When did you

  kiss last time?


(最後にキスしたのはいつ?)









「知ってる〜〜???!」

「ん??どしたのジロちゃん」




練習の合間にジローがニコニコしながらに話しかけた。

練習中は誰もが集中しているため笑っているのはジローだけだ。
跡部に見つかったら絶対怒られる・・・と思ったはこっそり聞くことにした。




「唇の代謝ってね、体のどこの部分よりも早いんだって!」

「???」

「大体10日で唇は代謝で生まれ変わるらしいよ〜」

「・・・え、そうなの?」

「そーみたい!は最近跡部とチューしたー???」

「ブッッッッ」




無邪気な笑顔でそう言ったジローの口をは思いっきり抑えた。
なぜなら跡部とが付き合っていることを知っているのはレギュラー陣だけであって 他の多くの部員たちは知らないからだ。 (しかも最近まで黙ってたが跡部は隠すつもりがなく会話からポロッとバレたらしい)



「ジロちゃーん・・・!!!!!そういうことはあんまり言わないでね・・・!?」

「えーなんでー。いいじゃん。悪いことしてないんだしぃ」

「そ、そうだけど・・・!今部活中だからそういうプライベートな話は・・・」

「跡部とチューしてないの??」

「ジロちゃーん!!!!」




その瞬間コートの向こう側にいた跡部から「とジロー!!!喋ってんじゃねぇ!」と 怒号が飛んできた。は「ほら、怒られたじゃん。練習中だよっ」とジローを諭したが ジローは跡部の注意などお構いなし。マイペースに話をつづけた。




「10日たったらまたファーストキスだよ。ロマンチックじゃない??」

「・・・そういうもんかなぁ」

「じゃあ俺も今とチューしたら10日後にはチャラってことじゃん!?」

「しないからね」

「いいなぁー跡部はー。とチューできて」




はジローにそう言われて気づいた。



(そういえば最近跡部とキスしてない・・・!!!)




練習試合やら全国大会やらのスケジュールに加え、自身の学校生活のテストや模試で 忙しくしていたため忘れていたが彼氏である跡部とキスをしていない。
最後にしたのはいつだったっけ、先週・・・はないな、えっ待って今月入ってしてないとか・・・?と 顎に手を当てながら「うーん」と考える。

跡部はとてもスマートな男子だ。
帰り際にサラッとお別れのキスをしてくれたり、こちらが生徒会室にいる跡部に スケジュールの確認をしに出向かえば2人きりというのをいいことにキスを サラリとしてきてドキドキしたり。



(でも最近忙しくてそれもないなぁ・・・これってまずいことなのでは・・・?)



ジローの言う10日なんてとっくに過ぎている。
急に危機感を覚えたはチラッと跡部の方を見た。




(いけないいけない・・・!今は練習中!)













、この前頼んだ部員の1週間分の分析結果はまとめているか?」

「あ!うん。終わってるよ、ハイ」

「さすがだな」




練習後。跡部に頼まれた資料を渡すと跡部は「助かるぜ」とお礼を言った。
跡部は何事にも手を抜かない。だから部員たちのこともしっかり見てる。
だからこそも含めて部員たちはこの人についていきたいと思ってしまうんだろう。

そんな跡部の隣にいられることは本当に幸せな事だ。
だからこそも隣にいて欲しいと思われるような努力を続けなければならないといつも思っている。


・・・・はずなのだが。




「しかしザッと見る限り最近はどいつも頑張ってるな・・・資料からも・・・・・・」


(・・・・そうだ、先月の初旬くらいからキスしてない!!!)




