「おう!いいぜ。じゃまた明日なー」




「・・・・・・裕太、電話してたの?」

「うわっ!?なんだ兄貴かよ・・・悪ぃーな、ドア開いてたのか・・・」

「明日もどこか行くのかい?」

「まぁーな。・・・って、兄貴には別に関係ないだろ」

「昨日も出かけてたよね。最近誰と出かけてるの?彼女?」

「い、いねーよ!っていうかそれも関係ないだろ、おやすみ!!」












「・・・・・・・・っていうわけで怪しいんだ」

「は〜なるほどな〜」

「それは裕太くん絶対絶対彼女がいるね〜」



朝、不二先輩がすごく不安そうな顔しながら夕べの弟さんの話をしだした。

それはもう世紀末みたいな顔して心配してて、この人本当に弟大好きだなって思った。
一緒に話聞いてた桃先輩や英二先輩や大石先輩と乾先輩は楽しそうに聞いてた。
俺はラケットのグリップ巻きながら話半分で流し聞きしてたけど。
・・・・・あの発言を聞くまでは。



「ってか不二先輩の弟ってルドルフの寮に入ってなかったっスか?」

「寮の一部が改装するとかで今実家に一時的に帰ってきてるんだ」

「へえ〜。じゃあ俺も遊びに誘ってみようかな!ハハハ!」



「でも不思議だな、裕太くんなんでそんなに出かけてるんだろうな?」

「確かにそっすね〜」

「僕もそれが気になってね・・・・・。だから朝支度するときに裕太の携帯をチェックしたんだ」

「!?!?!?」


「チェック!?」


「え、裕太くんの携帯の中見たの!?不二!

「そうだよ」

「やってる事がタチの悪い彼女っスね・・・・」


「で、不二。裕太くんの携帯を覗いて何かわかったのか」

「・・・うん。分かったよ」

「え!?わかったんすか!?・・・・・なんかちょっと気になるな・・・」

「どうやら裕太は・・・・・・・・」


(・・・アホらし・・・。コート行こ・・・)



不二先輩の弟、大変だね。
俺はさっさとテニスしたくてあくびしながらラケットを抱えて部室を出ようとした。

すると、その時だった。




「ウチのと連絡とりあってるみたいなんだ」




・・・・・・・・!?!?




不二先輩の一言に俺の足は止まった。
なぜならとはそう。




「は!?ってうちのマネージャーのあのっスか!?」

「うん。そうだよ・・・」

「確かに裕太くんとは中学1年の、まだ裕太くんが青学に在籍していたとき同じクラスで 仲が良いみたいだったが・・・」

「ルドルフ行ってからも連絡とってたのかー!のやつ!」


「っていうかそれよりもといえば・・・」


「越前、お前の彼女じゃねーか!」




そう、俺の彼女は1つ上の先輩の先輩。俺は先輩って呼んでるけど。
急に出てきた彼女の名前に驚きが隠せない。

俺も知らないっスけど・・・・・・・!!!




「・・・ねえ越前。そっちのがウチの裕太をたぶらかしてるんじゃないかって心配なんだ」

「!」

「何か知らないの?」

「初耳っスよ・・・。ていうか、先輩のこと誘ってんのはそっちの裕太さんなんじゃないッスか」

「僕と出かけるのは渋るのにとは頻繁に出かけてるみたいだよ最近」

「・・・!」




「これは決まりだな、不二」

「ああ。決まりだね」

「なんすか」


「越前、今日の部活が終わったらを尾行するよ!」

「・・・・・!!!!!!」






ノリノリの乾先輩と不二先輩に言われて強制的に尾行することになった。

態度には出さないけど部活中、俺はそのことで頭がいっぱいだった。
考えたくもないのに考えてしまう・・・


・・・え、先輩が俺に黙って不二先輩の弟とデート?
先輩はそんなことするよーな人じゃないしそんな器用じゃないと思う。

でも弟さんの携帯に遊びに行く約束がここ数日あったのは確かだ。
確かに言われてみればここ最近「用事があるから先に帰るね」って言われてたような・・・
全然気にしてなかったけどあれはデートに行ってたって事・・・???



