「リョーマくんは可愛いね!」
「連れて帰りたいぐらい可愛い!」


いつも先輩にそう言われている俺。
可愛いって言われるのは嫌われてはないんだろうけど、でもやっぱり男だしかっこいいと思われたいよね。 っていうか俺可愛くはないからね。先輩はそのへんを分かっていない気がする。
いつも先輩を目で追ってて、可愛いなと思ってた。可愛いねと言いながら俺の事撫でてくるけど、 そのたびにドキドキしてた。先輩の方が可愛いよってね。

近くに寄られたときの先輩の甘い香りも、楽しそうな笑顔も好き。



「リョーマくん、ほんとに可愛いね」

「どもっす・・・」

「身長も小さくて可愛い」

「・・・先輩と4cmしか変わらないじゃないっすか」

「でもまだまだ私がリードしてるから!」

「いい加減可愛いからレベルアップしたいんスけどね」



俺がそう言うと先輩は「そう言われてもなぁ」と困った顔をする。
「リョーマくんが可愛いのは事実だからレベルアップといっても」と悩んでる。

なら可愛くない一面も見せてやろうかな。


俺の心に悪戯心が芽生える。
今俺が予想外の行動に出たら先輩はどんな顔する??
知りたいな。先輩の反応が知りたい。

先輩の顔の横にゆっくり右手をついて、先輩を覗きこむように顔を傾ける。
先輩はさっきまでの無邪気な顔から一転、目を丸くして俺の顔を見る。

その動揺してる隙をついて顔を近づける。先輩は咄嗟の俺の行動に目を瞑る。
でも俺は唇と唇が重ね合う寸前で止めて。



「あれ?今キスされると思いました?」

「・・・!!!」



先輩の甘い匂いが鼻をかすめる。この人を壁と自分で閉じ込めているから余計に。 今先輩は俺の事なんて思ってるかな?可愛い?それとも生意気な後輩?
もう一度顔を近づけて、今度は先輩も「ちょっとリョーマくんっ」と顔を逸らそうとする。 でも俺は左手で先輩の顎を掴み、そのままキスをした。



「・・・・・んっ・・・・・・!!」



先輩の足の間に自分の脚を入れて先輩が逃げれないようにする。
先輩もそれに気づいて俺の胸に手を当てて抵抗しようとする。でも俺も逃がさないよ、 重なる唇の角度を変えて無理やり先輩の舌と自分の舌を絡める。 後ろが壁だから逃げれないでしょ?

先輩は苦しそうに、でも時折色っぽく甘い声で息を漏らす。
それが俺の耳にやたらまとわりついて心地いい。俺の胸を押し返す力が弱まった。
クチュ、というキスの音がやたらやらしいのは俺が先輩をこうさせているからだろうか。 ねえ先輩、これでも俺を可愛いとか思っちゃう?



唇を離せばお互いの口を結ぶ銀色の糸。
先輩は長いキスのせいか肩で息をしていた。その様子がたまらなく色っぽかった。



「これでもまだ俺を可愛いと言うんスか」

「はぁ・・・はぁ・・・」




すると先輩は「・・・・・なんでこんなことするの」と小さくいった。
「好きだからっスよ、」と俺が言うと顔を真っ赤にした。可愛いのはそっちじゃん。



「早くそう言ってくれれば・・・・・・・・・私だってリョーマくんの事好きだから、 こんな始まり方なかったのにっ」

「・・・!へえ、先輩も俺の事好きでいてくれたんだ。嬉しいね」



目の前で照れながら言う先輩が可愛くて、俺は笑ってしまった。
それを見た先輩は「・・・やっぱりリョーマくんは可愛いんだよ。こんなひどいことしといて 笑顔なんてずるいじゃん、許しちゃうよ」と抵抗の一言。
ということは可愛いは愛情表現だったのかな?
全くこの人は素直じゃない。俺も人の事言えないけどさ。



「可愛いだけじゃなくて、たまにはこうやって狼になるっスよ」

「・・・・・!」



「俺も男なんで。」




俺がそう言うと先輩は「十分わかりました・・・!」と顔を真っ赤にして俺の手を振りほどいた。
そして「次はちゃんとしたキスにしてよね」と恥ずかしそうに言って俺の前から走り去っていった。



狼なリョーマが書きたかった!(17.9.19)