまりの事意識して見んといてな」

「!!!!!」




白石は、めっちゃSな顔して俺に視線を向けそう言った。
さっきまでの顔はどこにいったんやコイツ!




「じゃないと、ユウジがオモシロ探索しても全然オモロないような事、起こるかもしれへん」

「!!!???」







(こっ、小春!!!大変や!俺白石に殺される!) (何やったのユウくん!)


(10.9.7)