・・・っていうかよく考えたら弟さんと仲良かったとか知らないんだけど。
同じクラスだった?未だに連絡とってて仲が良かった?

・・・・・・・なーんか面白くないよね・・・・・・・・・




俺の知らない先輩を見たようで、なんか心の中がそわそわする。
これでもし本当に裕太さんと浮気とかしてたらどうしよ・・・
いや、もしかしたら本命があっちで俺が浮気だったり・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・


(笑えない・・・!)








その日、あっという間に部活は終わった。

乗り気ではなかった俺もやっぱり先輩のことが気になってついていくことにした。
いややっぱり気になるでしょ・・・。なんで俺じゃなくて裕太さんのとこにいくの。



先輩は今日も「寄るところあるから先帰るね!」と言ってそそくさと帰った。
「行くよ!!」と不二先輩に力強く言われ俺(と桃先輩と英二先輩と乾先輩と大石先輩)は 先輩の後を尾行した。



先輩は部活の後だというのにダッシュで街中に入っていった。
そして青春台のコンビニのあたりで裕太さんと待ち合わせてたらしく2人で親しそうに再会。



「裕太・・・・!なんで僕とは出かけてくれないのにそんなに楽しそうなんだ・・・!」

(・・・。)



2人はすごく楽しそうに話しながら移動。
そして何か携帯を照らし合わせながら洋菓子店に入っていった。



「ケーキ屋さんに入っていったぞ???」

・・・・・裕太の胃袋を掴んでるのかい・・・???」

「なるほど、ケーキを食べながらデート、か・・・。」

「おいおい越前、マジでやべーんじゃねーか・・・???」



言葉が出てこない。
先輩がそんなことするような人じゃない、何か事情があるんだとは思いつつも
心のどこかでは取られてしまうんじゃないかと恐れている自分もいた。


確か先輩、甘い物とか好きなんだっけ・・・・・

知ってはいたけど俺がテニスしてるばっかで全然付き合ってやれなかったし
デートとかもそんなにしたことなかったから・・・・・・・・
だから裕太さんと・・・・・・?????辻褄が合いすぎるんだけど。



「もう我慢できない・・・行くよ越前!」

「え!?」

「我慢できないって・・・早すぎっスよ不二先輩!!まだ店入ってすぐっスよ!?

「なんで2人が一緒にいるのか、頻繁に会ってるのか説明してもらわないと 僕が納得できないよ!!」

「エエーッッッ!!」

「行くよ越前!!」




半ば強引に不二先輩に腕を引っ張られ、俺はケーキの屋の中に引きずり込まれた。




「裕太!!」



ケーキ屋さんの奥にあるカフェスペースまで入っていくと、そこには先輩と裕太さんが 2人で向かい合って楽しそうに座っていた。 突然押しかけてきた俺たち(主に不二先輩)に2人は「兄貴!?」「不二先輩!?・・・にリョーマくん!?」 と驚いていた。



