!」

「・・・あ、寿三郎。やっほー」



次の授業は実験のため、理科室に移動していたら廊下で彼氏である寿三郎に遭遇した。

クラスが離れているとなかなか会わないからこういうの、なんか嬉しい。



今から移動?」

「うん。理科室だよ」

「そっか」

「なんか久しぶりに会った気がするね。最近部活も忙しそうだし」

「ほんまやねえ」

「あっ、でも寿三郎が真面目に部活に出てる証拠か」

「ははは。そうなるねえ」

「えらいじゃん」

「せやろ」


「じゃあ私行くね。今日も部活だよね?」

「あ・・・うん」

「試合は確か・・・今週末だよね!絶対見に行くから。じゃあね」


「・・・・・・・・あっ、。待って」




ん?

私が行こうとすると寿三郎に呼び止められた。

どうしたんだろう?



寿三郎はちょっと焦った顔をして周りを見てからこっそり 口元に手をあてながら私にこう言った。




「あのさ、昼休みに体育館の裏これる?」

「えっ?」

「待ってるから。じゃ!」




それだけいうと寿三郎は笑顔で去っていった。

・・・・・え、体育館裏?
告白されるみたいなノリで言われたけど・・・・・・・
でも私と寿三郎もう付き合ってるしなぁ・・・一体なんだろう。








昼ご飯を食べた後に私は席を立った。
友達に「、どこ行くの」って聞かれたけど「呼び出し」と答えて体育館裏へ向かった。

何話されるのか気になりすぎて授業とか全然入ってこなかった。
なんか悩み・・・・・とかかなぁ。


寿三郎、ああ見えて結構繊細だし抱え込みそうだからもしそうなら心配だけど・・・・・

・・・・まさか別れ話とかじゃないよね・・・・・・・・!?






「あっ、こっちこっち♪」





寿三郎だ。もう来てたんだ。

私は壁からひょこっと顔を出している寿三郎が手招きをする方へ小走りした。
寿三郎、ちゃんと笑顔だしいつも通りだ。
深刻な話ではない・・・・・・・かな?


寿三郎のいるところへ近づいた。





「急にどうし・・・・」




何で呼び出されたのか聞こうとしたら急に寿三郎に抱きしめられた。
ぎゅううううって音が鳴りそうなくらい、私の体が寿三郎に取り込まれちゃうんじゃないかってくらい。



「!?じゅ、寿三郎どうしたの?」

「・・・えーからえーから」



・・・なんかものすごく抱きしめられてる。
やっと離してくれたと思ったら、またまた抱き寄せられる。
寿三郎の大きな体にすっぽり埋もれてしまった。




「・・・・・のいい匂いやぁ・・・」

「あの、寿三郎・・・どうかした・・・・・?」

「・・・・・しばらく会えんかったやんー」




ああ、そういうことか・・・・・・・・!

確かに部活を真面目に頑張ってるときは全然会えなかったもんね。




「ここなら大丈夫かなって」



てへへと可愛く笑う寿三郎。




「なんでってこんなに柔らかくて気持ちいいんやろ〜」

「え、そうなの?」

「兄ちゃんとプロレスしたとき組み合う事あるけど全然ちゃうよ。癒しやね」



まるで抱き枕のようにぎゅっと抱き締めて私の肩に顔をうずめる寿三郎。
寿三郎のふわふわした髪の毛がちょっぴりくすぐったい。
なんだろう、大型犬に思いっきり懐かれてるようなこの可愛さは・・・!

「ありがとね」と眩しいくらいの笑顔でお礼を言われ私は解放された。
ただただ寿三郎に抱きしめられて、私も久しぶりだったからなんか嬉しくて
それでお礼言われるなんて変な感じ。

私は寿三郎の隣に座った。





「ほんとに久しぶりな気がするね」

「気がする、じゃなくて久しぶりなんやって。
練習中は思わんけど、帰った頃になーんか疲れた感じがあったんよ」

「そうだったんだ」

「原因は特にわからんかったけど、今日久々にの顔見てコレや!!って」



めちゃくちゃ可愛く笑う寿三郎。
「我慢できんかったわ〜」って照れながら言ってるのがめちゃくちゃ可愛い。

寿三郎の生活に「必要とされている」みたいでめちゃくちゃ嬉しいじゃない。




「・・・・・・なぁなぁ」

「ん?」

、あの、、、嫌やったら絶対せんけどその、、、、、今」


「・・・?」


「チューしていい?」





小声でそう言われたので私は寿三郎のほっぺをツンとつついて見つめた。
寿三郎は大きな手を私の頭の後ろに優しく添えると、そのままキスをしてくれた。

唇が離れた後、「ちょっと物足りない」みたいな顔をする寿三郎がめちゃ可愛くて
私は思わずニヤけてしまった。(なんでこんなに目がきゅるきゅるしてるんだろう・・・)

もう一度キスしようとしたのか寿三郎がまた顔を近づけてきたけど
予鈴のチャイムが鳴り響いてそれは阻止された。




「あら、もう戻らないと」

「え〜〜〜離したないなぁ」




今度は後ろから腰に手を回されて抱き締められた。





、ホンマにありがとね」

「ううん。私も嬉しいから」

「・・・・・・・俺、頑張れる」





こんなに可愛いのにテニスしてるときはめちゃくちゃかっこいいなんてズルいな寿三郎。
試合頑張ってね。今週末がとても楽しみになってきた。

もし優勝できたら試合が終わってすぐ思いっきり抱きしめてあげたい。
寿三郎ならきっとできる。だから信じて応援するね。



5時間目の授業中、彼が安心した表情を浮かべて爆睡しているなんて知らず
校庭を眺めてそう思っていた。





寿三郎は甘えるのが絶対うまい(21.5.6)