「日吉くん、私好きみたい」



「は?」と呆れてこちらを見る日吉くんの顔はいつも以上に額にしわが寄っている。
ただいつもと違うのは、いつもなら顔すらこちらに向けないのに向けてくれたということだ。



「好きって、日吉くんのことじゃないよ」

「・・・・・・・・でしょうね」

「あれっ??わかるの?」

「わかりますよ。どうせ跡部さんでしょう?」



どうやら日吉くんにもバレてるくらい私はお花畑全開だったみたいだ。



「なんでわかったの???」

「前は跡部さんに対しても雑だったけど、最近のさんはふとした瞬間でも跡部さんの事見てますよね」

「見てた!?私そんなに見てた!?」

「喋ってるときは普通ですけどね」

「え〜〜〜????」

「例えば昨日、バスの手配する相談をしてた時とか顕著でしたね。
会話が終わって跡部さんがその場を去った後、背中見つめてましたよね」

「無意識!!!でも見てたかも」

「それでもちゃんと部活中の部員に対する態度の差がないのは認めますけど。」

「そっかー。日吉くんよく見てるね」

「っ!!べ、別に偶然目に入っただけです・・・!!」



私は跡部が好き。

でも跡部はモテるし、マネージャーの私が好きだなんて周りに知れたら大変なことになる。
だから跡部のこと好きなのは本人には言わない。ずっと黙ってるつもり。

でもずっと黙ってるのはなんだか落ち着かない。
だから部内で一番口が堅そうな日吉くんに一方的に喋ってるの。
日吉くんは迷惑だろうな。でも、悪態つきつつもちゃんと聞いてくれる。優しい。
薄々跡部には伝えれないって分かってくれてるのかな。だから聞いてくれてるのかも。




「跡部ってさ、部員に対する指導は厳しいし口も悪いけど私には結構優しいんだ」

「へえ」

「今日みたいに暑い日が続くと"ちゃんと休めよ"とか、声をかけてくれるの」

「・・・」

「あと部活中もね、私が見学の女の子に呼び出されてたりするのもよく見てるの。
"さっき呼ばれてたのは大丈夫か"って。選手がよく見えるスポットはどこか聞かれただけなのに、 やっぱ嫌がらせする人もいるかもしれないって心配してくれてるんだよね。ありがたいよ」

「よく見てるんですね」

「跡部様ーーーってキャーキャーされてる理由がよくわかる。
イケメンなのはもちろんだけど・・・跡部はすっごく努力家だし中身もかっこいいよ」

「・・・なんとなくわかります」



「跡部は"、些細な事でもホウレンソウは欠かすな。俺を頼れ"って言ってくれるの」

「ホウレンソウっていうと報告・連絡・相談ですか」

「そう!それだけでかっこいいんだけど"俺もお前にホウレンソウを欠かさない。俺もお前を頼るぜ"って いってくれるの!人としてちゃんと信頼されてるし、跡部ほどの人に信頼されてるのが もうヤバイよね。なんていうか・・・マネージャーやってて良かったー!!!って思うし。 これで好きにならない人なんているかな???」

「フン、跡部さんらしいですね」




日吉くんは呆れつつもちゃんと聞いてくれてるしちゃっかり同意してくれる。
やっぱり日吉くんも跡部のこと、尊敬してるしよく見てるんだなぁ・・・




「でもさすがに跡部に対するこの好きな気持ちはホウレンソウできないよね〜」

「フン、してあげましょうか?俺からホウレンソウ」

「なっ!!!絶対やめて」



日吉くんが意地悪そうに笑うから、私は日吉くんを小突いた。
「もう!」といいながら私は頬を膨らませた。

その時だった。





「それは真っ先にホウレンソウすべき事なんじゃねーのか、よ」






・・・・・・・・・は?




慌ててバッと後ろを振り返るとそこには・・・・・・!!!!





「あ、あ、跡部!!!!!!!!!!!!」





顔が一気に熱くなったのが分かった。ちょ、いつから聞いてたの!?
部内一口の堅い日吉くんに喋ってても、自分でペラペラ喋ったんじゃ世話がない。
日吉くんは鼻で笑って「俺行きますからごゆっくり」といってその場を去っていった。

どうしたらいいものか分からず動揺する私。どうしよ、跡部にバレた!!!!!
言うんじゃなかった!!!!!!日吉くんにこんなとこで話すんじゃなかった!!!





「ち、違うの跡部。誤解しないで・・・!?私はマネージャーとして、決してその・・・!!」

「アーン?さっき言ってた事と違うじゃねーか」

「跡部いつから聞いてたの!?」




跡部は不敵に笑いながら腕を組んだまま私の前に立つ。
そして私にかるーくデコピンをかましてきて、私は両手で額を抑える。




「若にはペラペラと素直に話すなんて妬けるじゃねーの」

「えっ・・・・・・!!」

「若には言えてなんで俺には言わないんだ」

「だ、だってこれ跡部の嫌いな公私混同ってやつじゃん・・・・????」


「アーン?だったら若にもすんな」

「ごめんなさい・・・」

「フン。そうやって自分の気持ちより周りの空気を大事にするところがお前らしいがな」

「・・・!



跡部はポンッと私の頭に手を置いた。





(・・・・・!)


から言えないのなら俺様から言ってやる。好きだぜ、

「!!!!!!!」


「先に言っておくが外野は気にするな。気にするというなら俺がどうにかしてやる」





この甘酸っぱい展開はなんなの。
ただ照れるしかなくて染まった赤い顔はまさにラズベリーのようだ。




ラズベリーガール
I deeply regret it. But I was able to feel your love.



ラズベリーの花言葉:深い後悔、愛情(18.8.12)