「!?!?なんでリョーマくんが!?ていうか先輩たちも・・・!!!」

「兄貴!!それに青学の・・・越前も!」

「なんでみんながここにいるの!?えっ!?」



「それはこっちのセリフだよ・・・・・!!なんで僕の裕太と・・・!!!」

「いや俺は兄貴のじゃねーよ!」

「キミは越前っていう人がいながらなんで裕太とデートしてるんだ・・・!!」




俺も色々問い詰めたかったけど、思いのほか不二先輩が取り乱してるからか冷静でいられた。 そして不二先輩が聞きたい事全部言ってくれるから俺の出る幕はなかった。

でもそれがかえって無言でその場にいることになってしまい、 先輩が無言な俺を見てすごく焦ってアワアワしているのが分かった。




「ごっ誤解だ兄貴!落ち着いてくれ!は・・・」

、この場でハッキリさせてくれないかな。越前なのか裕太なのか」

「兄貴!!だから違うんだってこれは・・・・・・・」

「裕太、全部話すよ私から・・・!!隠したほうが変な誤解を生んじゃう」




先輩はすごく申し訳なさそうな顔をして俺たちに頭を下げた。



「ごめんなさい!不二先輩、裕太くんを巻き込んでしまって」

・・・」

先輩・・・??」

「リョーマくんもごめんなさい!!リョーマくんに内緒で裕太とずっと会ってて」



「・・・・あ、いや・・・。何があったのか説明してくんない?」




俺がそういうとは正直に話し始めた。




「・・・・・実は、・・・・・・・・・・・・もう少しでリョーマくんの誕生日が近いから その日にリョーマくんに美味しいケーキを食べてもらおうと裕太に美味しいお店探しに 付き合ってもらってたの・・・!!!」


え・・・・・・・!!!!!!!!



「越前の・・・・・・誕生日!?」



「俺の・・・???」



「うん・・・!!!」

「俺も今年は実家に帰るから家族でクリスマス過ごすし、美味しい店のケーキ差し入れようと思って 探すのに付き合ってたんだ」

「こんなに頻繁にケーキ食べても喜んで付き合ってくれる友達が裕太しかいなくて 裕太にお願いしてたんだよね・・・日曜日とかはしごしてたから・・・」

「なるほど。それで裕太くんを・・・」


「ごめんなさいリョーマくん・・・!」




先輩は俺にもう一度頭を下げた。
本当に申し訳なさそうにしてた。


なんだ・・・俺の誕生日のためにリサーチしてただけなのか・・・・・・・・・

可愛らしすぎる理由に拍子抜け。


っていうか・・・・・


俺の方が申し訳なくなってきた。





「あの先輩、逆にごめん。なんか・・・せっかくの計画台無しにしてしまって・・・」

「いいのいいの!黙ってた私が誤解生むようなことしてただけだし!」


「・・・良かったら兄貴たちも一緒に食べていかねーか?」

「ここのお店本当に美味しくて日曜日も来たんだよ。ここが1番だねって」





なんだかんだでその後俺たちも一緒にケーキを食べて帰った。
不二先輩も安心したのかいつもの穏やかな先輩に戻ってた。

そしてその帰り道は先輩と久しぶりに一緒に2人で帰った。





「今日はごめんね。リョーマくん・・・」

「別に気にしてないけど」

「リョーマくんに美味しいケーキ食べてもらって最高にいい誕生日を迎えて欲しかったのに・・・ 結局一足早く今日一緒に食べてしまったね」



先輩は笑った。
その笑顔にちょっとだけホッとした。



「・・・ほんと、不二先輩の弟とのデートじゃなくて良かったよ」

「え?」

「別に俺も食べれるし。今度からは俺にまず言ってよね」

「ぷっ、何それ。それじゃあリョーマくんを驚かせれないじゃん」

「驚かさなくていいから。ていうか十分今日驚いたから」



「・・・」


「すっかり忘れてたよ、誕生日」

「!」

先輩が覚えててくれるから思い出した」

「・・・リョーマくん・・・!」

「当日だけど、部活もないし休みだからどっか行かない?」

「・・・うん!!」

「今日のケーキ美味しかったからまた食べようよ」

「・・・いいの!?!?」

「いいの!?って・・・先輩の誕生日みたいな口ぶりだね」





先輩が自分のことのように色々考えてくれるから俺も楽しいよ。
今年の誕生日・・・・・・・・なんか楽しみになってきたな。










リョーマの誕生日ということは12月なのに3年生が部活参加してたりして 時系列が謎でごめんなさい。兄貴はカゴプリっぽい性格になってしまいました。(18.12.10)