はキスの件が気になっているようだ。全く話を聞いていない。
つい跡部の唇を見てしまった。






「・・・どうした?。俺の顔になんかついてんのか?」

「えっ!!!!あっ、いや、別になんでも・・・」


「そうか。・・・俺はやりたいことがあるからもう少し残るが・・・はどうする?」

「・・・え」

「もう少し待てるんだったら一緒に車で帰ろうと思ったんだが」

「・・・!!!うん、跡部を待つよ」

「そうか。俺もそのつもりだ」

「じゃ、じゃあ私、お茶淹れてくるね!」

「ああ」




跡部が一緒にいようと遠回しに言ってくれるのが嬉しい。
は嬉しそうにしながら紅茶を淹れる準備を始めた。

淹れたての紅茶を跡部に差し出すと、跡部は「いい香りだな」と喜んでくれる。
ただ待つだけでは退屈してしまうが、仕事をする跡部を待つのは嫌いじゃなかった。
はソファに腰かけながら嬉しそうに跡部を見つめる。




(・・・最近こういう時間も・・・・・そういえばなかったなぁ・・・)




跡部とは毎日会っているが、それは「部活で」会っているだけだし 「他の部員も」一緒にいることが前提。2人きりになったとしても部活の話で決めることが山ほどあるし 会話がほぼテニス関連の話。2人でデートもこの2か月の間はなかった。



(キスしてないことも忘れてるほど・・・バタバタしてたのね)



「・・・・

「ん?」



「お前最近疲れてんじゃないのか」

「えっ」




跡部がこちらを心配そうに見ている。




「なんで?」

「この2か月ほどお前への頼み事が多かったからな」

「そうかな?跡部ほどじゃないよ」

「先週・・・だったか。毎日のように部室で資料作る途中で居眠りしてただろ」

「・・・・・あはは」




そうそう。この資料作るのも大変で、部活の後に資料まとめるためにパソコンに向かっていたら いつの間にか寝ちゃってた、みたいなことがあったっけ・・・!は跡部に心配をかけてしまったと 反省した。自分よりもはるかに色んな事をしている跡部に心配されるのは嫌だったからだ。



「・・・ねえ跡部」

「ん」

「最近忙しくてこんなにゆっくり喋れなかったね」

「・・・・・・そーだな」




跡部は目を閉じて背伸びをした。跡部もまた、今の時間はリラックスしてるようだ。




「デートもなにもしてなかったな」

「うん」

「フン、なんだ。寂しそうじゃねーの」

「・・・・・・・・うん」

「・・・!」




が少しだけ寂しそうな間を開けて返事すると、跡部は目を丸くした。
しかしすぐに立ち上がりの横に座るとの腰に手を回した。
ソファが2人分の重さで先ほどよりも少し沈んだ。



「・・・・・・・今日気づいたの」

「アーン?」

「私、跡部と2か月くらいキスしてなかったなって」

「・・・!」



すると跡部はの顎を掬うと優しく唇に口づけた。

あまりの行動の早さに今度はが目を丸くした。



「2か月・・・・・・ねえ」

「そう。今日ジロちゃんと話してて気づいたの。忙しさで忘れてたけど してないって考えた途端ちょっと悲しくなっちゃって・・・」

「ほう・・・」

「・・・・・え?何そのリアクション」



跡部はの話を聞いて少しだけ笑ったのだ。
今の話のどこが可笑しかったのだろうか。は跡部に聞いた。



「キスするのは2か月ぶりだと思ってるのはお前だけかもしれねえぜ?」

「え!?」



「部活後にここで居眠りしてたお前を起こしてやってたのは誰だ」

「・・・・・跡部」

「そうだ」


「っっっっっもしかして!!!!!」





は両手で唇を触った。

跡部はニヤリと笑って「そういうことだ」と笑った。





「はーーーーーー何それ!ちゃんと私が起きてる時にしてよ!」

「お前が寝なけりゃいい話だ」

「なーんだ!じゃあ10日に1回以上ちゃんとしてたんじゃん・・・もうっ。ジロちゃんめ」

「10日に1回?何の話だ」

「あ、今日ジロちゃんに唇の代謝は10日程度だから10日以上たったらそれはファーストキスだよみたいな 話をされてね!?私ちょっと焦って・・・・」




「・・・・ほう。なら、」





跡部はを挟むようにソファに手をついた。より深く腰掛ける形になったは跡部を「え!」と 見上げた。跡部はそのまま顔を近づけて耳元でにこう囁いた。





「その唇、代謝が追いつかねぇくらいキスしてやろうか」





「!!!!!!!!!!!!!!!!」





「ちょっとまって跡部!」という言葉が遮られ、2人の唇が重なったのはその数秒後の事。





(18.8.15)